櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

ノイマイヤーのゴーストライト(ハンブルクバレエ団)

2021-04-20 | アート・音楽・その他

ノイマイヤー振付ハンブルクバレエ団による『ゴーストライト』が放送されたのはラッキーでした。去年の10月にコロナ禍のドイツで上演されたあとネット配信され、この3月に東京公演が予定されていたので楽しみにしていたのですが、やはりコロナのせいで中止になっていたのです。

ゴーストライトというのは、ヨーロッパの劇場で上演されるものが無い空っぽのステージに灯される裸電球のことだそうですが、近年ではその習慣も消えつつあった、だけれど、コロナ禍によって苦境に立つ舞台芸術の復活を願って、いままた灯されるようになったという、それを題にしたとのこと。

文字通り、一つの裸電球が置かれ灯された舞台に、簡素なダンス着を身につけた男女が入れ替わり立ち代わり出てきて踊るなか、シューベルトのピアノ曲が次々に演奏される。衣装も空間も非常にシンプルなのですが、それゆえにこそデリケートで、そして、踊る姿をただただ見つめていることが出来る、これが、僕にはとても感情移入しやすいものでした。

振付にはノイマイヤー自身の過去作の断片が取り入れられ、さまざまな身振りや関係性が現れては消え、消えてはまた蘇る。記憶の走馬灯のようでもあり、あるいは、夢の欠片のようでもありました。踊りによって踊り以外の何かしらを表現しようとするものも多いが、これはその逆さまで、人が踊るのはなぜなのか、どんな心が身を踊らすのか、そのようなことだけが淡々とながれてゆくように見えるのです。

近づき、遠ざかり、絡み合い、離れあう、人と人、体と体。そのあいだから、どうにも言葉にまとめ難いような細やかな情緒の揺らぎが、空間に空気に時間に、こぼれてゆく。その有様が、僕にはとても近づきやすく、ずっと眺めていたくなるような景色でした。

ちらりと映った客席には少人数ながら観客の姿が見え、その人たちによって終演時に投げかけられた力いっぱいの拍手も、やはりメッセージのようであり、それも作品の一つのようで、感じ入るものがありました。

これは、静かに燃え続ける火のような作品、いま、このような状況の中でこそ、踊り続ける意味があると思うことができる、説得力に満ちた名舞台だと思いました。

 

 

 

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stage 櫻井郁也/十字舎房:公式Webサイト

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