黒い鳥であるカラスがこの世界の暗さを悲しんだことから光が生まれた、
という昔話を、たしかヴェーユから知ったのだった。
言葉なんか無くなってしまえばいいのに。
そんな叫びがきこえてくるような言葉をコトバし続けたシモーヌ・ヴェーユに、
僕はながく、あいまいながら関心をよせていて、
なぜか希望のかけらをそのひとのことから感じたりしつづけている。
暗さから光が生まれるのだとすれば、
沈黙から新しい言葉が生まれることも、あるのだろうか。
沈黙には、闇と光がとても激しく共存しているのではないか。
沈黙は、言葉を黙ることによって生まれるが、
その沈黙の底には、黙られた言葉の心が、静かに煮えくり返って混沌しているのではないか。
この世界に広がる沈黙の奥には、
無数の人間の、語り得なかった言葉が、発し得なかった声が、
轟々とした無音の響きを渦しているのではないか。
そんなことを、思い迷う。
沈黙を聴く。
それは黙られた言葉を聴こうとすることでもある。
それは聴覚をかぎりなく拡げようとすることでもある。
沈黙、ということに思いが行ってはじめた新作が二転三転を繰り返し、
うねる。
激しくなる。
(文=稽古日誌10/10、写真=前回公演より)
____________________________________________________
秋の本公演 Next performance
SAKURAI IKUYA DANCE SOLO 2019 "Distant Cry":9th-10th Nov.
東京・中野 plan-B
チケット予約受付中。
くわしい内容など、上記LINKよりご閲覧ください。
レッスン&ワークショップ
(からだづくり、コンテンポラリー、舞踏、オイリュトミー)