世界のどこかで起きていること。

日本人の日常生活からは想像できない世界を垣間見たときに記しています(本棚11)。

「キミの心の"ブラック・ピーター"」(NHK-Eテレ)

2018-08-12 06:39:12 | 日記
キミの心の"ブラック・ピーター"
2015年12月31日(NHK-Eテレ)
機関名:ファミリーフィルム&テレビ
国/地域名:オランダ





 オランダのクリスマス行事にはサンタクロースとともに、そのお供として黒人の道化師に分した“ブラック・ピーター”が登場するそうです。
 その存在を「黒人を馬鹿にしている、人種差別だ」と糾弾する意見がわき起こっており、オランダ社会を揺るがしているそうです。

 番組の中で、もし同じ事をイギリスで行ったら市民はどう反応するか、を実験していました。
 おしなべて「不愉快だ」「それは人種差別だ」という声が大半。

 同じヨーロッパの先進国であるオランダでは、なぜ疑問を持たれないのでしょうか?

 黒人差別は奴隷制度の痕跡である可能性を指摘しています。
 “白人は支配する側、黒人は支配される側”というわけ。

 アメリカの大学教授が作成した心理テストが紹介されました。
 黒人に差別的偏見を有しているかを分析するテストです。

 ブラック・ピーター反対派のこの番組企画者がテストを受けたところ、なんと「白人が優位という考え方が少し認められる」という結果が出て、本人がショックを受けていました。

 ヒトは生き延びて子孫を残すことが最優先されるよう、遺伝子に組み込まれています。
 他人より自分が優れているから生き残る価値があるという考えも、そこから考えると自然な感情かも知れません。

 しかし人類皆平等、平和主義を掲げる現在の世界では、この本能とも言える感情が邪魔をします。
 人類が抱える大いなるジレンマですね。


<内容紹介>
 黒塗りのメイク、少しおどけた姿でサンタクロースとともに歩くブラック・ピーター。オランダのクリスマスには欠かせない伝統的なキャラクターが、社会を二分する議論となっている。植民地時代から続く人種差別の名残なのか。それとも伝統行事の中の悪意のない慣習なのか。
 この番組は、オランダ人の心の中に潜んでいる植民地時代からの差別意識をあぶり出そうという試みだ。近くにいる人たちに容赦なくインタビューのマイクを向け、公園では自転車の鍵を壊す黒人に対する人々の振る舞いを撮影する。そして、オランダの人たち全てに問いかける。クリスマスの行列の中にいるブラック・ピーター。それはあなたの心の中にある隠された差別意識ではないのですか?

<審査講評> (トゥーラ・ラヤヴァーラ)
 「キミの心の“ブラック・ピーター”」は、無意識の人種差別を題材にした、勇気あふれるそして印象深い作品です。普段、見逃してしまっていることを、立ち止まってもう一度考えさせてくれます。
 監督が取り入れた手法は、社会的にまた科学的に興味深い試みであり、またカメラを身近な人たちに、そして彼女自身に向けるというものでした。私たちは、作品を楽しみながら、同時に偏見のもたらす傷の深さを知り、そして見た後には、自分の行動について自問させられることになります。これは私たちが暮らす世界において、とても重要なことです。
 わたしたち審査委員はこの作品を心から讃えたいと思います。勇敢で、普遍的で、魅力的で、特別で、ユーモラスでありながら、同時に差別について語っているのですから!しかも全く説教じみていないのです!パーソナルな語り口と革新的なアプローチの秀逸な例だといえます。
 誰もが心動かされるこの作品にグランプリ日本賞を贈ることを、たいへん光栄に思います。

<制作者コメント> (モニーク・バスマン)
 「キミの心の“ブラック・ピーター”」が、このような大きな賞を日本でいただけたのは、大変な名誉です。そして、それ以上に重要なことは、ブラック・ピーターというキャラクターをとりまく議論が、オランダだけでなく世界中の人たちに関心を持ってもらえたことです。
 この作品の中で、監督のスニ・ベルフマンは、ブラック・ピーターに対する態度を通して、どのような人が差別意識を持っているのかを分析しました。撮影期間中、私たちが目指していたのは、オランダの人たちに、肌の色に対する無意識の偏見、「心の中の差別意識」を気づかせることでした。
 この作品を高く評価してくださり、賞をいただけたことに感謝します。「キミの心の“ブラック・ピーター”」は、オランダだけでなく、多くの国々にとっても重要な作品であると信じています。

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