一病息災〜心房細動とその周辺

心房細動の治療は日進月歩。目に留まった記事の備忘録です。
他に、生活習慣病や自分に関係ありそうな健康問題も。

新型コロナ感染と心臓発作

2024年10月10日 12時11分02秒 | 心房細動

知り合いがコロナ感染後に心臓発作に見舞われました。

肥満体質でもなく(20年前は現在の体重+10kgでしたが)、

健康診断でも問題を指摘されていませんでした。

 

もともと不整脈持ちで循環器内科に通院しており、

主治医から「リスクがないのに心臓発作が起きるなんて不思議ですね」

とコメントされたそうです。

 

その話を聞いて、

「新型コロナ感染は心臓発作のリスクになるのではないか?」

と漠然とした疑問を持つようになりました。

 

血栓症については情報がたくさん流れてきましたが、

直接の心臓発作のリスクについてはあまり耳にしませんでした。

 

そこに以下の記事が目に留まりました。

 

<ポイント>

・ワクチンが出回る前の20年に新型コロナに感染した人は、感染しなかった人に比べて、感染後ほぼ3年間にわたり、心臓発作や脳卒中、死亡など、重大な心臓病の発生リスクが2倍高かった。

・感染のために入院した、より重症だった人の場合、重大な心臓病の発生リスクは、感染していない人に比べて3倍以上高かった。

・入院が必要だった人にとって新型コロナは、糖尿病や末梢動脈疾患(PAD)と同じくらい、将来の心臓発作や脳卒中の強力なリスク因子であるとみられる。

・感染による心臓病リスクの上昇は、時間の経過とともに減少しない。

・新型コロナウイルスは血管壁の細胞に感染する可能性がある。ウイルスは動脈内に形成されるプラークからも見つかっており、これが破裂して心臓発作や脳卒中を引き起こす可能性がある。

 

・・・やはり、心臓発作のリスクを挙げるようです。

 

▢ 新型コロナ感染による心臓発作・脳卒中の発症リスク、感染から3年後も2倍 新研究

2024/

 


新型コロナ罹患後、循環器疾患は増加する?

2023年06月25日 15時06分52秒 | 心房細動
新型コロナ罹患後に血栓ができやすくなることは有名ですが、
循環器疾患に関してはどうでしょう。
罹患率が上昇すると耳にしたことがあります。
それをデータで示した報告を紹介する記事を見つけました。

なんと、罹患率も死亡率も2倍になるとのこと、これは大変!

▢ コロナ罹患後症状患者、1年以内の死亡/重篤心血管リスク増
ケアネット:2023/03/29
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染から1年間のコロナ罹患後症状(Post-COVID-19 Condition:PCC[いわゆるコロナ後遺症、long COVID])について、米国の商業保険データベースを用いて未感染者と比較した大規模調査が、保険会社Elevance HealthのAndrea DeVries氏らによって実施された。その結果、PCC患者は心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが約2倍上昇し、1年間の追跡期間中の死亡率も約2倍上昇、1,000人あたり16.4人超過したことが明らかとなった。
・・・
 米国50州の18歳以上の健康保険会員において、2020年4月1日~7月31日の期間にCOVID-19に罹患し、その後PCCと診断された1万3,435例と、未感染者2万6,870例をマッチングし、2021年7月31日まで12ヵ月追跡してケースコントロール研究を実施した。評価項目は、心血管疾患、呼吸器疾患、死亡など。PCCの診断は、疲労、咳嗽、痛み(関節、喉、胸)、味覚・嗅覚の喪失、息切れ、血栓塞栓症、神経認知障害、うつ病などの症状に基づいて行われた。統計学的有意性はカイ2乗検定とt検定で評価し、相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。Kaplan-Meier法を用いて死亡率を算出した。
・・・
・PCC群(1万3,435例)の平均年齢は50.1歳(SD 15.1)、女性7,874例(58.6%)。PCC群のうち3,697例がCOVID-19診断後1ヵ月以内に入院していた(平均年齢57.4歳[SD 13.6]、女性44.7%)。未感染群(2万6,870例)の平均年齢は50.2歳(SD 15.4)、女性1万5,672例(58.3%)。
・PCC群はCOVID-19を発症する前に、高血圧(39.2%)、うつ病(23.7%)、糖尿病(20.5%)、COPD(19.1%)、喘息(中等症/重症)(13.3%)、高度肥満(10.3%)などの慢性疾患を有する人が多かった。
・PCC群の追跡期間中によく観察された症状は、息切れ(41%)、不安(31%)、筋肉痛/脱力(30%)、うつ病(25%)、疲労(21%)だった。
・PCC群において、未感染群と比較して医療利用が増加した疾患は次のとおり。
 -不整脈の発症率:PCC群29.4% vs.未感染群12.5%、RR:2.35(95%CI:2.26~2.45)
 -肺塞栓症:8.0% vs.2.2%、RR:3.64(95%CI:3.23~3.92)
 -虚血性脳卒中:3.9% vs.1.8%、RR:2.17(95%CI:1.98~2.52)
 -冠動脈疾患:17.1% vs.9.6%、RR:1.78(95%CI:1.70~1.88)
 -心不全:11.8% vs.6.0%、RR:1.97(95%CI:1.85~2.10)
 -末梢血管疾患:9.9% vs.6.3%、RR:1.57(95%CI:1.48~1.70)
 -COPD:32.0% vs.16.5%、RR:1.94(95%CI:1.88~2.00)
 -喘息(中等症/重症):24.2% vs.12.4%、RR:1.95(95%CI:1.86~2.03)
追跡期間中の死亡率はPCC群2.8% vs.未感染群1.2%で、PCC群は1,000人あたり16.4人の超過死亡となる。
・COVID-19発症初期に入院を経験したPCC群において、未感染群と比較して医療利用が増加した疾患は次のとおり。
 -不整脈:51.7% vs.17.4%、RR:2.97(95%CI:2.81~3.16)
 -肺塞栓症:19.3% vs.3.1%、RR:6.23(95%CI:5.36~7.15)
 -虚血性脳卒中:8.3% vs.2.7%、RR:3.07(95%CI:2.59~3.66)
 -冠動脈疾患:28.9% vs.14.5%、RR:1.99(95%CI:1.85~2.15)
 -心不全:25.6% vs.10.1%、RR:2.53(95%CI:2.32~2.76)
 -末梢血管疾患:17.3% vs.8.9%、RR:1.94(95%CI:1.75~2.15)
 -COPD:43.1% vs.19.2%、RR:2.24(95%CI:2.11~2.38)
 -喘息(中等症/重症):31.6% vs.14.7%、RR:2.15(95%CI:2.00~2.31)

 コロナ罹患後症状に関する米国での最大規模の追跡調査において、PCC患者は死亡率だけでなく心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが有意に増加し、とくにCOVID-19発症初期に入院した人では肺塞栓症が6倍、脳卒中が3倍以上など、さらにリスクが高くなることが示された。また、本研究はワクチン利用可能以前のサンプルを用いているため、ワクチン普及後では、ワクチンのPCC緩和効果により、個人の医療利用パターンが変化する可能性もあると著者は指摘している。


<原著論文>
DeVries A, et al. JAMA Health Forum. 2023;4:e230010.


心房細動アブレーションの最新状況

2023年01月22日 14時43分14秒 | 心房細動
実は私、先日心房細動に対するカテーテルアブレーションを受けてきました。
その結果、心房細動が激減するとともにほかにも出ていた各種不整脈(上室性期外収縮、心室性期外収縮)も減り、
“ざわついてちゃんと動いてくれない心臓”から“沈黙の臓器”に戻ってくれました。
めでたしめでたし。

事前に検索した記事を紹介します。

▢ 心房細動アブレーション、日本の最新状況
J-ABレジストリの中間解析
2022年07月12日:メディカルトリビューン)より抜粋;
※ 下線は私が引きました。

 日本ではここ数年、カテーテルアブレーションの件数が年間10万件を超えている。東京慈恵会医科大学病院循環器内科教授の山根禎一氏らは、全国多施設前向き観察プロジェクト日本カテーテルアブレーション(J-AB)レジストリの中間解析を実施。その結果、日本における心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション(AFアブレーション)の現状、施行件数と治療成績との関連、地域差が明らかになったと、第68回日本不整脈心電学会(6月8~11日)で発表した。

心房細動アブレーションは推計で年間約7万4,000件
 J-ABレジストリは、日本におけるカテーテルアブレーションの現状把握を目的とした全国多施設前向き観察プロジェクト。日本不整脈心電学会と国立循環器病研究センターの主導により2017年に開始された。今年(2022年)5月には累積症例登録数が34万5,855人に達し、世界最大規模となっている。
 山根氏はまず、日本のAFアブレーションの現状を報告した。日本循環器学会循環器疾患診療実態調査(J-ROAD)によると、2020年、2021年に施行されたカテーテルアブレーションの総件数はいずれも10万件超。J-ABレジストリでは、カテーテルアブレーションの73.8%がAFに対するものであったことから、日本では年間約7万4,000件のAFアブレーションが施行されているという試算だ。
 アブレーションの対象となったAFの内訳は、発作性が59.3%、持続性が40.5%。AFの持続期間は、1週間~1年が58.4%と最多だった。
 追加アブレーションの種類は、下大静脈三尖弁輪間峡部(CTI)アブレーションが最も多く(59.3%)、線状アブレーション(41.3%)、上大静脈(SVC)隔離術(33.3%)、非肺静脈起源(Non-PV)トリガーアブレーション(7.1%)、心房分裂電位(CFAE)アブレーション(5.2%)が続いた

RFカテ+バルーン、女性、高齢、低BMI、心疾患が合併症リスクに
 AFアブレーションによる急性期合併症の発生率は2.74%、死亡率は0.06%で、海外の報告(それぞれ2.90%、0.06%)と同等だった。
 AFアブレーションの種類は、高周波(RF)カテーテルが67.8%、バルーンが21.9%、RFカテーテル+バルーンが10.4%だった。

 ロジスティック回帰モデルを用いて複数の因子を調整し、AFアブレーションによる合併症の危険因子を抽出した。
 解析の結果、合併症リスクとの間に有意な関連が認められたのは、RFカテーテル+バルーン〔調整オッズ比(aOR)1.58、95%CI 1.42~1.77、P<0.001〕、女性(同1.37、1.26~1.49、P<0.001)、高齢(70~74歳:同1.20、1.05~1.37、P=0.007、75~79歳:同1.42、1.24~1.62、P<0.001、80~84歳:同1.37、1.16~1.63、P<0.001、85歳以上:同1.63、1.23~2.15、P<0.001)、BMI 18.5未満(同1.28、1.09~1.50、P<0.003)、心疾患の既往(同1.55、1.41~1.72、P<0.001)だった。
・・・
アブレーションの患者選択に地域差
 さらに山根氏は、2017~19年の基礎調査(AF患者10万7,082例)のデータを用いて、AFアブレーションの地域差について検討した結果も提示。
 患者選択における都道府県別の違いを見ると、75歳以上の割合は7.4~34.2%と幅があり、関西地区(京都府、奈良県、徳島県、香川県、大阪府)で高く、東北地区(秋田県、岩手県、新潟県、山形県、青森県)で低かった。また、75歳以上の割合と10万人当たりのアブレーション登録件数との間には正の相関が認められた〔相関係数=0.54、P<0.001〕。
 持続性AFの割合は22.6~51.4%、沖縄県、宮崎県、群馬県、徳島県、兵庫県で高く、秋田県、山形県、岩手県、青森県、福島県で低かった。
 無症候性AFの割合は4.2~52.4%、和歌山県、沖縄県、静岡県、広島県、茨城県で高く、秋田県、岩手県、山形県、佐賀県、岐阜県で低かった。

急性期合併症、退院時再発にも地域差
 都道府県別のAFアブレーションによる急性期合併症、退院時再発を検討したところ、いずれも地域差が見られた(急性期合併症:0.81~5.32%、退院時再発2.14~25.90%)。
 複数の交絡因子を調整し、AFアブレーションによる急性期合併症リスクおよび退院時再発リスクの地域差に関連する因子を重回帰分析で検討。その結果、AFアブレーションによる急性期合併症リスクの地域差と有意に関連する因子はなかった。
 一方、AFアブレーションの退院時再発リスクの地域差では、唯一、10万人当たりのAFアブレーション施行件数との間に有意な関連が認められた〔標準偏回帰係数(β)-0.04、標準誤差0.019、P=0.036〕。他には、無症候性AFの割合、10万人当たりの専門医数が関連因子である可能性が示唆された。
 山根氏は「今回の報告はあくまで中間解析の結果である」と前置きした上で、「施設ボリュームと合併症および再発の真の関連を示すには、アブレーション施行件数が少ない施設を解析対象から除外することを検討する必要があるかもしれない」と
述べ、講演を終えた。

長時間労働は心房細動発症の危険因子

2017年11月01日 18時49分34秒 | 心房細動
 交感神経緊張状態が続くと、自律神経系が破綻をきたす・・・まあ、当たり前と言えば当たり前。

■ 長時間労働は心房細動発症の危険因子〜週55時間以上でリスクは4割増
2017/11/1 難波寛子=医師:日経メディカル
 労働時間が週40時間以内の人と比較して、週に55時間以上労働する人は心房細動(AF)発症リスクが4割増しとなることが、欧州におけるメタ解析により明らかになった――。11月は厚生労働省が定める「過労死等防止啓発月間」である。長時間労働している患者のリスク管理に役立つとともに、医師自身の労働時間を顧みる契機となる論文をEur Heart J誌9月17日号より紹介する。
 本研究の対象はIPD-Work(Individual-Participant-Data Meta-Analysis in Working Populations)コンソーシアムにて行われたコホート研究10試験の参加者。うち2試験は55時間以上の長時間労働者(n=6、n=55)とAF発症数(2試験ともn=0)が極めて少なかったので除外した結果、対象は8試験となった。
 ベースライン時の労働時間は、1991年から2004年までの期間に記録された。週当たりの労働時間を、(1)35時間未満、(2)35~40時間、(3)41~48時間、(4)49~54時間、(5)55時間以上、の5群に分けた。European Union Working Time Directiveは、労働時間を平均で週48時間以内とすることを労働者の権利として保障している。
 対象8試験中1試験(Whitehall II試験)では、ベースラインの1991年と2003年および2008年に心電図によりAFの評価を行っている。一方、残る7試験ではベースラインと経過観察時点での電子カルテなどの病名をもとにAF発症を確認した。
 解析対象となった8万5494人中男性は35%で、ベースライン時の平均年齢は43.4歳(範囲:17-70)だった。平均10.0年の経過観察中にAFを発症したのは1061人で、10年間の累積発症率は12.4/1000だった。AF発症例の71.4%が65歳以前にAFと診断された。
 AF発症例のうち86.7%は観察期間中に他の心血管疾患を生じなかったが、10.2%ではAF発症前に何らかの心血管疾患を発症していた。
 ベースライン時の労働時間が週55時間以上だったのは4484人(5.2%)、フルタイムワーカーの標準的労働時間とされる35-40時間だったのは5万3468人(62.5%)だった。
 長時間労働は、肥満、余暇の運動部不足、喫煙、アルコール多飲といった健康的でない生活習慣と相関していた。Whitehall II試験を対象として更に詳細に検討したところ、長時間労働者ではうつや不安症状が多く、左室肥大が少なかった。
 年齢、性別、社会経済的状況(SES)で調整した解析の結果、標準的労働時間である35-40時間群と比較して55時間以上群のAF発症のハザード比(HR)は1.42(95%信頼区間[95%信頼CI]:1.13-1.80、P=0.0031)だった。試験間の異質性は、確認されなかった(I2=0%、P=0.66)。他の生活習慣(喫煙歴、BMI、身体活動、アルコール摂取量)でさらに調整すると関連はわずかに減弱した(HR:1.41、95%CI:1.10-1.80、P=0.0059)。
 長時間労働とAF発症との関連は、AF診断時に既に発症していた冠動脈疾患の有無により調整した後も(HR:1.41、95%CI:1.12-1.78、P=0.0039)、またベースライン時に心血管疾患を有していた549人(HR:1.41、95%CI:1.11-1.79、P=0.0054)およびベースライン時または経過観察時に心血管疾患を有していた2006人(HR:1.36、95%CI:1.05-1.76、P=0.0180)を除外した解析でも、統計学的に有意であった。
 更に詳しいデータが得られたWhitehall II試験の参加者6649人(うち224人が期間中にAF発症)を対象とし、年齢、性別、社会経済的状況(SES)で調整した解析を行った結果、35-40時間群と比較して55時間以上群のHRは1.41(95%CI:0.93-2.14、P=0.1045)で、8試験すべての参加者を対象とした解析と、ほぼ同様であった。その他の生活様式、感染や全身の炎症、呼吸器疾患、弁膜症やうっ血性心不全等の心疾患、左室肥大、糖尿病、うつや不安症状、収縮期血圧、降圧剤の内服、総コレステロールおよびHDLコレステロールにより更なる調整を行った解析結果も同様だった(HR:1.42、95%CI:0.91-2.23、P=0.12、n=5867、AF発症例:195人)。
 標準的労働時間である35-40時間群と比較して、AFのハザード比は、41-48時間群、49-54時間群、55時間以上群でそれぞれ1.02、1.17、1.42であり、労働時間が長時間になるにつれてAF発症リスクが上昇していた。
 著者らは、AF発症と長時間労働との関連のメカニズム解明のために更なる研究が必要であると指摘した。また、本研究はUK、デンマーク、スウェーデン、フィンランドで行われたものであり、この研究結果が同地域のみに限定されるという理由はないものの、他国への一般化の際には確認が必要であると述べている。

<原著論文>
Kivimaki et al. Long working hours as a risk factor for atrial fibrillation: a multi-cohort study. Eur Heart J. 2017;38: 2621-8.

欧米では中年の4人に1人は心房細動。

2017年10月27日 12時58分54秒 | 心房細動
 スマホアプリが売りの記事ですが、私は欧米での中年成人の心房細動の頻度に驚きました。
 日本では確か50歳で100人に1人だったような・・・。

■ ESCが心房細動管理用スマホアプリを配信
2017年10月13日:メディカル・トリビューン
 欧州心臓病学会(ESC)が心房細動(AF)を管理するためのスマートフォン・タブレット用アプリケーション(以下、アプリ)の配信を開始した。患者の教育、自己管理、共有意思決定の強化を目的とする患者用アプリと、ESCの2016年AF管理ガイドライン(以下、GL)に基づく治療選択の簡素化およびGL遵守の強化を目的とする医療提供者用アプリの2種類がある。いずれもGoogle Play、Amazon、Apple Storeから無料でAndroidおよびiOS機器にダウンロード可能。英・University of BirminghamのDipak Kotecha氏らが、アプリの概要をEuropace(2017年10月10日オンライン版)およびEur Heart J(2017; 38: 2643-2645)に発表した。
患者用アプリ開発にはAF患者も参加
 欧米では中年成人の4人に1人がAFを発症し、発症率および有病率が上昇しつつある。その一方で、欧米では人口の約3分の2がモバイル機器を所有し、コミュニケーションおよびオンライン情報収集の主要な手段として利用している。このような背景から、2014~16年のGL作成作業と並行して、ESCのGL作成委員会、CATCH ME※コンソーシアム、欧州不整脈学会(EHRA)が共同でAFアプリを開発した。
 患者用アプリ「My AF」は、AFの症状や管理方針、実用的なセルフケアのヒント、脳卒中リスクなどに関する情報を提供する。また、患者が症状などを記録する日記機能を搭載し、情報を医療提供者と共有することで対面での診察がスムーズになる可能性がある。
 患者向けの文章や画像の設計・評価にはAF患者および英国心臓基金の代表者も加わり、スマホに不慣れな高齢患者にも配慮したシンプルなインターフェイスが採用された。
医療提供者用アプリは初のCE認証申請
 医療提供者用アプリ「AF Manager」は、GLの推奨事項やフローチャートを閲覧できる他、対話型アルゴリズムにのっとった治療方針の決定が可能。そのため、この種のアプリとしては初めて欧州連合加盟国に製品を流通・販売するための規格であるCEマークの認証を申請中で、現在は承認の最終段階にある(クラスⅡa医療機器)。
 医療提供者は患者が登録した共有情報をAF Managerに読み込み、情報の修正や追加を行うことができる(例えば、心電図や心エコーデータの追加)。また、診察後には決定した治療内容や治療薬の投与量などを入力し、これらの情報を患者と共有することができる。
 My AFとAF Managerは、クラウドサーバー経由でデータを転送・共有する。共有情報は全て暗号化およびパスワードにより保護される。なお、患者はいつでも自身のデータをアクセス禁止に設定することができる。
 また、研究目的でのデータ使用に同意した患者が匿名でデータを提供するという選択肢もある。これにより、さまざまなAF患者の症状、治療パターン、GL遵守状況を幅広く検討できるようになるという。
情報共有による予後改善に期待
 Kotecha氏らは「AFのような慢性疾患では、情報を得て自発的に治療に参加する患者の方が、長期管理が良好である可能性が高く、共有意思決定が予後改善につながる可能性もある。現在、患者教育に関するさまざまな情報が利用できるが、大部分の教材が抗凝固療法のみを扱っており、患者が必要としている情報とは合致していない可能性がある」と指摘。その点で「これらアプリを用いた患者教育には、ユーザーからのフィードバックや将来的なGL改訂を反映して機能やコンテンツを修正・更新できるという大きな強みがある」と述べている。