一病息災〜心房細動とその周辺

心房細動の治療は日進月歩。目に留まった記事の備忘録です。
他に、生活習慣病や自分に関係ありそうな健康問題も。

心房細動の二次イベントリスク

2017年09月18日 07時15分32秒 | 心房細動
 気になる内容の記事を見つけましたのでメモ。

■AFの二次イベントリスクが明らかに〜男性はAMI、女性はISが最も高い
2017年09月06日;メディカル・トリビューン
 スウェーデンにおける初発心房細動(AF)患者約50万例の登録データを基に、発症後10年間の二次性イベントの発症リスクを検討したところ、男性では致死性または非致死性の急性心筋梗塞(AMI)、女性では虚血性脳卒中(IS)の発症リスクが最も高く、これらのリスクは年々増加傾向にあることが明らかとなった。スウェーデン・University of GothenburgのLena Björck氏が欧州心臓病学会(ESC 2017、8月26~30日、バルセロナ)で報告した。
1年後、5年後、10年後の二次性イベント発症率を検討
 AFは全身性塞栓症のリスク因子であり、AMI発症リスクの増加と関係することが知られているが、これらの二次性イベントのうち、いずれの血栓イベントを最初に発症するかは明らかになっていない。そこで、Björck氏らはスウェーデンにおけるAFの大規模患者登録データを用いて、初発AF患者の致死性または非致死性AMI、IS、静脈血栓塞栓症(VTE)の初発イベントの長期発症リスクを検討した。
 対象は、1987~2012年にSwedish Inpatient Registerに登録されたAMI、IS、VTEの既往歴がない初発AF患者49万6,173例。2013年12月31日まで追跡し、1年後、5年後、10年後の致死性または非致死性AMI、IS、VTE〔深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)〕の初発イベントを記録し、イベント発症率を算出した。
女性でより高い二次性イベント発症リスク
 対象の年齢は18~84歳と幅広く、男性が53%(平均年齢70.2歳)、女性が47%(同76.6歳)を占めた。
 ベースライン時の併存疾患は、高血圧(26.5%)、心不全(25.2%)が高率で、AMI以外の虚血性心疾患(16.7%)、がん(12.5%)、糖尿病(11.3%)、心弁膜症(7.0%)、一過性脳虚血発作(TIA、4.0%)が続いた。脳内出血、先天性心疾患、末梢血管障害の既往例は1%未満であった(図1)。

図1. ベースライン時の併存疾患


 また、1年後、5年後、10年後における致死性または非致死性AMI、IS、VTEの二次性イベントについて男女別に検討したところ、男性では致死性または非致死性AMI、女性ではISが一貫して最も頻度が高く、これらのイベント発症率は、男女とも経時的に増加する傾向にあった(図2)。

図2. 1年後、5年後、10年後の二次性イベント発症率

(図1、2ともにESC 2017発表データ)

 以上の結果から、Björck氏は「初発AF後、最初に発症する二次性イベントは、男性では致死性または非致死性AMIとISがほぼ同率で、女性ではISが最も多かった。VTEは長期的な発症率は高くはなかったが、女性では男性よりも高率であったことから、総合的なリスクは男性より女性の方が高いと考えられた」と結論。さらに、「相対的に二次性イベントの発症リスクが男性よりも女性で高い理由は不明であり、今後さらなる研究が必要」と付言した。


意外に多い「未診断の心房細動」、高リスク者の3人に1人で検出

2017年09月18日 06時29分09秒 | 心房細動

 自覚のない心房細動、思っていたより多いようです。
 そしてそれが脳梗塞の原因になり得る、という報告を紹介します;

■意外に多い「未診断の心房細動」、高リスク者の3人に1人で検出
HealthDay News:2017/09/18;ケアネット
 心房細動と診断されたことはないが、リスクは高いと考えられる患者の胸部に小型の心電図モニタリング機器を植え込み、長期間にわたって観察した結果、ほぼ3人に1人で心房細動が検出されたとする研究結果が「JAMA Cardiology」8月26日オンライン版に掲載された。この結果を踏まえ、研究を率いた米コロンビア大学医学部教授のJames Reiffel氏は「高齢者では、より高頻度に心房細動が発生している可能性が高い」としている。
 心房細動は、原因が特定できない脳梗塞の主な要因であると考えられているが、症状がない場合があるだけでなく、長期間の検査が必要であるため、検出が難しいことが課題となっている。今回、Reiffel氏らは胸部に植え込むタイプの小型の心電図モニタリング機器を使用して長期間観察することで、高リスク者における心房細動の発生頻度を調べた。
 今回の研究は、米国および欧州の57施設で2012年11月から2017年1月まで実施された。対象は、心房細動の診断歴はないが、心房細動や心房細動を原因とした脳梗塞のリスクが高い(CHADS2スコア3以上または2以上かつ他にもリスク因子が1つ以上)と評価された446人。7割以上が65歳以上の高齢者で、平均年齢は71.5歳、52.2%が男性だった。また、対象者の約90%に疲労や呼吸困難、動悸などの症状があった。
 このうち385人(86.3%)の胸部皮下に単4電池ほどのサイズの心電図モニタリング機器を植え込み、18~30カ月間観察した。このモニタリング機器は、自動的に心電図データを記録。データは患者を担当する循環器医に送信されるという。今回の研究で使用されたモニタリング機器は、研究資金とともにMedtronic社が提供した。
 その結果、6分以上持続する心房細動の検出率は、観察を開始してから18カ月の時点で29.3%だった。また、モニタリング機器による観察期間が長くなるほど検出率は高まり、24カ月時点では33.6%、30カ月時点では40.0%に達していた。ただ、脳卒中リスクを大幅に上昇させると考えられている24時間以上持続する心房細動が検出された患者の割合は10.2%だった。経口抗凝固薬が処方された患者の割合は56.3%だった。
 この研究結果を受け、米メイヨークリニック教授のSamuel Asirvatham氏は「高リスクの人たちでは極めて高い確率で心房細動が検出されることを明確に示した重要な情報」とした上で、「原因が特定できない全ての脳梗塞患者に対して、心房細動が検出された場合と同様に抗凝固薬を使用すべきかどうかについては、大規模研究で検証する必要がある」との見方を示している。
 一方、Reiffel氏は循環器医に対し、今回の研究で使用した心電図モニタリング機器の導入を「積極的に考慮すべき」と勧めている。その理由として、「他の検査法と比べて格段に優れていると考えられる」ことを挙げ、「合併症の発生率は極めて低く、患者にも受け入れられやすい」と付け加えている。
 これに対し、米バージニアコモンウェルス大学ポーリー循環器センターのKenneth Ellenbogen氏は「脳卒中の既往がなく、心房細動の症状もない患者に心電図モニタリング機器の植え込みを行うのは現時点では時期尚早だ」と指摘。「こうした患者で心房細動が検出された場合、それに対してわれわれはどのように対処すべきなのかを明らかにすることが先決だ」と主張している。
 この研究結果は、欧州心臓病学会(ESC 2017、8月26~30日、バルセロナ)でも報告された。


<原著論文>
Reiffel JA, et al. JAMA Cardiol. 2017 Aug 26.

左心耳を切除して脳梗塞を予防(2017年9月)

2017年09月16日 07時43分00秒 | 心房細動
 心房細動の合併症としての脳梗塞は重症タイプが多く、その予防が大切です。
 従来の薬物療法、カテーテルアブレーションに加えて、血栓ができる場所である左心耳を切って無くしてしまう方法を扱った記事を紹介します。
 あ、昨年末にも取り上げていました(^^;)。

■ 心臓の「左心耳」、なくても問題ない…切除手術して脳梗塞を予防
2017.9.13:読売新聞
 2009~14年に脳梗塞を4回繰り返した兵庫県姫路市の神沢 聿子さん(72)は、心臓の「 左心耳」という部分を切除した。
 左心耳でできた血栓(血の塊)が脳の血管を詰まらせていたためだ。血栓ができる元を絶つ手術で、脳梗塞の不安から解放された。
 左心耳は、左心房から突き出した袋状の器官で、心臓と同様に拡張と収縮を繰り返している。神沢さんの脳梗塞は、不整脈の一種で心臓の上部が震える心房細動により血流がよどみ、血栓が作られたことによるもの。そこで、東京都立多摩総合医療センター(東京都府中市)で手術を受けた。
 心房細動が起きると、左心耳も細かく震え、中の血液がよどんで血栓ができやすくなる。左心耳でできた血栓は、動脈から脳に運ばれ、血管をつまらせる。年約20万人の脳梗塞発症者のうち3割が心房細動が原因とされる。特に左心耳でできた血栓は大きく、重篤になりやすい。
従来治療のデメリット
 心房細動の治療には、血を固まりにくくする薬や脈拍を遅くする薬を飲む薬物療法がある。ほかに、心臓に細い管を入れ、先端の電極で震えの原因となる異常な電気信号を発する部分を焼き切るカテーテルアブレーションも行われている。
 薬物療法では、一生薬を飲み続けなければならないうえ、血が固まりにくい薬は出血しやすくなる恐れがある。カテーテルアブレーションは、治療後数か月以内に10~50%の確率で再発するとのデータもある。
左心耳を切る・塞ぐ「薬が不要に」
 このため近年、左心耳を切ったり塞いだりする治療法が取り入れられるようになった。左心耳は、左心房の圧力を逃がすなどの働きがあるが、なくても問題ないことがわかっている。
 心筋梗塞など他の手術のついでに左心耳の入り口を糸で縛ったり、左心耳を切り取ったりすることがある。ただし、そのためだけに胸を切り開いて手術するのは体への負担が大き過ぎる。
 そこで、胸に小さな穴を開けてカメラと手術器具をさし入れ、左心耳の入り口をクリップで閉じたり、切除したりする手術も広がっている。切除手術を受けるまでは、血を固まりにくくする薬を毎日飲んでいたという神沢さんは「薬を飲む必要がなくなり、体調も良くなりました」と喜ぶ。
 さらに体の負担が軽い治療法として注目を集めているのが、細かい編み目状の特殊な器具で左心耳の中から塞ぐ治療法だ。太ももの静脈から先端に畳まれた状態の器具が付いた細い管を入れ、左心耳の入り口で器具を広げて塞ぐ。
 すでに欧米では承認されており、血を固まりにくくする薬の服用との比較では、4年間の脳卒中などの発症率は40%低かった。
 国内でも今年2~7月に10か所の医療機関で、心房細動の患者計60人を対象に臨床試験(治験)が行われた。有効性の分析が進められており、この器具を取り扱う医療機器メーカーは、19年の保険適用を目指している。
 治験にあたった東邦大学医療センター大橋病院循環器内科准教授の原英彦さんは「高齢化社会を背景に、心房細動の患者は増加傾向にあるので、安全で有効な治療法の選択肢が増えるのは望ましいことだ」と話している。