お詫びする
ごめんなさい と あっさり言う
甘えることを覚えた幼な子のように
―そう言うだけで許されると知っているのだ
すみません と 頭を下げる
十秒、十五秒とカウントしながら
―丁寧にすれば通じると期待しているのだ
申し訳ありませんでした と 土下座する
これ以上のお詫びはないと自分をほめながら
―悔いている姿は誠実に映るものと考えているのだ
だが いつ自分が詫びる者になるかもしれぬ
そんなニンゲンには
ほんとうに罪ゆるすことなどできぬ
それを心に彫り込んで全力でお詫びしないと!
真心と魔心と
―ごめんなさい
その言葉は誰が言ってもおんなじ
けれど
思わずゆるしたくなることもあれば
かえって不快になってしまうこともある
―ごめんなさい
その言葉のマントの裏に秘められた心
それが
真心なのか
魔心なのか
わたしの今日の
―ごめんなさい
寝床のなかで訊いてみる
深く反省し 相手を思って
真心から言えた?
それとも
その場を取り繕って自分を守りたいと
魔心を潜ませていた?
夫婦
ひとが好き
そして どちらかといえば自分も好きなほう
そう言う妻の隣に
自分が嫌い
ひともあんまり好きじゃない
そう言う夫が寝転がっている
よくこれで夫婦をやっているものだ
そうお互いに顔を見合う
夫は内心
できたら自分を嫌うのをやめたいし
ひともできたら好きになりたい
そう思っている
(ほんとはナルシストで ひとさまより
自分こそが大好きニンゲンなのではと疑うこともある)
妻も内心
ひとが自分をけなしたら好きじゃなくなるし
そう思うと自分も嫌になってくる
そんなことを呟くときがある
(でも ひとを憎み切るとか嫌い続けるとか
それはちょっとできないかなとも言う)
四十年近く隣りに居る
二人をよく知るひとから
ときどきこう言われることもある
ーあんたがた夫婦ってだんだん顔が似てきたねえ
まるできょうだいみたいだねえ
★たんぽぽの 何とかなるさ 飛んでれば
★いつも読んでくださり、ほんとうに有難うございます。