野菜の声 もやし
1
野菜コーナーに山と積まれ
品定めなどされずにバスケットへ放り込まれる
安くて当然
一円上がっても高いと言われる
焼きそばでも味噌汁でも鍋でも中華でも
袋からバサバサ出される
ひとつふたつ落ちても大事にされない
全部でひとつ、それがもやし かな
2
もやしの一本一本を割いて
そこにひき肉を詰める
もやし一袋
何時間もかけてひき肉を詰める
詰め終えたもやしは五分で食べてしまった
―そう言って笑ったひとがいた
こちらも笑いながら
なんだか切ないなとも思い
ずいぶんの値打ちものだなとも思った
3
コロナ禍でアルバイトができなくなり
切り詰めた食費でもやしを買います
それが一日の食事です
―そうインタビューに答えた女子大生がいた
豆腐二丁を買い
それを食事にしていた学生時代を思い出した
笑うこともできないなと思いながら
一人の空腹を助けたもやしに 感謝
●ご訪問ありがとうございます。
ひ弱なイメージ、安い野菜の代表のようなもやし。けれど、よく見ると、一本一本、生命そのもののようにピチピチしています。