哀歌
亡くなった貴兄へ
大きな掌のぬくもりを私の掌はおぼえている
異国で長く暮らした貴兄
いくらかたどたどしいその日本語をもう聞けない
つましい暮らしをつぶやかず
くるしい闘病をなげかず
信ずべきものを信じぬき
愛すべきものを愛しぬき
「すべて感謝!」
貴兄よ
あなたはそう言って天へ帰った
しあわせの歌
しはいつだって突然だ
あしを掬(すく)う知らせが地を這(は)ってきた
わたしよ 今から天に向かって目を開(あ)けよ
せいなる群れのなかで微笑む人 貴兄と再び握手する日のために
白い布
とじられた眼が天をみつめている
水も食べ物も不眠も痛みも もう苦しめない
およそ傲(おご)りというもので血をよごさなかった人
かすかにほほえんだ顔
その額をおおった白い布がしずかにひかっている
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