祈りを、うたにこめて

祈りうた(でくの坊  眼)

 

中学生のとき

おまえ眼が怖いよと

同級生にいわれた

 

大学生のとき

あいつ怖い眼をしていたなと

通りすがりの人たちからささやかれた

 

会社にはいって

君は根は優しいのだろうけれど

眼が怖いね そう上司の評価を受けた

 

結婚したら

笑うとき眼が全然笑っていないわと

妻がわらいながら指摘した

 

ほんとうは

人の視線が怖くてこわくて

ちゃんと相手を見られない私なのだが

 

―わたしの顔を見なさい!

そんなセリフをきくと

私はドキドキする

―ちゃんと顔をあげて、こっちを見なさい!

ドラマも映画も私に迫ってくるようなのだ

 

父の記憶が

眉間(みけん)に皺(しわ)を寄せた顔からはじまる

父はテーブルにすわって 

黙って眉間に皺を寄せていた

食事の前も食事中も ずっと

顔を見るのがこわかった

眼をのぞき込むなどできなかった 

という記憶

 

そんなとおいとおい記憶なのだが

画面のひとが

怖い眼をして 

きっぱりと私に告げるのだ

―わたしを見なさい!

 眼をそらさず

 わたしをしっかりと見なさい!

 

 

●ご訪問ありがとうございます。
視線恐怖というのかもしれません、私の場合。子どもの時から「目つき」のことでは葛藤があります。
同じような葛藤をしている人がいらっしゃったら、「ここにも苦しみを感じる老人がいますよ」と、そっとエールをおくりたいと思います。
「自分のことを口にしてみると、それほどたいしたことでもないな」「相手の顔が見られない分しっかり耳を傾ければいいのだ」と、自己流心理学を編み出しています。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「家族」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事