眼
1
中学生のとき
おまえ眼が怖いよと
同級生にいわれた
大学生のとき
あいつ怖い眼をしていたなと
通りすがりの人たちからささやかれた
会社にはいって
君は根は優しいのだろうけれど
眼が怖いね そう上司の評価を受けた
結婚したら
笑うとき眼が全然笑っていないわと
妻がわらいながら指摘した
ほんとうは
人の視線が怖くてこわくて
ちゃんと相手を見られない私なのだが
2
―わたしの顔を見なさい!
そんなセリフをきくと
私はドキドキする
―ちゃんと顔をあげて、こっちを見なさい!
ドラマも映画も私に迫ってくるようなのだ
父の記憶が
眉間(みけん)に皺(しわ)を寄せた顔からはじまる
父はテーブルにすわって
黙って眉間に皺を寄せていた
食事の前も食事中も ずっと
顔を見るのがこわかった
眼をのぞき込むなどできなかった
という記憶
そんなとおいとおい記憶なのだが
画面のひとが
怖い眼をして
きっぱりと私に告げるのだ
―わたしを見なさい!
眼をそらさず
わたしをしっかりと見なさい!
●ご訪問ありがとうございます。
視線恐怖というのかもしれません、私の場合。子どもの時から「目つき」のことでは葛藤があります。
同じような葛藤をしている人がいらっしゃったら、「ここにも苦しみを感じる老人がいますよ」と、そっとエールをおくりたいと思います。
「自分のことを口にしてみると、それほどたいしたことでもないな」「相手の顔が見られない分しっかり耳を傾ければいいのだ」と、自己流心理学を編み出しています。