虞初新志 卷三(清)張潮 編著
賣酒者傳 魏禧 筆
魏禧
萬安縣有賣酒者,以善釀致富。平生不欺人。或遣童婢沽,必問:“汝能飲酒否?”量酌之,曰:“毋盜瓶中酒,受主翁笞也。”或傾跌破瓶缶,輒家取瓶,更注酒,使持以歸。由是遠近稱長者。
里有事醵飲者,必會其肆。里中有數聚飲,平事不得決者,相對咨嗟,多墨色。賣酒者問曰:“諸君何為數聚飲,平事不得決,相咨嗟也?”聚飲者曰:“吾儕保甲貸乙金,甲逾期不肯償,將訟,訟則破家,事連吾儕,數姓人不得休矣!”賣酒者曰:“幾何數?”曰:“子母四百金。”賣酒者曰:“何憂為?”立出四百金償之,不責券。
客有橐重資於途,甚雪,不能行。聞賣酒者長者,趨寄宿。雪連日,賣酒者日呼客同博,以贏錢買酒肉相飲噉。客多負,私怏怏曰:“賣酒者乃不長者耶?然吾已負,且大飲啖,酬吾金也。”雪霽,客償博所負行。賣酒者笑曰:“主人乃取客錢買酒肉耶?天寒甚,不名博,客將不肯大飲啖。”盡取所償負還之。
術者談五行,決賣酒者宜死。賣酒者將及期,置酒,召所買田舍主畢至,曰:“吾往買若田宅,若中心愿之乎?價毋虧乎?”欲贖者視券,價不足者,追償以金。又召諸子貸者曰:“汝貸金若干,子母若干矣。”能償者捐其息,貧者立券還之,曰:“毋使我子孫患苦汝也!”及期,賣酒者大會戚友,沐棺更衣待死。賣酒者顏色陽陽如平時,戚友相候視,至夜分,乃散去。其後,賣酒者活更七年。
魏子曰:吾聞賣酒者好博,無事則與其三子終日博,喧爭無家人禮。或問之,曰:“兒輩嬉,否則博他人家,敗吾產矣。”嗟乎!賣酒者匪唯長者,抑亦智士哉!
選自(《魏叔子文集》,有刪節)
原文、譯文 (現代中国語訳)
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賣酒者傳:古典典故,選自魏禧所著《魏叔子文集》。基本信息名 -百科知識中文網
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因技藝精湛而傳世之千古散文名篇《賣酒者傳》
現代中国語訳(百科知識中文網)を参照して、日本語にしてみました。
(拙訳)
江西省吉安市萬安県にひとりの酒売りがいた。酒造りに長けていたため金持ちになった。生涯、他人を侮らなかった。もし(主人に)酒を買いに来さされた下僕、下女に出会ったら、必ず「あなたは酒が飲めるか」と尋ねた。相手の酒の量で飲む酒を注いでやり、そして言い聞かせた。「絶対に瓶の中の酒を盗んで飲んではいけない。さもないと主人の鞭打ちを受けねばならない」と。ある時、下僕(下女)が道を歩いていてバランスを崩し、つまずいてひっくり返って転び、酒を詰める入れ物を壊したところに出くわした。いつも自分の家から持ち出す瓶に、いい酒を新しく詰め替えて、下僕(下女)に持ち帰らせた。こんなわけで、至る所の人は皆、酒売りは道義に叶った振る舞いの人だと称賛した。
郷里で、ある人が金を集めて酒を飲むたびに、必ず酒売りの酒屋に集まり会合をした。郷里のある人は何度も集まり一緒に酒を飲むが、衆議で決める事柄を決められなかった。互いに嘆息した。ほとんどの顔は難色を示した。酒売りが尋ねた。「皆さん、どうして何度も集まって一緒に酒を飲んでいて、衆議で決める事柄を決められないで、互いに嘆息するのですか?」集まって一緒に酒を飲んでいた人が言った。「私たちは甲某のために乙某に金を借りる担保を提供した。甲某は期限が過ぎても金を返そうとしない。まもなく起訴される。もし起訴されれば破産して、私たちまでも巻き添えになるだろう。私たちの幾つかの家の人は充分に休息できなかった。」酒売りは尋ねた。「あなたたちは、いくらの金を担保したのですか?」集まって一緒に酒を飲んでいた人が答えた。「元金と利息、合わせて四百両。」酒売りが言った。「これは何か心配するに値するものがあるのですか?」すぐに四百両を取り出して、彼らがローンを返済するのを助けた。またさらに、借用証書を取ることを求めなかった。
とある、とても多くの物を袋に入れて背中に背負い、路を歩いて行く人が大雪に遇い、前に行けなくなった。酒売りは道義に叶った振る舞いの人だと聞き、大急ぎで酒売りの店に行き、宿を取った。雪が続けざまに幾日も降り、酒売りは毎日、客を呼んで博打に同席した。そして、買った金を出して酒を買い、一緒に食べて飲んだ。客は大半、博打に負けた。内々、不機嫌に言った。「酒売りは帰するところ、道義に叶った振る舞いの人ではないのだろうか?そうなのだが、私は已に博打に負けて、さらにたくさん飲み食いして私の勝った金から払った。」雪が止んだ後、客は博打で負けた金を支払って出発の準備をした。酒売りは笑って言った。「天候は甚だしく寒いのに、博戯の名でなければ、客は(あなたは)きっとたくさん飲み食いしないだろう。」酒売りは、客に勝った金を全て客に返してあげた。
ある占い師が五行を説いた。まもなく酒売りは死ぬだろうと判定した。占い師が判定した死期がまもなくになった時、酒売りは買い入れた田畑、家屋の主人を一同に呼び寄せて言った。「もし私があなたたちの田畑、家屋を買いに行くなら、あなたたちは心中、願うか?価格に不利がないことを?買い戻したい人は当初の価格に基づいて、価格が不公平な人には、現金を出して追加で補った。また、酒売りに金を借りている人を一同に呼び寄せて言った。「あなたたちが借りた資金は若干だ。元金と利息は若干だ。」返せる人は利息を払わなくていい。貧しい人なら、すぐに借用証書を貧しい人たちに返した。(貧しい人たちは返済しなくてよい。)さらに言った。「私の子孫に借金の取り立てをさせて、あなたたちに苦しい思いをさせなくてよい。」占い師が判定した死期が来た。酒売りは多くの親戚、友人たちを集め、棺桶の支度をし、更に服装を換えて死ぬのを待った。酒売りの顔色は普段と同じで明るく輝いており、親戚、友人たちは互いに顔を見合せた。深夜まで待って解散した。その後、酒売りは更にもう七年生きた。
魏先生が言った。「私は聞いた。酒売りは博打が好きで、仕事がないとき、自分の子供たちと一日中、博打をして、言い争いが起きると、家の人の間の礼節がない。ある人が酒売りに尋ねると、酒売りは『子供たちは上手く遊び戯れる。子供たちが他人と博打をして私の家の財産を損なったというようなのではない。』と言った。ああ、酒売りは、ただ道義に叶った振る舞いの人であるだけでなく、更にまた、智惠のある人なのである!」