石油依存症と不老不死礼賛からの脱却
■健康と環境を考える エコロジカル・メディスン⑥
環境の話題というと最近は地球温暖化である。
二酸化炭素の排出量をどう減らすかということに焦点が絞られている感があり、
それに注目するだけでは全体的な視点に欠けることになる。
地球温暖化(もしくは気候変動)と並んで重要なトピックは
「ピークオイル」である。
ピークオイルとは、原油の生産量がピークに達して、
あとは減少の一途をたどるということである。
それにより何が起きるかは想像に難くない。
電気、冷暖房、ガソリン代、そして、石油製品の高騰が考えられる。
ピークオイルについては、海外と比較すると日本ではまだ情報が少なく、
市民の危機意識の低さが、なんだか心配だ。
私たちの生活は、衣食住そして医に至るまで、
かなりの割合で石油に依存している部分がある。
安い石油の大量消費を前提とした社会から、
地域をベースとしたしなやかな社会への変化を促す市民運動として
「トランジションタウン」という取り組みがある。
これは、パーマカルチャリストであるロブ・ホプキンスが
個人や国レベルではなく、街や村など地域での取り組みの方法を整理したものだ。
トランジションタウン運動(以下TT)は、英国のトットネスから始まり、
世界中の100余りの都市で取り組みが始まっている。
石油が高騰した時に、どうやって今の生活から変えていくかを考えた時に、
生活に関連するあらゆる分野について対策を講じる必要がある。
食糧やエネルギーをどう確保するかはもちろん、
「医」についても石油由来の新薬は手に入りにくくなる可能性がある。
そうした時に、石油がなかった時代から実践されている
様々な療法が当然注目されてくる。
TT運動では、この運動に関わる人々の間で
自分が関心ある分野で取り組めるようにワーキンググループをつくる。
例えば、建築、経済、教育、エネルギー、食糧、地域自治、芸術、
交通などがあり、「健康と福祉」「心と魂」をテーマとしたグループもある。
このニューズレターでも連載されていた高田さんの『トットネス便り』でも
代替療法が盛んな様子はうかがえるが、
背景にはそういった運動の影響があるのではと思う。
「石油に依存しない」やり方を考えることは、「環境負荷をかけない」
「二酸化炭素を出さない」やり方とほぼ同じになってくる。
サスティナブルなライフスタイル、自然との共生といった方向性も、
要するに同じ方向を向いている。何度かに渡り紹介している、
パーマカルチャー、エコビレッジ、そしてトランジションタウンも
これからの気候変動とピークオイルの時代における、
私たちの生き方の指針を与えてくれる。
ヘルスケアや医の分野に関しては「どう生きるか?」ありきで、
そこから「どう老いるか」「どう死ぬか」が見えてくるのだと思う。
単に、西洋医学にかわる代替療法が並べ連ねられるだけで
方法論に終始していたら根本的な解決にはならな。
今まで私たちは世界中から資源を奪い、どこか遠い国の人々や自然の犠牲の上に、
「物質」や「お金」という幻想の豊かさを得てきた。
そして、もうひとつの幻想の豊かさに「肉体レベルでの不老不死礼賛」
というものが、潜在的に人間の中にあるような気がする。
自然や人とのつながり、自分の心と体のつながりを取り戻し、
全体性を回復するホリスティックな生き方から、
さらに自分が自然の一部であるという、
よりエコロジカルな感覚をもった生き方に変容していくには、
生きること・死ぬことを見直すことが必要不可欠であると思うし、
ヘルスケアや医療にも「足るを知る」考えが必要なのではと思う。
どこかの偉い王様が不老不死の薬を得るために
何ものも厭わないような意識ではなく、
自然界が見せてくれるが生と死の循環から
自分の生き方・死に方を学ぶべきではないかと思う。
(2008年11月)
カムネット ウェブサイト
トランジションジャパン
■健康と環境を考える エコロジカル・メディスン⑥
環境の話題というと最近は地球温暖化である。
二酸化炭素の排出量をどう減らすかということに焦点が絞られている感があり、
それに注目するだけでは全体的な視点に欠けることになる。
地球温暖化(もしくは気候変動)と並んで重要なトピックは
「ピークオイル」である。
ピークオイルとは、原油の生産量がピークに達して、
あとは減少の一途をたどるということである。
それにより何が起きるかは想像に難くない。
電気、冷暖房、ガソリン代、そして、石油製品の高騰が考えられる。
ピークオイルについては、海外と比較すると日本ではまだ情報が少なく、
市民の危機意識の低さが、なんだか心配だ。
私たちの生活は、衣食住そして医に至るまで、
かなりの割合で石油に依存している部分がある。
安い石油の大量消費を前提とした社会から、
地域をベースとしたしなやかな社会への変化を促す市民運動として
「トランジションタウン」という取り組みがある。
これは、パーマカルチャリストであるロブ・ホプキンスが
個人や国レベルではなく、街や村など地域での取り組みの方法を整理したものだ。
トランジションタウン運動(以下TT)は、英国のトットネスから始まり、
世界中の100余りの都市で取り組みが始まっている。
石油が高騰した時に、どうやって今の生活から変えていくかを考えた時に、
生活に関連するあらゆる分野について対策を講じる必要がある。
食糧やエネルギーをどう確保するかはもちろん、
「医」についても石油由来の新薬は手に入りにくくなる可能性がある。
そうした時に、石油がなかった時代から実践されている
様々な療法が当然注目されてくる。
TT運動では、この運動に関わる人々の間で
自分が関心ある分野で取り組めるようにワーキンググループをつくる。
例えば、建築、経済、教育、エネルギー、食糧、地域自治、芸術、
交通などがあり、「健康と福祉」「心と魂」をテーマとしたグループもある。
このニューズレターでも連載されていた高田さんの『トットネス便り』でも
代替療法が盛んな様子はうかがえるが、
背景にはそういった運動の影響があるのではと思う。
「石油に依存しない」やり方を考えることは、「環境負荷をかけない」
「二酸化炭素を出さない」やり方とほぼ同じになってくる。
サスティナブルなライフスタイル、自然との共生といった方向性も、
要するに同じ方向を向いている。何度かに渡り紹介している、
パーマカルチャー、エコビレッジ、そしてトランジションタウンも
これからの気候変動とピークオイルの時代における、
私たちの生き方の指針を与えてくれる。
ヘルスケアや医の分野に関しては「どう生きるか?」ありきで、
そこから「どう老いるか」「どう死ぬか」が見えてくるのだと思う。
単に、西洋医学にかわる代替療法が並べ連ねられるだけで
方法論に終始していたら根本的な解決にはならな。
今まで私たちは世界中から資源を奪い、どこか遠い国の人々や自然の犠牲の上に、
「物質」や「お金」という幻想の豊かさを得てきた。
そして、もうひとつの幻想の豊かさに「肉体レベルでの不老不死礼賛」
というものが、潜在的に人間の中にあるような気がする。
自然や人とのつながり、自分の心と体のつながりを取り戻し、
全体性を回復するホリスティックな生き方から、
さらに自分が自然の一部であるという、
よりエコロジカルな感覚をもった生き方に変容していくには、
生きること・死ぬことを見直すことが必要不可欠であると思うし、
ヘルスケアや医療にも「足るを知る」考えが必要なのではと思う。
どこかの偉い王様が不老不死の薬を得るために
何ものも厭わないような意識ではなく、
自然界が見せてくれるが生と死の循環から
自分の生き方・死に方を学ぶべきではないかと思う。
(2008年11月)
カムネット ウェブサイト
トランジションジャパン