しがない公務員の大阪通信

大阪在住、在職の公務員が大阪の過去、今、そして未来を考えます。

特別区協定書(案)を読み解く4「大阪府に振り分けられる業務」

2020-08-19 | 大阪都構想を考える2025
大阪市を4つの特別区に再編する「特別区協定書」

令和7年(2025年)1月1日の大阪市消滅・4特別区誕生に向けた動きが本格化しています。

前回は「大阪市役所業務の分担の振り分け方」を紹介しましたが、
今回は特別区になることによって大阪府に振り分けられる業務を見ていきます。

ただ、 特別区協定書には大阪府に振り分けられる業務が明記されていません!

それはなぜかというと、
前回も説明しましたが、
まず大阪市が持っている事務すべてをまず大阪府が見ることとし、
そのうち「住民に身近な特別区が処理することが相応しい事務」だけを特別区で行ってもらうことになります。

つまり、 特別区は「基礎自治体である市町村に準ずる」特別地方公共団体で、
国の行政機関や各省大臣が助言や勧告を行うことができる普通地方公共団体とは異なり、
特別区の運営について助言及び勧告をすることができるのは知事のみとなることから、
すべては大阪府を通じて行うことになります。
(とても大切なことなのでもう1度書きました。)

そこで、
次の方法で検証していきます。

① 財産目録で大阪府に移管されると明記される業務を出す
② 協定書の任意事務で大阪府に移管されると明記されている業務を出す

どういった業務が出てきたかは下部に示すことにしておりますが、
これらを羅列してみると、
どういった事業が大阪府に移管されるのかが見えてきました。
① 公営・準公営企業会計事業
② 集客力のある大規模な公園と公園内施設
③ 大阪市域または大阪市域を越えた範囲に及ぶ都市計画、交通施策
④ 集客力のある大規模な競技大会や観光イベント
⑤ 高等学校、大学、研究・教育施設
⑥ 保健福祉分野において府として行うにふさわしい事務
⑦ その他(市税関係を含む)

これらの事業は、 大阪市であれば単独で行うこともできる、
または大阪府と共同で行うことができるものですが、
特別区に分かれるとそうもいかないものがほとんどだと思います。

大阪市がなくなるうえではある意味仕方がないと思いますが、
そこまでして大阪市をなくす必要があるのかというと疑問が残ります。

特に市域の都市計画については、
原則市で考えるものとなりますが、
そういったものはすべて府にはぎとられるわけですから、
本当に特別区は最低限のことしかしないってことになりかねません。

こういったことがどう影響するのか、
その判断は大阪市民の皆さんで答えを出すしかないと思います。

次回ですが、
こういった事業を行うためには財源が必要ですので、
その税源の根幹である税金について見ていきたいと思います。

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大阪府に移管される業務一覧



【① 財産目録で大阪府に移管されると明記される業務】
 A 公営・準公営企業会計
  ・中央卸売市場事業
  ・港営事業
  ・下水道事業
  ・水道事業
  ・工業用水道事業
 B 大阪府に移管される施設(主なもの)
  ・大阪城天守閣、音楽堂、大阪城公園、修道館、弓道場
  ・天王寺公園、天王寺動植物園、美術館
  ・長居公園、長居ユースホステル、自然史博物館、長居プール、長居球技場、長居庭球場、長居陸上競技場
  ・鶴見緑地、UNEP国際環境技術センター 、環境活動推進施設、鶴見スポーツセンター、鶴見緑地プール、鶴見緑地球技場、鶴見緑地庭球場
  ・難波宮跡、難波宮跡公園
  ・高等学校(中高一貫校を含む)
  ・デザイン教育研究所
  ・消防局施設
  ・中央公会堂
  ・科学館、大阪歴史博物館、東洋陶磁博物館
  ・アジア太平洋トレードセンター、国際見本市会場 インテックス大阪
  ・公営・準公営企業会計関連施設
 C 大阪府に移管される株式・債権等
  ・大阪港埠頭株式会社、大阪港埠頭ターミナル株式会社、株式会社大阪港トランスポートシステム、
   阪神国際港湾株式会社、アジア太平洋トレードセンター株式会社、夢洲コンテナターミナル株式会社
  ・関西国際空港土地保有株式会社
  ・阪神高速道路株式会社、本州四国連絡高速道路株式会社、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
  ・株式会社湊町開発センター、クリスタ長堀株式会社
  ・株式会社日本宝くじシステム
  ・公立大学法人大阪市立大学
  ・地方独立行政法人大阪産業技術研究所
  ・社会福祉法人大阪社会医療センター、地方独立行政法人大阪市民病院機構、地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所
  ・公益財団法人大阪市博物館協会、公益財団法人大阪科学振興協会
  ・ハック大阪投資事業有限責任組合
  ・消防職員災害待機宿舎
  ・大阪市食肉市場株式会社



【② 協定書の任意事務で大阪府に移管されると明記されている業務】
 ・保育人材確保事業
 ・スクールカウンセラー事業
 ・戦没者遺族援護事業(なにわの塔)
 ・あんしんさぽーと事業(日常生活自立支援事業)
 ・要保護世帯向け不動産担保型生活資金貸付事業補助金交付事業
 ・あいりん対策
 ・療育手帳発行業務
 ・大阪府重度障害者在宅介護支援給付金
 ・心身障がい者扶養共済事業
 ・障がい児(者)歯科診療事業
 ・障がい者スポーツ振興事業(全国障害者スポーツ大会)、知的障がい者スポーツ大阪大会
 ・認知症地域医療支援事業、認知症疾患医療センター運営事業
 ・全国健康福祉祭(ねんりんピック)選手団派遣事業
 ・夜間歯科診療に関する事務、周産期緊急医療体制整備事業
 ・特定保健用食品(承認)にかかる試験検査業務等推進事業
 ・大阪国際平和センター(ピース大阪)
 ・地盤沈下対策に関する事務、大阪府、大阪市環境影響評価条例に関する事務
 ・大阪 水・環境ソリューション機構、自動車公害防止広域対策
 ・エネルギー政策(地産地消、脱原発、水素エネルギー等)
 ・公園樹・街路樹の保全育成[大規模公園【後方支援活動拠点等】][幹線道路【広域交通網】]
 ・緑化の普及啓発(花とみどりと自然の情報センター)、鶴見緑地体験学習施設の運営
 ・「大阪の成長戦略」の推進
 ・地方独立行政法人大阪市立工業研究所
 ・大阪産業創造館、(公財)大阪市都市型産業振興センター
 ・花き流通対策事業
 ・大阪観光局事業
 ・大阪・光の饗宴事業、御堂筋活性化事業、水と光のまちづくり推進事業
 ・クルーズ船の寄航誘致、夢洲地区における観光拠点の形成
 ・文化振興にかかる事務(全市的な観点で実施している事業)
 ・新しい美術館の整備事業
 ・大規模競技大会(国際大会・全国レベルの大会)の開催
  (大阪国際女子マラソン、社会人野球日本選手権、大阪マラソン、
   大阪国際トライアスロン、全日本都道府県対抗少年剣道優勝大会、
   全日本バレーボール大会、全日本陸上実業団陸上競技選手権、中之島ダンスフェスティバル等)
 ・大阪市長杯世界スーパージュニアテニス選手権大会
 ・ワールドマスターズゲームズ2021関西
 ・大阪ドーム
 ・都市計画(都市再生特別地区・用途地域等)
 ・近畿地方交通審議会関連事務
 ・大阪シティエアターミナルビル
 ・北陸新幹線・リニア中央新幹線整備促進検討事務
 ・グランドデザイン・大阪の推進
 ・うめきた地区開発関連事務
 ・統合型リゾート(IR)を契機とした夢洲まちづくりの検討
 ・新大阪・淡路周辺地区まちづくりの検討
 ・JR東海道線地下化事業
 ・消費者の安心安全の確保に関する事務(立入り調査)
 ・印鑑登録証明事務、民刑事務(広域機能調整分)
 ・ドメスティック・バイオレンス等対策事業、緊急母子一時保護事業に関する事務
 ・大阪労働局・大阪府との連絡調整事務(雇用対策会議等)
 ・市税の賦課徴収業務(法人住民税、固定資産税、都市計画税及び事業所税関係)
 ・「副首都・大阪」の確立に関する事務

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