GAFA、すなわち、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン。これら、アメリカ合衆国を、「300万人の領主と3億人の農奴の国」(p.414)につくりかえようとしているグローバル企業。スコット・ギャロウェイは、その功罪両面を論じていく。かならずしも、整然とした論理的構成にはなっておらず、さすがは、自らが「生き馬の目を抜く」ようなICTビジネスにおいて、過酷な競争を展開してきたビジネスパーソンだ、GAFAへの愛憎半ばする思いが、行間から伝わってくる。
ギャロウェイは、GAFAの「裏の顔」を次のように描く。
「売上税を払うのを拒否し、従業員の待遇が悪く、何万という仕事を消滅させながら、事業革新の神と崇められている小売業者。」(アマゾン)
「国内のテロリズムについての情報を連邦政府の捜査にも提供せず、その思想に共鳴する宗教じみた熱狂的ファンに支えられるコンピュータ企業。」(アップル)
「あなたの子どもたちの何千枚もの写真を分析し、携帯電話を盗聴器として活用し、その情報をフォーチュン500企業に売りつけるソーシャル・メディア企業。」(フェイスブック)
「メディアで最も実入りのいい検索分野で90%のシェアを占めながら、せっせと訴訟とロビー活動に励んで、独占禁止法の適用を逃れている広告配信プラットフォーム。」(グーグル)
(p.16)
ここでのレビューは、内容に不満があれば、「次は良い書物を期待してるよ」という思いで文句をつけることもあるが、ほとんど「良い本を紹介したい」という思いだけで書いており、それこそ、「アマゾン」が独占企業になるあしがかりとなった「レビュー」群と対抗する気などさらさらないわけだから、以下、勝手にGAFAへの私見を綴ってみたい。
グーグルは、事実関係を確認するための検索に使うことが多いが、検索エンジンが、「使う者が多いほど人工知能としての検索機能が高度化する」わけだから、「検索するとはすなわちググること」というように、一社独占になるのもむべなるかなとも思うが、さすがに全世界の情報が単一の検索エンジンで処理されるのは、検索履歴の「ビッグデータ」が特定の政治権力に悪用されるリスクを考えると、怖ろしいことではある。これまでも、「検索履歴を収集されない権利」の主張は行われてきたし、わたしも、'Google Chrome'に'DuckDuckGo'というアプリを組み込んで、検索履歴から「これ買えあれ買え」とうざったらしい広告を見る羽目になるのを防ごうとしているのだが、'Google Chrome'も'Android'も快適に使えるし、'Google Maps'、'Google Calender'なしの生活なんか、生きたこともない19世紀にもどるようで、考えられない。また、'Ubuntu Studio'で稼働しているパソコンをオーディオシステムに組み込んで、'Google Play Music'で好きな音楽を聴くのが、生きがいの半分くらいになっているわけで、その恩恵ははかりしれないが、世界レベルでのグーグルのビジネスへの行政規制は必要だと思う。
「アップル」の製品とサービスは、これまでほとんど使ったことないし、使うつもりもない。ギャロウェイが正しく指摘しているとおり、「アップル」は法外な利益をむさぼるぼったくり企業である。ギャロウェイが「異性を惹きつけるアイコン」として「アップル」の製品を位置づけているのは、それは違うのではないかと思うが、「アップル」信仰は得体のしれない新興宗教なみに気味が悪い。低スペックのデバイスに、高いお金を支払って、恥ずかしい「りんご」のロゴてからせ、悦に入っている人たちの気が知れない。いやいや、使ったことないだけで、少しは良いところがあるのかもしれない。
「フェイスブック」は、知人の近況が知れて楽しい、ただそれだけで利用している。「アマゾン」は、「安くて便利」なのでつい利用してしまうが、そもそも物欲がすっかり減退し、もし、長生きして、経済的余裕があれば、「国境を超える医師団」や「保護ねこNPO」への月々の寄付金を増額したく思っているくらいなので、正直、どうでも良い。いずれにせよ、雇用は増やさず、莫大な収益を租税回避地でロンダリングして脱税しているGAFAに対しては、少なくともがっつり法人所得税を現地で徴収し、富の再配分に役立てていくべきだろう。
本書にもどれば、さすがは、合衆国のビジネススクールで教鞭をふるっているだけに、GAFA等のビジネスモデルを検証し、いかにしてビジネスに成功するか、10章では、延々と処世術が展開されていて、これにはうんざりさせられた。これだけGAFAの功罪を把握しているわけだから、これらの企業にいかにして社会正義を果たさせていくべきか、その議論の方が大切であると思うのだが、はて。
目次
1章 GAFA――世界をつくりかえた四騎士
2章 アマゾン――1兆ドルにもっとも近い巨人
3章 アップル――ジョブズという教祖を崇める宗教
4章 フェイスブック――人類の1/4をつなげた怪物
5章 グーグル――全知全能で無慈悲な神
6章 四騎士は「ペテン師」から成り上がった
7章 脳・心・性器をターゲットにする
8章 四騎士が共有する「覇権の8遺伝子」
9章 NEXT GAFA――第五の騎士は誰なのか
10章 GAFA以後の世界を生き残るための「武器」
11章 少数の支配者と多数の農奴が生きる世界
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