小室直樹,2015,日本いまだ近代国家に非ず,ビジネス社.(1.4.25)
政治家の本分は、国民に最低生活、心身の安全、私有財産を保障、保全すべく、立法、既存法令の改正、廃止を行うところにあり、行政官僚の役割は、法令に則り細則を定め、公僕としてつつがなく法令を執行するところにある。
ところが、日本では、政治家には立法の能力も意欲も欠落しており、官僚が、省益と自らの昇進をかけて、政治家を操り立法行為までをも担う。
ないがしろにされるは、国民の生活、生命、財産、である。
家産官僚制の残滓を引きずったまま、いまだ近代官僚制の鉄則さえ遵守されず、公益が官僚共同体の私益に蹂躙される現実が、小室政治学によって鮮やかに解き明かされている。
目次
プロローグ 誤解だらけのデモクラシー理解
第1章 大いなる資質を具えた政治家とは―田中角栄だけが、唯一のデモクラシー政治家である理由
第2章 官僚は、どう操縦するのか―角栄は、彼らを「生きたコンピュータ」と評した
第3章 果たして金権政治は“悪”か―デモクラシーは膨大なコストをかけて購うもの
第4章 政治家の「徳」とは何か―「運命を下僕にする力」こそ為政者の要件
第5章 デモクラシーとは何か―果たして「国民主権」が守られているのか
第6章 暗黒裁判だったロッキード角栄裁判―江戸時代のままの日本人の法意識こそ問題