本書で指摘されている、同居家族のいる要介護高齢者への生活援助の制限、院内介助の介護保険サービスからの除外、といった問題は、多分に自治体裁量に委ねられたままである。また、介護士やホームヘルパーの低賃金ゆえの恒常的不足は、ますます深刻化し、地域によっては「制度あってのサービスなし」の惨憺たる状況にある。
加齢とともに要介護のリスクが高まることは自明であるのだから、疾病リスクが分散する(高齢期を除いた)医療には保険原理が適合するとしても、主として高齢者を対象とした介護保障に保険原理はなじまない。
介護保険によって「措置から契約へ」の転換が果たされたというけれども、税を財源とする介護保障であっても「契約」によるサービス受容は可能であり、それができないとするのは、たんに「介護を受ける権利」が未確立であることを意味するにすぎないのではないだろうか。
高齢者介護においても、保険方式から租税方式への転換が必要であると考えるが、保険方式でさえこのありさまなのであるから、その実現可能性はきわめて厳しいだろう。
二〇〇〇年四月に始まった介護保険制度は、「介護の社会化」「高齢者の自立支援」を進める画期的なものとして歓迎され、今日、約四〇〇万人が利用している。だが、この間、財源論を盾に改悪が続き、緊急の課題も山積み状態。社会保障審議会の委員として議論に加わってきた著者が、利用者の視点に立って徹底検証と具体的提言を行う。
目次
第1章 介護保険はなぜ創設されたのか
介護保険サービスの夜明け
高齢社会の到来と新しい事態
介護の社会化
介護保険サービスの推移
第2章 介護保険サービスの「適正化」
同居家族と「生活援助」
生活援助利用制限の波紋
なぜ厳しい、外出支援
福祉用具貸与にも「適性化」の嵐
直撃された小規模事業所
第3章 解決されるか、介護現場の危機
介護で働く人たちの叫び
介護保険施設の新たな課題
ホームヘルパーは「社会の嫁」か
ケアマネジャーの悩みと責任
第4章 迷走した要介護認定
要介護認定とは何か
衝撃の二〇〇九年版テキスト
経過措置と基準緩和
第5章 老いを守る介護保険への道
第4期(二〇〇九~一一年度)の介護報酬改定
利用者にとっての介護報酬改定
介護保険一〇年で見えたもの
老いを守る介護保険への道
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