垣谷美雨,2023,代理母、はじめました,中央公論新社.(5.7.24)
2010年代後半以降、日本と韓国では、「フェミニズム文学」がけっこう盛んになってきたが、本作もその系譜に位置づけられる作品だろう。
代理母は、「それをお金で買いますか?」(マイケル・サンデル)問題の最たるものであろうが、主人公たちは、代理母を務める貧困女性が、買い手やブローカーに搾取される度合いとリスクを低減するための最大限の配慮を実践していく。
本作も、一気読みしてしまうこと必至のおもしろさだ。
解説は、山田昌弘さん。
義父の策略で、違法な代理母出産をさせられた16才のユキ。命がけで出産したにもかかわらず、報酬はすべて義父の手に。再び代理母をさせ稼ごうとする義父の手から逃げだしたユキは、自らの経験を逆手に取り、自分のような貧しい女性を救う大胆な〈代理母ビジネス〉を思いつく。ユキを支えるのは医師の静子&芽衣子のタッグと、ゲイのミチオ&一路。さまざまな事情を抱えた「子どもを持ちたい」人々が、最後の砦としてユキたちを頼ってやってくるが……日本の生殖医療の闇、貧困層の増大、妊娠・出産をめぐる負担など、現代日本が放置した社会問題を明るみにしながら、「代理母」ビジネスのタブーに切り込んだ問題作。