粗茶淡飯

中国・台湾・日本のお茶に関する色々。執筆者・徳田志保。

正山小種(ラプサンスーチョン)①

2016-07-21 22:17:29 | 紅茶(中国茶・台湾茶)




ラプサンスーチョンは福建省武夷山市桐木関で生産されている紅茶です。日本でも松を燻した香りに魅了された紅茶ファンが多くいますね。

正山小種・松燻小種・Lapsangsouchong など、その時々によって呼び方も記載の仕方も変わります。

英語表記であるLapsang souchong は
松燻小種を福州語で発音したのがそのまま表記になったと言われています。
松(lap) 燻(sang) 小(sou) 種(chong)。
以前福州出身の人に読んでもらったら、確かにそのように聞こえたので、ほぼ間違いないでしょう。

中国国内では以前からそれほど注目されるお茶ではなかったのですが、北京オリンピック前後に、「金駿眉」という紅茶が一気にスターダムに押し上げられたことで、再び語られるようになりました。

この背景については、直接お会いする人には(質問されれば)私が見聞きしたことを織り交ぜながらお話しますが、中国ではネット上でもそのストーリーの外格を知ることが出来ますので、そちらを参考にされても良いと思います。

さて、イギリスではBOHEA(武夷)と呼ばれ愛されたお茶ですが、このラプサンスーチョンの産地、桐木関は現在も武夷山市に属するものの、言語(方言)は武夷山で使われる閩北語ではなく、隣接する江西省鉛山県で使われる「鉛山語」です。その鉛山は緑茶の産地になります。

小種・Souchong、つまりスーチョンは日本語で言う、在来種を意味します。武夷岩茶では「奇種」です。

そんなことからも、本来のラプサンスーチョンとは何か…そのヒントの一端が見えてくるのではないでしょうか?

人の行き来や、情報伝達が何事もなく潤滑に行われやすくなった現代となっては、あまり大したことがないように感じられる方もいるかもしれませんが、中国語は言葉の1つ1つにかなりの情報量が潜む言語ですので、上記のような言葉はこのお茶に関係する、ありとあらゆる場においてヒントとなるはずです。


2016年鳳凰単叢③

2016-07-21 00:55:12 | 烏龍茶(中国茶・台湾茶)


中国大陸の三大烏龍茶と呼ばれるお茶の中でも鳳凰単叢は、武夷岩茶や安渓鉄観音に比べて普及がかなり遅れていました。

そのせいで、私がこのお茶に関わり始めた2001年。工場に足を踏み入れた2006年頃は他の産地では絶えつつあった烏龍茶の原始的な製法や、その考え方が辛うじて残っていました。当時は業界関係者からは、こんなお茶に関わってどうする…と、色々と言われましたが、今振り返ると、私自身にとって、これは非常にラッキーなことだったのだと確信しています。

2012年頃から、このお茶も徐々に台湾や、東南アジア諸国、中国国内で注目を集めるようになり、上記の人達が積極的にこのお茶を扱うようになったことで、生産者も急速に豊かになって行きました。車を買い、山の下に家を借り、子供に教育を受けさせ、家や工場を積極的に建て替え始めます。

そして今…






工場の製茶機械は勿論のこと、このように日干萎凋するところも、雨天の際の影響を最小限に抑えるべく工夫されるようになりました。

私が初めてウードン村を訪れた2001年の時は民家と、最低限の製茶機械が置かれた小さな工場が山に貼りつくように並ぶ、小さな小さな山村でした。ガスもなく、製茶の熱源もまだ薪、プロパンガスが自由に手に入るようになったのも、ここ4、5年のことです。

そして一昨年「中国農業文化遺産」として承認及び登録完了。昨年から国又は省政府の様々なプロジェクトが開始します。



更に上記の動きに合わせるかのように、古樹の登録及び保護も始まりました。

5年後、10年後…鳳凰単叢は、どのようになっているのでしょうか。個人的には知りたいような、知りたくないような心境ではあります。