さて話を国産紅茶の製造のお話へ移します。
①でも触れましたが、当時、生産者さんは自分達が作っているそのものに満足している訳ではありませんでした。情報が少ない中、模索して作っているので、自信もありませんし、逆に他者からの有用性の高い情報を求めてもがいている状態だったと思います。
そこで私は心の中では、彼らを紅茶産地へ連れて行くことを決め、その前に彼らに1度頭の中を整理するよう提案しました。
A.紅茶を作るのなら、どこの産地のものを目標にするのか?
ダージリンのようなものが良いのか?
それならファーストフラッシュなのか、セカンドフラッシュなのか?
インドの紅茶にはアッサム、ニルギリもありますし、スリランカにもあります。
それとも紅茶の始祖である正山小種(ラプサンスーチョン)や、キーマン、その他台湾の紅茶なのか?
B.リターンが欲しいならリスクも払わなければならないということ。
どの仕事も同じですが、農業も、新しい分野を始める際は学びながら、トライアンドエラーを繰り返し、そのための時間とお金と、忍耐力が必要になります。
農家さんは家族一緒に働くところがほとんどなので、やってもお金になるかわからない懸案に、1番の働き手である彼らが研修や勉強会に年に何日も出かけ、出費も…というのは、出来れば避けたいはずです。更に世代によって意見も違うでしょうから、ご家族は当然ながら容易に首をたてに振れません。
ここを説得するには、やはり本人の固い意思と、周囲の理解を得るための努力と忍耐が必要になります。(もちろん、私も彼らに対して責任があるので、時に居心地悪い思いをするのを覚悟しなければなりません。)
試作会、勉強会、上記のような話し合い…このような事をしばらく各地で繰り返し続けて、ようやく次のステップへ進んだのでした。