macro prudential policy
個別金融機関レベルでの信用秩序維持のための政策micro prudential policyが金融システム全体の安定性と必ずしも一致しないことがとくに2008年の金融危機以降 意識されるようになってきた。典型的な事例とされるものの一つは リスク管理指標の共通化により金融機関の行動が一方向に偏ること。たとえばVaRによるリスク管理が一般化すると、金融機関は国債の値下がりに対して、国債をさらに売って損切りをしようとする。しかしその行動は、多くの金融機関が一斉になだれをうつようにひろがりやすくなる。このことは国債の値下がりを大きくして、結果としてもともとの狙いである値下がりリスクの最小化という目的とは反する結果がもたらされる。この点は売買プログラムの自動化(プログラム取引 アルゴリズム取引)の議論とも重なる。今一つの展開的な事例は、金融機関に対する自己資本規制である。この規制はリスクアセットに対する自己資本の維持という規制に自己矛盾的な要素が知られる。たとえば機械的に一定の比率を強制すると、貸付はリスクアセットとして、自己資本規制を達成する上では削減すべき対象になりやすい。たとえば景気悪化局面で景気を回復するうえでは融資(貸付)の拡大が望ましいが、自己資本規制のもとでは貸付が削減され、企業の資金繰りが悪化して不良貸付がかえって拡大するリスクがある。こうした側面はカウンターシクリカル(景気循環増幅的)とも呼ばれる。
そこで議論されるのはマクロプルーデンスと呼ばれる政策である。マクロプルーデンス政策についてもともと昔からあった考え方だという主張もあるがそれは本当だろうか。確かにあげられている手段そのものはこれまでも知られているものだが(その意味で議論は昔からあるが)、ミクロレベルの政策の積み重ねの逆効果的側面を緩和する目的で議論が進んでいるのは近年の新たな傾向であるし、とくに景気停滞局面からの脱却が議論されているのは、新しい問題であるように思われる。
主たる政策手段。①融資における担保資産の選択。担保の比率。②与信の伸び率。③レバレッジ比率。④資本バッファー規制(自己資本に組み入れるものの内容)。⑤預貸率。準備預金比率。
ベイルイン ベイルアウト bail-in and bail-out
合成の誤謬 fallacy of composition
分類:金融システム論
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