Entrance for Studies in Finance

Case Study on NSSMC(新日鐡鉄住金)

 重油の価格の値下がりのほか鉄鋼石など資源価格が値下がりしている(2011年のpeak対比では半減 ここでも原油と状況は似ておりコストの安いオーストラリアの業者は増産体制維持 これによに悩む中国の中小鉱山が赤字化し生産がとまり需給が当面引き締まるとみられる)。国内では造船用、土木工事用鋼板、建築向け鋼材需要が堅調であるため、原材料となる「鉄鉱石の価格下落で鉄鋼メーカーの採算は改善している(2015年3月期 他方円安で採算は悪化している面もある 自動車メーカーは鉄鋼メーカー側の事情に配慮して鋼板価格のさらなる値下げを求めなかったとされる:2015年2月:2014年度下期の鋼板価格について、背景には自動車メーカーは連結最高益更新。政治的配慮か?)。 海外進出した日系自動車向け高付加価値品は値崩れしにくいが(加えて円安で輸出採算改善 自動車の軽量化につながる高張力鋼板で新日鉄 JFEなど日本メーカーが高いシェア)、汎用品では競争力が落ちている。

 3億トンの設備過剰に悩む中国鉄鋼業(現在生産量8億トンは世界生産の半分を占める 生産能力は11億トン 日本の生産は1億トン・・・2014年)では国内経済の減速が鋼材や鉄鉱石の過剰供給をもたらしている。資源安は油井管向け鋼材需要(シームレス管 住金が強い このほか国内鉄道車輪も住金が100%シェア これに対して新日鉄はラインパイプ レールが得意 つまり両者の合併で品揃えで相乗効果がある)の減少につながる。国内にも減速懸念。

 中国そして韓国の鋼材が安値でアジア市場に大量に流入(各国では自国産業保護のためのセーフガード:緊急輸入制限発動、反ダンピング(不当廉売)措置としても関税上乗せの動きがある)。我が国(内需は6000万トン その1割にあたる輸入鋼材が入っている)にも中国そして韓国の鋼材が押し寄せている。韓国の鋼材は品質的にも日本物と競合するとのこと。輸出はなかなか増やせない。

 国内は自動車、復興需要、物流オフィスビルなど建設業向けに鋼材価格が堅調であるため鉄鋼メーカーには利益を確保しやすい状態。国内の建設需要は人手不足のため想定より伸びない状況が続いている。東京五輪を控えて鉄鋼メーカーは強気で安売りに転ずる気配はない。他方、ゼネコンは流通在庫を根拠に値下げを迫る構え。荷動きの悪さやアジア市況の悪化が流通価格を弱気にさせている(2014年10月)。中国では2015年に新たな高炉を完成させる動きもあり、世界的な過剰能力の解消には遠い。
 鉄鋼石価格の低下は車用鋼板の値下がりにつながり自動車メーカーにはプラス。円安は輸出競争力の回復、安価な輸入鋼材の減少にもつながったとされる限りでは鉄鋼メーカーにもプラスに働いている.新日鐡住金(Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation:NSSMC)は2012年10月の経営統合によるコスト削減効果(生産分担による輸送費削減)に鉄鋼石価格下落も重なって業績の改善が顕著。経営統合により同社はアルセロール・ミタル(2006年ミタルスチールによるアルセロール買収で成立 ルクセンブルグ)に次ぐ世界2位の鉄鋼メーカーとなった。3位には中国の河北鋼鉄集団、宝鋼集団(新日鉄と協業関係にある)が同順位、5位が韓国のポスコ(現代自動車が現代製鉄により鉄の内製化・・・ポスコは経営悪化 日系自動車メーカーへの食い込みはかる)。鉄は規模の経済性が出やすいとされる。

 当初14年3月期までは効果は購買コストの削減などソフト面。2013年末欧州アルセロールミタルと共同で独社テイッセン・クルップから米アラバマ州の自動車用鋼板工場を15億5000万ドルで買収決定(買収工場はテイッセンが2010年3600億円かけて稼働した最新鋭工場 最新の熱延鋼板ライン含む 2014年半ば実施予定だったが実際は2014年2月27日に前倒し買収完成 早ければ2014年度末にもフル操業  この買収により自動車用鋼板の生産で海外900万トン 国内800万トンに 海外と国内の比率が逆転した 高品位鋼板の現地生産による安定供給は進出している完成車メーカーの歓迎するところ 1990年稼働のミタルとの米インデイアナ州の合弁工場はミタルの設備が古く最高強度の鋼板生産むつかしい)、中国上海市でも自動車用鋼板新工場を建設(宝鋼集団との合弁会社BNAで自動車用亜鉛めっき鋼板の大型ラインを増設 15年度内稼働目指す)。

 しかし15年3月期にむけては製造ラインの統合など、ハード面の効果が期待されるとのこと、生産品種の集約。他方、設備休止(15年度末で君津の高炉1基を休止予定:中核設備の能力削減は画期的 高炉は止めると再稼働には大型投資が必要 新日鉄の航高炉休止は1993年の広畑製鉄所以来 休止するのは最も古い第三高炉 このほか和歌山製鉄所で2013年3月に予定していた新高炉の稼働を延期)やシステム統合でのコスト削減効果(シナジー効果)が大きい。いまひとつは資産圧縮である。合併後は重複保有株の処分に加えて、政策保有目的の株式を大きく処分。株高効果で資産圧縮効果(経営統合で2兆6400億円まで膨らんだ有利子負債削減)が大きくでたとされる(2014年3月末までに3000億円(総資産の4.4%)の資産圧縮 有利子負債2015年3月末で2兆3000億円台目指す)。負債資本倍率1.2から1.0に改善。減価償却と同規模の設備投資の継続。効率の向上により売上高経常利益率5%目指す(将来的には10%)。以上は中期経営計画(2016年3月期までの3ケ年 2013年3月13日発表)⇒2013年4-12月期5.5%(ポスコ4.8%)を上回る。時価総額3兆2000億円はアルセロールミタルを抜き世界首位とも。
 表面化した問題として名古屋製鉄所での事故多発(2014年1月 6月 7月)が注目される。黒煙噴出トラブル(トヨタなどの完成車にススヤタールが付着)等が出た。事故が続いた原因の一つにバブル崩壊後のリストラ総人員抑制が指摘される。30歳代40歳代がほとんどいない。若手がマニュアル外の想定外事故に対応できない。また名古屋製鉄所の設立は1958年で設備老朽化の指摘もある。同様の老朽化問題は製油所についても指摘がある。更新には巨大投資が必要であり、大規模投資の判断は極めてむつかしいとのこと。9月3日には爆発事故も起きた。大規模な更新投資をするか判断の分岐点にあることは間違いないだろう。
  ライバルは韓国のポスコ。ポスコは浦項と光陽の2ケ所に生産拠点集約(逆に合理化余地少ない)。国内で独占的地位で高い利益率誇っていた。しかし現代製鉄が高炉での鉄鋼生産に乗り出し(鋼板の内製化進める)、2010年貿易商社大宇インターを買収して事業多角化(非製鉄事業の強化)。さらに割安な中国製品の流入、円安による日本勢の攻勢で利益率低下している。この状況にポスコは生産コストの引き下げを進め、多角化を見直し本業回帰を宣言したとされる(2014年5月)。

 ブラジルの鉄鋼大手ウジミナス(高炉から圧延まで一貫生産)をめぐり、2011年に共同経営に加わった、アルゼンチン鉄鋼大手テルニウムと主導権争い(2014年9月表面化)。テルニウム出身の社長らを解任に賛成しテルニウムとの主導権争い続く。 


  ポスコは高炉建設による一貫生産体制構築(2013年12月インドネシアで高炉一貫製鉄所を稼働 ポスコはインドのオリッサでも一貫製鉄所を計画)。新日鉄は母材(中間製品)を輸出、現地に加工拠点を設け最終製品に加工する戦略(高炉建設には巨費が必要のため高炉建設は焦らない⇒現地に高炉を建設するポスコに勝てるかは未知数)。ポスコは中国で2013年4月自動車用鋼板工場を稼働。インドでも冷延工場の稼働を目指す(新日鉄は2014年5月タタとの合弁工場を稼働。9月には開所式を開いた)。インドネシア(トヨタ、ダイハツ、スズキなどが進出)では国営クラカタウスチールと合弁で造船用厚板などの高炉一貫工場を2013年12月に稼働。初期トラブルはあったが2月末に操業再開(新日鉄もやはりクラカタウと2014年8月合弁で自動車用鋼板工場の建設で合意した。高張力鋼板の最高級品ハイテンも供給の予定)このようにポスコと新日鉄の戦略はアジアで激しくぶつかっている。現地工場による納期短縮。不良品への対応の迅速化。東洋のデトロイトとされるタイで新日鉄は早くも1999年から現地企業と車用鋼板を共同生産。自動車の燃費性能向上にかかせない高張力鋼板(ハイテン)が売り。自動車用高張力鋼板では、最大市場の中国で宝鋼集団との合弁会社がシェアトップを維持。そこにポスコは重慶鋼鉄集団と提携して現地生産に乗り出す方針を決め、他方、ミタルも華菱鋼鉄との合弁生産を2014年6月に開始したとのこと。
 なおブラジルでは鉄鋼大手ウジミナスをめぐり第二位の株主アルゼンチンの鉄鋼大手テルニウムとの対立が深刻だ。2014年9月にはテルニウム出身の社長が解任された。しかしテルニウムと新日鉄住金の出資比率は互角だ。両者は経営方針を巡り対立しているとされ、新日鉄側は老朽設備の改修、自動車用鋼板の拡充による収益改善を目指しているとされる。
分類:Case Studies

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