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金融機関役職員報酬の公的規制について

金融機関役職員報酬規制論
○健全な報酬慣行に関する原則(金融安定化フォーラム 2009年4月)
 短期の業績をベースにした業績連動報酬 目先の利益を追求する行動に拍車をかけた可能性⇔健全な報酬慣行に関する原則を金融安定化フォーラム(FSF)が定める(2009年4月)。背景には、短期的な業績に幹部の報酬が連動する仕組みが過度な投機を増幅したとの反省がある。経営者や運用担当者は、業績が上がるほど巨額報酬が得られる場合、リスクを負って短期利益の追求に走りやすいとされる。その原則とは、報酬はあらゆる種類のリスクに応じて調整される。報酬額はリスクに対する業績と整合的であること。報酬支払のスケジュールはリスク発生の時間軸に応じたものであること。現金、株式などの報酬の組み合わせはリスクと整合的であること など。
 ○金融機関報酬規制案(金融安定化理事会が策定 2009年9月のG20で了承)
その後、フォーラムの後進身の金融安定化理事会(FSB)が2009年9月24・25日のG20首脳会議(ピッツバーグサミット)で金融機関報酬規制案を報告了承された。資料:Leaders Statement of Pittburgh Summit 2009
了承された基本指針は、報酬の一定割合を数年にわたり分割支給する、将来損失が生じた場合は」報酬の一部を返還する、現金だけでなく自社株でも支給する、高額な最低保証制度を撤廃する、報酬体系を開示するといった内容。そのほか報酬総額を純利益の一定割合に制限すること、経営者らが手にする報酬の半分を超える部分を数年間に分割するなど数値基準の導入も。金融機関監督当局は、金融機関が指針に基づいて適切に報酬を支払っているか監視すること。銀行の報酬が、当局の監督対象であることも明確になった。
 報酬の一定割合の分割支給 1年超にわたるボーナス保証の回避 損失が発生した場合の一部返還 報酬体系の開示など。2009年9月、金融安定化理事会(FSB 金融安定化フォーラムの後身)が、健全な報酬の原則の適用基準を策定。銀行の報酬は当局の監督対象に。報酬額の変動に上限を設ける(総額に占める あるいは固定給に対する変動給の割合を制限する)、是正措置も要求できる等厳しい制限案を独仏は主張している。
 この問題をめぐっては欧州の方が規制の意見が厳しく、米国に同調をもとめてきたといえるが、米国では報酬体系についてFRBが監視を強める動きをしているほか、公的資金で救済された企業・金融機関の幹部の現金報酬を政府命令で直接制限しようという動きがあった。2009年10月に7社の幹部25人を対象として始まったこの直接規制は、12月には各社100人に拡大された。
 ○英国が報酬規制案公表(2009年11月26日)で先行
 英国では、ボーナスを短期でなく長期の収益に連動させ、問題が生じた場合には返納させるなどの報酬規制案の報告書が公表された(2009年11月26日)。目先の収益に貢献するものの、将来の損失を被る可能性のある高リスク投融資に金融機関が傾斜したのは、報酬のシステムにもんだいがあったとして、ボーナスを短期でなく長期の収益に連動させること(総額の半分は3-5年以上くりのべる 現金支払い分を3分の2以上くりのべ 高額ボーナスの半分以上は自社株支給)、問題が生じたときには返納させること、年収百万ポンド(約一億5000万円)以上の従業員数を段階別開示義務付けなど。が提案された。この報告書のもとづく具体案は2010年年明けにも公表されるとされた。
 その後、2009年12月9日の英国議会での演説でダーリング財務相は、銀行ボーナスで2万5000ポンド(約360万円)を超える額について50%の特別税を即日施行で2010年4月までかけることを発表した。
 ○対応策を打ち出した欧米と無策の日本の金融庁
 その後、米国では報酬規制のガイダンスが公表された(2010年6月)。このガイダンスに沿って金融機関に自主的な対応を求めている。他方、欧州連合では詳細な数値基準が示された(2010年7月)。ボーナスの40%(高額の場合は60%)以上は翌期以降に繰り延べ、今期支払い額の50%以上は株式等で支払うこと、現金で支払うボーナスは全体の30%(高額の場合は20%)以内に制限すること。など。このような欧米の動きに比べて日本の金融庁の態度は曖昧である。2009年12月25日に発表された金融庁の監督指針は、役職員の報酬総額や業績連動部分の割合の開示を求めるものにとどまり(対象は国際的に活動する金融商品取引業者グループとある)、数値基準の例示は見送られている。これは日本では業績連動巨額報酬の慣行はほとんどないとの主張を理由にしているが、この主張は実証により検証されるべきだろう。
資料 金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針の一部改正(案)の公表について 金融庁2009-12-25
 その後2010年3月期決算から、上場企業を対象に年間一億円以上の報酬を受け取る役員の氏名・金額が有価証券報告書で開示されることになった。この開示は、金融機関に限定されたものではないが、金融機関の役員報酬にも影響が大きい。私見では上場会社役員の役員報酬については個別報酬開示を当然とする考えかたは日本社会では強いのではないか。

originally appeared in January 20, 2010
corrected and reposted in September 13, 2010

上場会社役員報酬の個別開示開始(2010年6月)

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