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Entrance for Studies in Finance

証券の価格・価値の計算方法について

証券の理論価格とその算定式について

1)転換社債の理論価格parity
 転換社債についての理論価格parityというのは、転換社債の価格を100円とするとき
つぎのように計算される。
  理論価格=(時価/転換価格)×100

 ここで理論価格というのは理論的には理論的にはその値になることが合理的だという意味であって実際の市場価格は上方あるいは下方にかい離する。そのかい離の程度はかい離率と呼ばれる。

 株価の理論価値の推定方法については以下に(すでに)私自身の解説があり、NET上の標準的解説として広く読まれています。
しかしそこでの解説は、財務管理の講義の流れで、企業やプロジェクトの評価を主として念頭に置いたものです(たとえば企業買収の場合は、買収による企業価値の変化を考慮する必要があり、純投資を考えるここでの評価とは異なった扱いが必要です。企業買収のような投資は戦略的投資といいます)。全く同じ解説ではありますが、証券市場の立場から議論すると同じ解説が少し違って見えてくるはずです。

2)-1 株価の理論価格 倍率法
 現在すでに存在する他社の市場価格・市場価値から、理論的な市場価値・市場価格を推定することは株価でも行われる。
 類似業種比準方式
 また現在の市場価格・市場価値から導かれる数値(倍率)を参照して、理論的な市場価値・市場価格を推定することはしばしば見られます。
 株価倍率法(マルチプル法) たとえば当該産業の平均株価収益率を使います。
 しかし類似業種が市場に存在しない企業については、このような方法は適用できません。

2)-2 株価の理論価格 純資産方式 
 株式を企業が保有する資産の購入をベースに算定することが考えられる。純資産というのは総負債から負債を控除したものであるので、解散価値を求めているともいえます。株価を考えるときに、解散価値を計算することにどのような意味があるかという疑問があります。事業の継続を考えますと、企業には帳簿に現れない無形資産がたくさんあるともいえます。
 純資産方式 純資産を発行株数で割って求めます
 純資産の計算方法が問題です。資産・負債を時価できちんと再評価すると、簿価レベルと議論が違ってくることが多いはずです。

2)-3 株価の理論価格 配当割引モデルDDM
 株式の価値を「科学的に」とらえようとする試みとして、配当割引モデルdividend discount modelがあります。このモデルは株価を学問的にとらえようとする努力の中で編み出されたもので、株式投資は投資により得られる将来収益を期待して行うとまず考えます。その将来のキャッシュフローの現在価値の総和が、株価の理論価値になります。
 そして株式保有から得られる将来収益を配当dividendだとしますとこれを配当割引モデルと呼ぶことも理解できます。この現在価値の大きさはその将来価値を現在価値に換算するときに使っている割引率i(あるいはr)の大きさに左右されます。また将来価値の推計が正確にできるかについても議論の余地が多いと思います。
 しかしこの方法は、市場に類似企業が存在しないような新規事業・新規商品の価値評価には適切で、また継続事業価値を算定する方法としても適切です。反面、将来のキャッシュフロー(配当)や、割引率にどの数値を使うかは、多くの仮定に依存しています。方法は正しいのですが、根拠とすべき数値の信頼性は高くありません。
 この配当割引モデルは債券等を含む証券価格だけでなく資産価格の算定に広く持ちいられ
ています(DCF or DCFM;discounted cash flow or discounted cash flow model)。

 割引率・配当を固定して、永遠に続くとすると以下のように計算されますが、これは資本還元式とも呼ばれるものと一致しています。
 P=D/i

 最後に配当率が一定割合で成長するとすると、つぎのように式は変化する。これは定率成長モデルconstant growth modelと呼ばれます。
P=D/(i-g)

2)-4 利回りの均衡水準の求め方capm
このように株価を求めるのではなく、投資家が求めるリターンの大きさと、個別の株式のリスクとの間に一定の関係があることを、数式で示しているのはCAPM capital asset pricing modelである。
この式を理解するためには、投資家がリスクとリターンとの間に一定の均衡を求め、市場ではリスクとリターンの均衡が実現しているという仮定が必要である。
wacc算出では自己資本コストrを導くCAPM capital asset pricing modelに多くの問題があります。capmはつぎのような算式で示されます。
 Ri = Rf + βi×Rm
なおここでRiは個別証券の収益率。Rfはリスクフリーレート。Rmは市場平均収益率。βiは個別証券収益率の市場平均収益率からの乖離の程度。
 ただcapmには多くの疑問がでています。これはベースとなるデータの信頼性に専門家の間にすら異論があるからです。沢山の関連文献がありますがたとえば次の資料をみてください。 cf.Rober F.Brunner and others, Case Studies in Finance, 6th.ed., McGrawHill, 2009, 185-195.前提:投資家全員が最適の投資行動をとっていると仮定。証券の価格は、単純な線形関係に調整されてゆく。シングルインデックスモデル。ベータ以外は共通要因(こちらは分散により小さくできる)。
 証券会社のアナリストが自覚するべきなのは、いずれも参照値であることと、それぞれの数値の特性です。そして分析する内容に応じて、使い分ける必要があるということです。



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