Entrance for Studies in Finance

クライスラーとGMの合併協議(2008年11月)

 苦境にあるGMがクライスラーに対して合併を申し込み話題になっている。このことは08年夏頃から噂となっていたが秋になると自動車業界への公的低利融資問題も絡んで、頻繁に報道されるようになった。そして合併にはなんらかの公的支援が必要という議論が重なり大統領選挙の中でも話題になった。
 ガソリン高と金融危機によって、大型車中心の米国自動車産業が窮地にたたされている。住宅を担保にしたローンがこの間の住宅価格の値下げや金融機関の貸し渋り落ち込んでいることが背景。販売不振が深刻。生産能力の過剰化は顕著なっている。
 GMは6月末の手元資金が210億ドルだが、毎月10憶ドル規模の流出。それを示すかのように2008年9月にはいすゞに対して、GMの商用トラック事業の売却を打診してきた。トラック事業売却は8月に米ナビスターインターナショナルへの売却が売却条件で頓挫したばかり。
 もともとGMはいすずに49%まで出資していたが、2006年4月に保有株を売却。35年に及ぶ資本関係を解消していた(国内商用車は市場の縮小が続いているほか環境規制への対応で開発費が増えるなど経営環境が厳しい。首位が日野。2位がいすず。2001年にトヨタの子会社になった日野はいすずに経営統合を打診。06年にいすずへの資本関係をGMが解消してトヨタの出資をいすずが受け入れている。いすずと日野はエンジンで提携する-07年-など関係を深めているが、ともにトヨタ系での統合には独占禁止法上の制約も議論されている。このほか三菱ふそうがダイムラーの傘下にはいったり-05年‐、日産ディーゼルがボルボの子会社になるなど-07年-、再編統合が繰り返されている)。(その前に2005年10月にGMは富士重工業株を売却して同社との資本関係を解消している。そこで富士重工業―中型車に傾斜―はトヨタと資本提携。トヨタ子会社のダイハツー軽小型車に傾斜―とも相互供給で関係を深めている。)
 クライスラーを買収したサーベラスにとって(80.1% なお残りはダイムラーがなお保有)、クライスラーの販売落ち込みは想定を超えるものだった。もともとクライスラーの金融部門にだけ関心があったともされる。そこでGMと共同出資するGMACにクイスラーは金融事業を集中する方針だった。そこにGMが合併を申し込んできたとされる(8月あるいは9月)。しかしその前の7月にはフォードに対しても合併交渉をしていたとされる(9月に交渉終了)。このようにクライスラーの売却はサーベラスにとっては懸案。
 クライスラーは6月末で117億ドルの手元資金を有する。これを570億ドルの債務超過状態にあるGMはねらっているとされる。サーべラスと共同運営のGMAC(住宅ローン事業の損失が拡大しているほか自動車向けローンも不振・不良化進む 政府に不良債権買い取り要求 08年9月に住宅ローン事業の縮小を打ち出す)の扱いについては、どちらがこれを取るか報道が錯綜している。2008年10月10日のGMの株価は一時わずかに4ドル。マツダ売却を検討するフォードに至っては2ドルを割った。
 2008年9月末に総額250億ドルの自動車産業向け低利融資の扱いも関心がもたれている。これは自動車各社の融資に政府が保証を与えるというもの。20年以上前から操業している工場が優先。低燃費車シフトが名目。なおこの米議会決定を受けて欧州の自動車業界は欧州連合欧州委員会に対して総額400億ユーロ規模の低利融資を求めることになった。これはけだし当然だろう。
 この環境車向け低利融資の前倒し、GMACの不良資産買い取り、合併会社への資本注入などの公的支援が大統領選挙後に浮上しそうだとされる。
 他方、クライスラーは10月24日にホワイトカラーの4分の1を削減(4000人を削減)、組織改編やリストラを進めるとした。23日にもデラウエア州のSUV完成車工場の閉鎖で1800人の従業員削減を発表した。またオハイオ州トレドびある完成車工場では操業シフトの半減により825人削減する方針。このようなリストラを見ているとGMとの合併が、労働者のためとはどうも言えない。
 クライスラーをめぐっては日産も提携の申し込みをして、クライスラーの株を約20%取得する提案を行っている。


自動車業界
自動車の将来 タタ自動車の低価格自動車戦略と農民の反乱 ミニノートの低価格化 トヨタの北米戦略 Segway PTとTelsa Roadstar クライスラーの経営再建

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