Entrance for Studies in Finance

ギリシャ 秩序なきデフォルトを回避(2012年3月20日)

2011年12月 イタリア財政再建策決定で危機をしのぐ
12月4日 イタリア モンティ内閣 財政再建策を閣議決定
12月5日 S&P ユーロ圏15ケ国について格下げ方向で見直すと表明 ユーロ圏のGDPは13兆ドルで世界全体の2割
        独仏首脳会議 財政規律強化など共同提案の骨子を発表
12月8日 ECB理事会 0.25%追加利下げ政策金利はリーマンショック後と並ぶ過去最低の年1%に。3年物オペ(従来は13ケ月が最長 供給規模も無制限 金利1%で域内銀行に貸し出す特別措置 銀行間の短期の貸し借りを中央銀行が支える形)導入(欧州金融のECB管理下入りを示す)。適格担保の拡大。    2011年8月から域内国の国債買い入れを再開(2010年5月)
12月9日 EU首脳会議 財政規律で新条約作ることで合意 ユーロ圏17ケ国を軸つぃた財政規律強化策などで基本合意  
12月16日 EU 新条約原案を加盟27ケ国に送付 キャメロン英首相が反対 英国を除く26ケ国で政府間条約作りへ
12月16日 イタリア モンティ内閣 財政再建策 下院が承認
12月21日 ECB 4892億ユーロ(ユーロのGDPの5%超にあたる)を貸し出す 523金融機関に対し ビッグバーサ(第1次大戦でドイツ軍が使った大砲になぞらえる) ⇒ 民間銀行の資金繰り改善へ(銀行間金利低下)+南欧国債利回りの安定化(南欧国債消化のローカル化進む) このほか中央銀行 ドル資金供給スワップを強化済み
12月22日 イタリア モンティ内閣 財政再建策 上院が承認
2011年12月29日 ロンドンでユーロ 100円割れ寸前 一時100円06銭
2011年12月30日 ロンドンでユーロ 一時100円割れ(10年半ぶり)
2011年12月 ギリシャの失業率 過去最高の21% 15-24歳では51%

2012年1月 S&Pによるユーロ圏9ケ国とEFSFの格下げ
1月5日 東京で再び1ユーロ98円台(98円46銭 11年ぶりの安値)
    ハンガリー国債10年物 市場金利年11%上回る
1月6日 パリで仏伊首脳会談
1月6日 ロンドンで1ユーロが一時98円を割り込む(約11年ぶりのユーロ安水準)
     NYで一時97円92銭 対ドルでは1ユーロ1.27ドルを割り込み1.26ドル台。
     ロンドン ドルの銀行間金利 低下に転ずる
     イタリアの10年物国債が危険水域の7%を超えて上昇した
    フィッチがハンガリー国債の格付けを1段階下げて投機的水準にした
1月9日 ベルリンで独仏首脳会談 EU新条約3月1日のEU首脳会議までに署名目指す

1月11日 ギリシャ政府(2001年にユーロに加盟 3月20日の145億ユーロの巨額の国債償還を乗り切れるか 4月の総選挙を控え議会は追加的縮減措置に消極的) 2011年の財政赤字がGDP比率で9.6%に達したと発表
1月11日 EU欧州委員会 ハンガリーの財政再建を不十分とする結論まとめる 昨年末 規律強化改定(多数が反対しないかぎり勧告が承認される逆多数決制導入)⇒制裁発動の可能性高まる(EU基金の支給凍結などが想定されている)

1月12日 ECB 政策金利の年1%据え置きを発表
      イタリア 国債入札 期間4け月と1年の短期債
      スペイン 国債入札 期間3-4年の中期債 いずれも順調
1月12日 イングランド銀行 政策金利を過去最低の0.5%に据え置き
1月13日 S&Pによるユーロ圏9ケ国の格下げ
  S&Pがユーロ圏16ケ国のうち9ケ国を格下げ 14ケ国をネガテブ(2年間で3分の1以上の確率で格下げの可能性がある)とした⇒ EFSF格下げ懸念 ドイツなどの最上位格付けは維持できるか などに発展
  フランス(2010年の財政赤字GDP比は7%と南欧並み 2011年見通しも5.5%前後 5月に大統領選挙を控える)とオーストリアがAAAからAA+ 1段階引き下げ
  ユーロ圏のトリプルAは4ケ国に減少。かつ残したオランダ、フィンランド、ルクセンブルグの見通しはネガテブに 
  イタリア(A ⇒ BBB+) スペイン(AA- ⇒ A) 2段階引き下げ アイルランド並みに
  ポルトガルは2段階下げてダブルB(投機的水準)
  (ムーデイズも3月までに欧州各国の格付け引き下げる見込み すでにフランス オーストリアの10年物国債利回りは3%台)
EFSF(欧州金融安定基金)の問題
  2010年6月 EUが設立 EFSF債を発行 アイルランドとポルトガルはEFSFとIMFから資金支援受けている
  トリプルAの6ケ国の保証額を融資限度額としている
  EFSFの危機対応融資額が6ケ国の保証額4400億ユーロから1800億ユーロ減り2600億ユーロに低下したとも
しかもそのうち1900億ユーロはすでにアイルランドやヤポルトガルに活用。余裕は700億ユーロしかない。
ESM EU諸国は常設のESMの設立を2012年に前倒し(当初は2013年6月設立予定を2012年7月に前倒し)。危機対応力5000億ユーロ。払い込み資本金をもつためユーロ圏各国の格付けから独立。各国で条約を批准する必要。資本金は払い込まれるか。5000億の融資能力と最上位格付けは可能か。
欧州銀行 EBAは2012年6月末までに中核的自己資本で9%達成を求めている(2011年10月の基準 それまでは5%)
  国債を大量の抱える銀行は格下 追加的国債評価損計上へ 資本増強のハードルは高くなる 銀行間の疑心暗鬼から銀行間貸し借り収縮へ
  債務リストラ(不良債権償却)が始まる?
  高レバレッジ経営の見直し 新興国からの資金引き上げ 
日本へ波及する可能性 GDP比で200%を超える日本にも波及か
  国債の95%を国内で消化(高齢化により10年すれば個人金融資産<政府債務残高)
  経常収支の黒字は安泰といえるか(所得収支の黒字がなお続く ⇒ 企業は対外投資を拡大)
  3兆ドルにおよぶ対外純資産を保有
  租税負担率が低く消費税似引き上げ余地(欧州は20%前後 日本は5% だから上げるという議論も)

1月13日 債務減免めぐるギリシャ政府と民間債権者の交渉物別れから中断へ(1月18日に再開か)
  欧州連合側の民間債務負担引き上げ(2割から5割)計画(2011年10月銀行側代表とは基本合意)はまとまっていない。
  ギリシャ政府はあたらな国債の金利を4%以下(4.5%程度とも)とすることを要求(債権者の主張は8%前後)
  無秩序な債務不履行がいいのか。
  ポルトガル 10年物国債利回りは14%台後半に上昇
1月13日 1ユーロ 一時97円20銭(安全資産とされるドル、円に資金流入)
  EFSFの機能低下 EFSF自体の格下げに警戒感
1月16日 東京市場でユーロ急落 一時97円04銭
1月16日 S&P 欧州金融安定基金の格付けを引き下げ AAA からAA+ へ
      1月17日発行の期間ケ月物債券15億ユーロがどうなるか
      AA+ なら資金枠4400億ユーロ維持可能 しかし資金調達コスト上昇か
      AAAの4ケ国が4400億まで保証額を増やす選択もある  
1月17日 EUとIMFが次期つなぎ融資でギリシャ政府(3月20日に144億ユーロの国債償還を予定)と協議開始。
      世界銀行は世界経済見通しでユーロ圏の2012年実質経済成長率をマイナスとした-0.3%
(日本は1.9% 米国2.2% 中国8.4% 世界2.5%)
ユーロ安を利用したユーロキャリー増加 ユーロで借りて オーストラリアドル ニュージーランドドルで運用 金利差と為替差益で利益
2005-2007年の円キャリーと同じ。キャリーに伴いユーロ売りも増える。
1月18日 IMFは新たに5000億ドル規模の資本基盤強化を検討 既存の能力(4000億ドル弱)と合わせ1兆ドル相当の予備わく確保する方針
1月20日 独仏伊首脳会談  
1月20日 欧州銀行の資本増強計画提出期限(主要行は6月末までに中核的自己資本比率を9%まで高める必要がある)
      市場に落ち着き戻る
      東京市場 1ユーロ100円33銭までユーロ買い戻し 日経平均2ケ月半ぶりの高値
1月22日 ベルリンでメルケル首相とIMFのラガルド専務理事が会談
1月23日ー24日 ユーロ圏EU財務相会議
    国際金融協会ダラーラ専務理事 実質65-70%程度の減額を民間債権者側の譲歩の限度とする 
    (民間債券者:新発債の表面金利を最低4%程度とする)
     財務相会議は表面利率を4%未満とするよう交渉継続促す
     表面利率3%台 債券の価値は70%程度低下
     ヘッジファンドの一部はデフォルト回避にかけて安いギリシャ国債購入 
1月27日 ポルトガル国債 15%台前半 イタリアが6%前後 スペインが5%前後
1月28日 財政協定の概要固まる 憲法あるいは基本法で財政赤字ゼロの均衡財政(構造的財政赤字の規模をGDP比0.5%内に 現在は3%以内)義務付ける 怠った加盟国にEU司法裁判所への提訴 同裁判所の判決により6毛月以内の憲法改正 なお従わない場合 裁判所が判決不履行を判断して制裁金支払い命令
1月29日夜 ベルギーで財政緊縮策に反対するゼネスト始まる
1月30日 EU首脳会議始まる 財政規律求める新条約(26け国基本合意⇒チェコも抜けて25け国で新条約制定へ 加盟国が憲法や基本法を改正し、財政赤字を原則ゼロにする均衡財政を義務つける 対応が不十分な場合はEU司法裁判所が制裁金の支払いを命じる) 安全網の欧州安定メカニズムESMの前倒し(今年7月 5000億ユーロ規模)設立を確認
     ポルトガル国債10年物の利回りが17%突破(ポルトガルが第二のギリシャか)

2012年2月 繰り返し延期されるギリシャへの追加支援
2月2日 ユーロ圏17ケ国がESMを設立するための新条約に署名 支援受けられる国は新条約(財政赤字ゼロの均衡財政を義務付ける新財政協定条約 段階的に出資額増やし最大で5000億ユーロ規模の資金力に EFSFは2013年半ばまで存続)を批准した国だけ
2月6日 EU統計局 2011年9月末時点 ギリシャの債務のGDP比率159.1% 1年前の138.8%から20.3point悪化 6月比4.4point上昇
ポルトガル110.1% イタリア119.6% ハンガリー82.6% 四半期別債務データ公表は初めて
2月9日 欧州中央銀行理事会 政策金利年1.0%で据え置き決定(2ケ月連続 11月 12月と0.25%ずつ下げた据え置き2回)
    ユーロ圏財務相会議 1300億ユーロのギリシャ追加支援(次期支援)の結論持ち越し 支援実施に向けた3条件(緊縮策関連法案の成立 2012年中の3億2500万ユーロ規模の歳出削減策の明示 与党3党の書面による力強い約束)示す(背景にはギリシャの財政再建の遅れ 2011年末で財政赤字はGDP比)9%超 債務のGDP比率は160%超)
    ギリシャ政府 3党首 賃下げ 公務員の削減など緊縮策実行(①公共投資や国防費の削減などで今年の歳出をGDP比で1.5%削減する ②新たな就業者について最低賃金を現状の月額750ユーロから22%引き下げる ③公務員を1万5000人削減する)で合意で声明
2月10日 ギリシャ(4月に総選挙) 主要労働組合が48時間のゼネスト入り
    S&Pが34のイタリアの金融機関を一斉に格下げ
2月13日 新安定成長協定(財政協定)施行 逆多数決(反対意見が多数決にならなければ原案どおり意思決定される仕組み)
2月13日未明 ギリシャ議会が財政緊縮策含んだ法案を可決
2月12日 ギリシャ全土で抗議行動 アテネ中心部で放火 混乱全土に広がる
2月13日 ムーディズ イタリア ポルトガル スロバキア マルタを1段階 スペインを2段階下げる
2月14日 ギリシャ政府 2011年10-12月期GDP 前年同期比7%減と発表
2月15日 ユーロ圏財務相会議(電話会議 ギリシャ向け追加支援決定を再び延期 20日の会議で決定の可能性残る)
2月15日 EU統計局 2011年10-12月期 ユーロ圏の域内総生産 実質ベースで前期比0.3%減 マイナス成長は2009年4-6月期以来10四半期ぶり
2月21日 EUユーロ圏財務相会議 1300億ユーロの追加支援(第二次金融支援あるいは追加支援)の枠組みを合意 対民間投資家保有国債の元本削減率50%から53.5%へ。EUとIMFで1300億ユーロ支援 ギリシャの対GDP債務比率を現状の160%から2020年に120.5%に引き下げ
2月22日 フイッチ ギリシャの格付けをシングルCに引き下げ
2月24日 ギリシャ政府 民間投資家に提案 削減率を50%から53.5%に。そのうえで利率の低い新たな国債と交換(実質的損失負担は7割超える)。
2月25日ー26日 G20財務相会議(メキシコシティ) IMFの融資枠増強5000億ドルめざす EU全体で総額2000億ユーロを拠出 残りは日米中国に期待 シャドーバンキング規制 格付け会社の規制・監督強化
2月27日 ドイツの連邦議会が総額1300億ユーロの追加支援の枠組み承認  民間銀行野債務削減率 120.5%
2月27日 S&P ギリシャの長期債務格付けを選択的デフォルトSDに引き下げた(全債権者の同意なくても債務削減できる条項をあつこは導入の移意向)
2月29日 ECB 2回目の期間3年の資金供給入札 合計800の金融機関から年1%の低金利で5295億ユーロ(57兆2000億円)の供給要請 全額供給 3月1日から2015年2月26日まで年1.0%の固定金利(昨年12月と合わせて1兆ユーロ供給) ⇒ 2014年までの借り換え資金をECBが供給 しかし低金利は銀行の収益性低下につながる 国債保有が継続され緊縮意欲が低下する懸念 バブルを引き起こす懸念

2012年3月20日 ギリシャ 秩序なきデフォルトを回避
3月1日ー2日 EU首脳会議 EFSFを引き継ぐESMについて融資能力最大5000億ユーロの上限規制見直しについて協議
3月2日 首脳会議で英国とチェコを除く加盟25ケ国 原則として単年度の均衡予算義務付ける条約に署名 2013年発効目指す 批准が7月常設のESMから支援を受ける条件
3月8日 ECB 政策金利を年1.0%で据え置く決定(3ケ月連続で据え置いた 1-3月)債券買入で資産の質への懸念が出ている ECBの試案残高は3兆ユーロを超える。
3月9日 民間投資家(応じるものが83.5% 1520億ユーロ分)に対する強制的な債務削減の枠組み決まる(ギリシャ政府の目標参加率は90%以上 参加率が75%以上90%未満の場合 拒否した投資家には集団行動条項CAC適用 250億ユーロ程度 最終的参加率は95.7% 強制の場合,CDSによる補償を投資家は受けられる CDSの売り手には補償義務 保険金支払額は最大で32億ドル 試算では24億ドル) 2060億ユーロの国債 額面の53.5%を棒引き 残る46.5%を新たに発行する国債などと交換 3500億ユーロ(約37兆円)の債務 約1050億ユーロに削減 反面 賃下げや歳出削減で国内景気冷え込む
3月12日 ユーロ圏財務相会議 スペインに対して追加的財政赤字改善策求めることで合意 2012年にGDP比で0.5%分の追加努力求めるGDP比で5.8%から5.3%へ(当初目標4.4%が景気悪化で高止まり 2011年は6%目標のところが8%台)
3月13日 スペイン(2011年の財政赤字の規模 ギリシャ)の国債利回り5%強が7ケ月ぶりにイタリアのそれ5%弱を上回る
     2011年  財政赤字規模  スペイン8.5% ギリシャ3.9% ポルトガルにも警戒感あり
3月14日 ユーロ圏17ケ国 ギリシャ向け2次支援を正式承認 EUとIMFで総額約1300億ユーロ 第一弾はEFSF通じて394億ユーロをギリシャ政府に融資
3月19日 ユーロ危機一服 東京市場で4ケ月半ぶりに1ユーロ110円台
3月20日 ギリシャ 145億ユーロ(1兆6000億円)の国債償還予定日 民間投資家の債務削減受け入れ債務交換に合意により無秩序なデフォルト回避 かつ1300億ユーロの第2次支援決定 で当面の資金繰り不安解消
3月21日 東京市場で一時1ユーロ111円台の高値 昨年2011年10月以来(1月には一時97円台)
3月22日 スペインの国債利回り 2ケ月半ぶりに5.5%突破
3月23日 イタリア 労働法改正案(業績悪化による解雇を認める 失業保険の給付期間・金額の統一など)を閣議決定
3月30日 ユーロ圏財務相会議 金融安全網を8000億ユーロに拡大する合意


田中理「フランスの最上位陥落が招くイタリア、スペインへの危機波及」『エコノミスト』2012年1月31日, pp.13-14.
増谷栄一「ギリシャ離脱でもユーロ崩壊せず」『エコノミスト』2012年3月20日, p.69
武田洋子「第二次支援で大量償還にめど」『エコノミスト』2012年3月27日, p.13.

originally appeared in Jan.23, 2012
corrected and reposted in Mar.20, 2012

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