野球小僧

渡辺勝中日ドラゴンズ

2019年03月10日 00時15分00秒

2018年のオフに育成契約から支配下契約を勝ち取り、さらには2019春季キャンプ一軍切符をつかみました。その切符を手放すわけにはいきません。

一本足打法といえば、世界のホームラン王で三冠王を獲得したことがある王貞治さん(現；福岡ソフトバンクホークス球団会長)を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、中日ドラゴンズにも1994年にホームランと打点の二冠王に輝いた、一本足打法の大豊泰昭さんがいました。その2人のホームラン王の一本足打法を受け継ぐ選手が、ドラゴンズの渡辺勝選手です。

バッティングを買われての支配下契約です。その「自信がある」というバッティングは王貞治さんばりの一本足打法です。2月17日の東京ヤクルトスワローズとの練習試合では、9回にライトポール際に待望の一発を放ちました。そして3月6日には横浜DeNAベイスターズとのオープン戦で七番指名打者で先発出場し、4回にライト前にヒットを放ち、7回には、今度はレフトへホームランを放ちました。「左投手だったんで、踏み込んでいこうと思っていた。打球が低かったんで、全力で走った。必死でした」と、長打力をアピールしました。

「一番下からのスタート。はい上がる気持ちでやっている。そういうメンタルには慣れている」

まだ、一軍での実績のないのに、王さんや大豊さんの一本足打法を受け継ぐなんて大げさと思われるかも知れませんが、ある意味、正統な系譜なのです。

実は渡辺選手は中学時代に王さんを育てた荒川博さんが主催する「荒川道場」で一本足打法を直接伝授されています。荒川さんが教えた最後のプロ野球選手と言われています。

「幼いころからの荒川道場の教えですからね。かつては、王貞治さんが日本刀で藁を切り裂いて鍛錬されたというお話。ボクは、荒川博さんから直接学んだ最後の弟子のひとりですから。木刀をバットに見立て、高校入学直前まで教わりました。スパッと一点で斬るというよりも、押し出すような感覚なんですよね。なのに、理想のタイミングとスイングができるとキレ味の良い実感が残る。荒川道場には、晩年、ゴルファーの片山晋吾プロや上田桃子プロも学びに訪れてました。ボク、片山プロと一緒にできるようになった秘技がありましてね」

それは、名刺で割りばしを折るという技です。空手家の瓦割りのように、薄い紙の名刺を鋭く振り下ろし、一瞬で、木の割りばしを真っ二つにしていまうというものです。刀のミニチュア版ともいえるこの技には、集中力とターゲットを斬るというよりも押し出すような独特の感覚がないとできないそうです。

東海大相模高校に進学後は、一年秋から一番で活躍。1学年先輩のエースには、一二三慎太さん(元；阪神タイガース)、大城卓三(読売ジャイアンツ)らを擁して、第82回選抜高等学校野球大会、第92回全国高等学校野球選手権大会に出場しています。第92回全国高等学校野球選手権大会では打率.429をマークし、準優勝に貢献し、決勝戦の沖縄･興南高校戦では島袋洋奨選手(福岡ソフトバンクホークス)からも2安打を放っています。

翌年の第83回選抜高等学校野球大会にも出場し、一番打者として打率.417と活躍。決勝では三好匠選手(東北楽天ゴールデンイーグルス)、高城俊人選手(オリックスバファローズ)擁する福岡･九州国際大付属高校と対戦し、3安打を放ち優勝に貢献しました。三年の夏は神奈川県大会5回戦で乙坂智選手(横浜DeNAベイスターズ)、近藤健介選手(北海道日本ハムファイターズ)擁する横浜高校に敗れています。

東海大学に進学後は、一年秋から試合に出場し、2014年秋と2015年春はベストナインを獲得。特に2015年秋は打率.391を記録し、首都大学リーグMVPにも輝いています。三年時の全日本大学野球選手権大会では優勝。野球部には同期に中川皓太選手(読売ジャイアンツ)、吉田侑樹選手(北海道日本ハムファイターズ)、田中俊太(読売ジャイアンツ)がいます。

2015年10月22日に行われたドラフト会議で中日ドラゴンズに育成6巡目で指名され、支度金200万円、年俸300万円で入団しています。