米国では日本を含む37ヵ国のパスポートを持っている人に対して、90日以内のビジネスや観光を目的とした渡航のためのビザを免除する「電子渡航認証システム(Electronic System for Travel Authorization、略称; ESTA)」というプログラムがあります。例えばハワイへ遊びに行こうかなというときに、わざわざビザを取得するのではなく、ウェブサイトで14米ドルでESTAを申請するだけの仕組みです。そうすれば、入国前に税関書類を書くだけで済みます。
ちなみに、ESTAは米国国土安全保障省(United States Department of Homeland Security、略称; DHS)により2009年1月12日から義務化されています。このオンラインシステムは、ビザ免除プログラム(VWP)の一部で、90日以下の目的で旅行するすべてのビザ免除プログラム渡航者は、米国行きの航空機や船に搭乗する前にオンラインでESTA渡航認証を受けなければならないとうものです。ビザ免除と言いますが、はっきり言ってビザです。
なお、DHSとはテロリストの攻撃や自然災害などあらゆる脅威から国土の安全を守る(オールハザードアプローチ)ために、2002年11月に設立された政府の組織の1つです。以前、ジャック・バウアーが所属していたテロ対策ユニット(Counter Terrorist Unit、略称; CTU)はシーズン5で一時的にDHSに所属していました。
今回、そのESTA申請のフォームにソーシャル・ネットワーキング・サービス(social networking service、略称; SNS)アカウント記入する欄が設定されました。現在のところ、ESTA申請におけるSNSアカウントの記入は「オプション」扱いで、必ずしもSNSアカウントを申請する必要はありません。しかし入国に際してSNS情報を紐付けるということは、米国当局が安全保障上の情報として、少なからず関心があり、場合によってはSNSを参照することを意味しています。これに対して、米国の一部ではプライバシーや人権侵害に対する懸念が広がっています。
例えば、Facebookアカウントを記入したとします。そこに含まれている一般的な情報として、普段どこに住んでいるか(住所)、どんな仕事をしているか(職業)、配偶者や家族は誰か(家族構成)などの情報が手に入ります。それに、内容を参照すれば、普段何をしているか、どんな関心を持っているか、どんな写真やビデオ、あるいは動画を共有しているか、ということも分かります。さらに、どんな人との繋がりがあり、誰と頻繁にコミュニケーションを取っているのかも出てきます。
つまり、eco坊主さんの場合、消滅可能都市に住んでいて、怪しい仕事をしながら、良く出来た奥さんと暮らし、花と畑を愛し、たまにグラウンドゴルフをして、本当は中日ドラゴンズファンだということが分析できてしまうのです。
近年の国際的な事件とSNSの関係性から考えて、米国当局が興味を持つような、思想が現れるような書き込みや、米国以外の渡航先(特に中東諸国など)やその写真、繋がっている人、などになります。また、米国に渡航したその人がどこを目指しているのかという情報、位置情報を共有していれば、実際にどこにいるのか、というリアルタイムの情報を手に入れることも出来ます。
ですが、国際的事件を企むような輩がわざわざSNS情報を真面目に記入することはないと思います。しかし、そうなると、逆に記入しないで入国しようとする人の方が怪しいとなり、こっちをマークした方が手っ取り早いのではないでしょうか。記入されたSNSアカウントを人が確認していくことも、考えにくいです。実際は学習機能が備わった巡回プログラムが、写真や投稿、人のつながりを自動的にチェックして、気になる情報をマーキングしていくと思います。
SNSアカウントの申請画面では、Facebook、Twitter、LinkedInに加えて、Instagram、Flickr、YouTube、Vineといった写真や動画系のSNSも含まれています。また、ブログサービスのTumblrや、エンジニア御用達のバージョン管理を主体としたコミュニティーのGitHub、そして位置づけや役割が不明瞭になりつつあるGoogle+も入っています。1つのアカウントを確保しておけば、そこから他のSNSを見つけ出すことは容易ですから、すべてを見つけられるのは時間の問題になります。
ESTAでのこの入力によって、その人がどんなオープンソースプロジェクトに関わっているかという情報を得たいという訳ではないと思いますし、その人の写真の腕前を見たいという訳でもないと思います。
ただ、一つ言えることは疑われるようなこと、米国を刺激するようなことは程度にもよるでしょうけど、書かないことでしょうね。そもそも、他人を不愉快にするようなことは慎まないといけませんから。
ただ、もう一つ言えることは、YouTubeでもVineで面白動画をアップロードしておくか、Instagramで面白画像をアップロードし、お堅いDHSの担当者に笑いという奇襲をかけてみるのは面白いんじゃないかなと。
このようなシステムを中国で導入されたら大変です。今まで中国の悪口は書いていないと思うのですが・・・という訳で、お正月明けから中国です。
ちなみに、前回中国から香港へ入国する際の審査で、人生初めて止められました。別に怪しくないのに・・・