江戸時代に甲州街道の宿場町として栄えた、北杜市白州町にあるのが台ケ原宿です。
国道20号線から旧道に入りますと、その通りは、今でも昔の宿場町の面影を感じられる建物が残っていて、「日本の道百選」にも選ばれています。
ここにはあの「信玄餅」の元祖として知られている、「台ケ原金精軒」があります。
そして、そこには夏の風物詩として人気のある「水信玄餅」があります。2019年も夏期限定で、6月1日から6月~9月までの土曜日・日曜日限定販売されています。
甲斐駒ヶ岳を含む南アルプス山脈は、ユネスコエコパークにも認定された「世界に誇る水の山」で、北杜市白州町はその麓にあり、甲斐駒ヶ岳から湧き出る伏流水は、長い年月をかけて何層もの花崗岩によって磨かれた名水でもあり、「日本名水100選」にも選ばれています。この名水は、生産量日本一の国産ミネラルウォーターの生産として、またサントリー白州蒸溜所(あの「南アルプスの天然水」を生産しています)や山梨を代表する創業300年の蔵元の七賢などの産地としても有名です。
その美味しいお水をどうしたら美味しく「食べられるか?」という想いから作られたのが、水信玄餅です。
ぎりぎり水が固まるくらい、形を留めるくらいの微量の寒天のみを使用して作られているため、賞味期限はなんと30分なのです。時間が経つと水が溶けだし、食べることが出来なくなってしまいます。そのため持ち運ぶことは出来ず、その場でしか食べることが出来ません。
発売当初は、知名度はなかったようですが、SNSで「水信玄餅」が話題となり、爆発的に全国に広がっていったそうです(昨夜もTVで放送されていました)。そのため、販売される週末は、遠路はるばる多くの人が訪れ、朝早くから開店前から店の前には行列が出来、当日の7時ころから整理券が配布され午前中に完売することもあるようです。
私が訪問したのは7月下旬の日曜日。水信玄餅のことは知っていましたが、それほどの人気だとは思っておらず、「ハイジの村のひまわり畑」を散々見て回った後(いつかまた書きます)に着いたのがお昼前という、のんびり状態でお店に着いたのですが、何とラッキー状態で、行列はなく、整理券もなく、「今なら、すぐに召し上がれます」とお店の方が案内してくれました。
そして・・・この水信玄餅。「水を食べる」という、不思議な感覚は初体験。口に入れた瞬間、スーっと溶けてなくなっていきます。そこには、嫌な人工的な甘さはなく、まさに、乾いた身体に染み入るような、水そのものでした。
ちなみに、「信玄餅」には「黒蜜」と「きな粉」が添えられていますが、この水信玄餅にも黒蜜ときな粉が添えられています。黒蜜は、代々、信玄餅用に使われているものと同じものを使用しており、きな粉は自社農園で無農薬栽培された「青大豆」を挽いて作られているそうです。この青大豆は北杜市原種のもので、従業員総出で種まきから収穫まで行っているそうです。また、収穫量がとても少ないため水信玄餅だけに使用されているそうです。
なお、水信玄餅の販売は金精軒台ヶ原本店と金精軒韮崎店の二店舗で行っています。
歴史ある宿場町で、蝉の声を聞きながら、食べた水信玄餅。
私的には忙しなく過ごしている時間の流れに逆らって、立ち止まっているような感覚の時間だったと思えました。