秋の時候を表すことわざ、「天高く馬肥ゆる秋」。この言葉を聞くころになりますと、青く澄み切った爽やかで気持ちのよい秋空、馬が草原をゆっくり歩くような、のどかな風景をイメージすることがあると思います。
もしくは、夏バテなんかお構いなしに、まるまると太った馬が草原に寝転がっている風景をイメージするかもしれません(決して、家で寝転んでいるお父さん方でのことではありません)。
どちらにしても、あいさつに使ったり、秋の季語として「馬肥ゆ」「天高し」「秋高し」が使われたりします。また、「秋高馬肥(しゅうこうばひ)」「天高馬肥(てんこうばひ)」という四字熟語もあります。「天高く馬肥ゆる秋」はそのまま、「空は澄み渡って晴れ、馬が食欲を増し、肥えてたくましくなるほど過ごしやすい秋」を表現しており、「心身ともに快適に暮らせる秋の気候」を意味します。
由来は中国の故事にあり、唐(618年~907年)の詩人・杜審言(としんげん)さんが前漢(紀元前206年~8年)時代のことを書いた「蘇味道に贈る」という詩の一節「雲浄くして妖星落ち 秋高くして塞馬肥ゆ」に基づいており、前漢の将軍・趙充国(ちょうじゅうこく)さんがいったとされています。
前漢の北側では、騎馬民族の「匈奴(きょうど)」が大きな勢力を持っていました。戦力となる馬は春から夏にかけて草を食べ、たくましく育ち、その馬に乗って匈奴は秋になると南へ収穫物を略奪しにやってきました。馬に乗って匈奴が侵入してくることから、趙将軍は、「秋になると匈奴の馬が強く育ち、その馬で攻めてくるから気をつけろ」と警戒の意味でいったとのことです。
詩の、「妖星」とは不吉な出来事の前兆を意味し、「塞馬」は北方の馬、つまり匈奴の馬のことを指しています。
しかし、匈奴が滅びた(91年ころ)のあとは、争いがなくなり、「秋高くして塞馬肥ゆ」が「秋高く馬肥ゆ」となり、さらに「天高く馬肥ゆ」へと変化して、現在の意味で使われるようになりました。
なお、現在の中国では、「秋高气爽」という中国の四字成語で、「秋空が高く空気が爽やかで気持ちが良い(爽やかな秋晴れ)」ことを表す言葉があります。
日本にも、「秋高气爽」と同じ意味で、「秋高気爽(しゅうこうきそう)」「天高気清(てんこうきせい)」という四字熟語があります。
ちなみに、秋になると空が高く感じられるのは、夏と秋の雲の高さの違いが要因の一つです。夏の雲(主に積雲)は高度が低く、入道雲でも底が低いため空が近くに感じられます。それに対し秋になるとよく見られる巻雲や巻積雲などは、雲ができる高度が最も高い上層雲に属しています。また、秋になると空の透明度が高くなることから、秋の空は夏に比べ高く感じるのだそうです。
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