野球をやっている方はお判りだと思いますが、野球のストッキングって変だと思いませんか?
形も変ですが、アンダーソックスを履いて、その上にさらにストッキングを履くという二重構造。それに、グレート・カブキの毒霧攻撃並みの異臭攻撃は、洗濯をしてくれるお母さん方を悩ませること、この上ないと思います。しかし、野球を始めた頃、特に子どもの頃には「どうして、そんな面倒なことをするのか?」と不思議に思ったことだと思います。
なぜアンダーソックスの上にストッキングを履くのか?ですが、これは現在では野球関係者の間で常識化しているようで、「足を保護するため」なのです。これは、スライディングの際にすねを守るためです。相手がスライディングしたとき、相手のスパイクの歯が万が一自分の足に当たったとしても、ケガの度合いを軽くするためなのです。それでも、ケガすることはありますが、ソックスがなければ傷はもっと深くなっていることもありますから。そして、もう一つは、ふくらはぎの肉離れを防ぐサポーターとしての効果もストッキングにはあるそうです。
さて、ここで登場するのが野球の規定です。実は、ユニフォームやスパイクについての規定はあるのですが、ストッキングについての規定はないとのことです。たとえば高校野球連盟の規定は「ストッキングには校名、校章などの表記はできない。また、商標が表に出る意匠のものは、一切使用できない。アンダーソックス(白に限る)は、必ず着用すること」という規定だけで、アンダーソックスには規定があるが、ストッキングにはないのです。要するに「ストッキングを履きなさい」とはなっていないのです。
ただ、大会規定などで義務化されていますので、チームでそろえておきませんと試合には出られませんので、気を付けてください。
さて、そもそも、なぜ2枚履きなのでしょうか。サッカーのようにすね当てを着ければ、アンダーソックス1枚で済みますよね。その理由の一つは「吸汗性」という説があります。ストッキングのような伸縮性や足の防御を目的にした素材では、なかなか汗を吸ってくれないので、汗を吸うアンダーソックスと、足を保護するストッキングの2つが必要になった、という説です。現代では吸水性と防御機能を持つような化学繊維が登場していますが、野球が普及し始めた頃のには、そんな繊維素材はなかったのでしょう。ですから、汗を吸うためのコットン素材のアンダーソックス、そして防御のための厚手のウール素材のストッキングといことになったとのことです。それが今も続いているということです。
もうひとつはMLBのチーム名にも関係する説です。現在でもボストン・レッドソックス、シカゴ・ホワイトソックスと色付きソックスのチーム名があります。さらに昔は、シンシナティ・レッドストッキングス(現; シンシナティ・レッズ)、シカゴ・ホワイトストッキングス(現; シカゴ・ホワイトソックス)、セントルイス・ブラウンストッキングス(現; セントルイス・カージナルス)、ボストン・レッドストッキングス(現; ボストン・レッドソックス)など、ソックスの色でチームを区別して、それがそのままチーム名になっていました。これは当時、ユニフォームの色やデザインは費用の関係などで区別がつけられず、どのチームも同じような白いユニフォームであり、それでは選手も観客も審判も、区別がつかず非常にやりにくいということで、ソックスの色をそれぞれのチームで決め、それで区別をしていました。今でもこのチーム名の名残りがあります。
ところが、当時はアンダーソックスを染めるまでは良かったのですが、染料技術が低くく、汗などで染料が落ちてしまい、足に染料がついてしまって不衛生だということと、ソックスがすぐダメになってしまいました。よって、白いソックスを履いて、その上から色付きのストッキングを履くようにしたという説です。
そして最後の謎が、ストッキングはなぜあの形をしているのか? ということですが、早い話が、2枚履きだと足が大きくなり、いつも履いている靴のサイズからスパイクのサイズを大きくしなければならないということになるからです。そのために、つま先とかかとが開いているループ型になった、という話です。
ちなみに、五本指ソックスというものがあります。実は元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜さんもプロ入り3年目ぐらいから、五本指ソックスを愛用していたそうです。その効用は
「やっぱりムレないのが一番ですね。僕たちはスパイクを履くじゃないですか。あのスパイクっていうのが、色々と工夫はしてもらっても、どうしてもムレるんですよ。シェフ(ゲイリー・アントニアン・シェフィールドさん)の場合は、しかもストッキングを三枚重ねにして、その上からスパイクを履いていたらしいんです。だから余計にムレる。それで僕の五本指ソックスを試してみたら『ヒデキ、これは最高だよ!』って(笑)」
とのことです。その後、ジェイソン・ジアンビさんも履いてみたら「ヒデキ! グッド!!」と気に入ったようで、MLBでも五本指ソックスが流行りました。
なお、五本指ソックスにより松井さんには「水虫」疑惑があったそうですが、「水虫にはなったことはない」と強く否定しています。「ムレない」ためにも五本指ソックスは有利です。また、その他にも血行を良くする校歌があるそうです。五本指ソックス着用時は裸足と同じで、五本の指それぞれが自由に動くことが出来るためです。
これをお読みになっている野球親父のみなさん。五本指ソックスの季節です。