以前、京都銘菓の八ツ橋を巡っての八ツ橋業界の内紛(?)が勃発しました。
その後、あるTwitterユーザーが京都大学工学部の「私たちはお土産にどの八ッ橋を買えばよいのか」という論文を発見しました。2014年に発表されたこの論文。八ツ橋11銘柄を食べ比べ、9人の評価者が比較したとのことです。
「京都は寺社仏閣をはじめとする様々な観光名所を持ち,また四季折々の美しい風景(図 1)が楽しめることもあって,旅行先として非常に高い人気がある. そんな京都を代表するお土産と言えばまず頭に浮かぶのは生八ッ橋(以下八ッ橋と呼ぶ) であり,また八ッ橋をお土産として貰って嬉しいと思う人も多い ∗1.しかしながら,八ッ橋にはかなり多くのブランドがあるため,我々はどれを買えばよいのかという問題にいつも悩まされている.」
確かに、私も書いたとおり、14社から販売されている八ツ橋。どの八ツ橋を買えばいいのか、わかりません。悩んだ挙句に、何も買わないということにもなります。
「そこで本稿では,様々な八ッ橋のブランドのうち,いったいどれがお土産として最も相応しいのか,あるいはどれを買っても同じなのかという問いに答えるべく,数理モデルを用いた検証を行った。具体的には,先行研究 [e京都 10] に基づき,京都市内で販売されている八ッ橋のうち主要なもの 11 銘柄を,9 人の評価者が実際に試食,評価を行い,これを(1) 勝率(2) 主固有ベクトル [Keener 93](3) Bradley-Terry モデル [Bradley 52](4) Crowd-BT モデル [Chen 13]によって統合したランキングを行い,その結果を比較した.」
ここら辺からが、理系の論文でして、さまざまなベクトルや評価モデル、数式を駆使しており、何が何やらわからなくなってきます。
「本稿では,八ッ橋ランキング決定問題を定義し,実験方法の紹介をしたのち実際に実験を行った.結果としてy5 ないし y11 がお土産として好ましいという評価が得られたので,これらがどの銘柄なのかを発表する.y5 は,京栄堂 (東山仁王門)∗3 ∗4,y11 は,聖護院八ツ橋総本店(東山丸太町)∗5 である.聖護院八ッ橋総本店は八ッ橋の有名ブランドの一つであり,京都の主要な観光地ではほぼ間違いなく取り扱われている.対して京栄堂は京都市内に展開されるいくつかの店舗でしか取り扱われていない模様である.従って,時間はないが確固たるエビデンスに基づいて美味しい八ッ橋を求める方は聖護院八ッ橋を,誰もが知っている京都の代表的なお土産である八ッ橋の中でも一味違うところを見せつけていきたい方は京栄堂の八ッ橋を,それぞれお土産として買って帰られるとよいのではないかと考えられる.」
ということで、この論文の結論には「時間がないが確固たるエビデンスに基づいて八ツ橋を求める方」には聖護院八ツ橋総本店だとしています。
ただし、どうやらこの論文にはどんでん返しがあり、「お詫びと撤回のお知らせ(2015年4月1日)」が発表されています。また、解析と執筆に関わった筆頭著者1名に対する厳重注意と、プロジェクト責任者に対する謹慎処分を同時に発表されています。
しかし、このお詫びと撤回の内容の「硬いほうの八ッ橋も美味しかったことが発覚したため」という撤回理由と、厳重注意と謹慎処分内容には笑わせてもらえます。となると、すべてがどこまで本気なのか。いい意味ですべてが怪しくなってきます。
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お詫びと撤回のお知らせ(2015年4月1日)
京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻
知能情報ソフトウェア講座ソフトウェア基礎論分野
八ッ橋レポートにかかる調査報告とレポートの撤回について
2014年10月22日に公開された「私たちはお土産にどの八ッ橋を買えばよいのか」に対して、被験者の数として示されている数が研究室メンバーの数と不自然に一致すること、ツとッが混在することで看過できない表記ゆれが発生していることなど、その信頼性・再現性を著しく欠くという指摘をうけ、2015年4月1日に内部有識者による調査委員会を設置して調査を行ったところ、硬いほうの八ッ橋も美味しかったことが発覚したため、2015年4月1日付で当該レポートを撤回することといたしました。
このような事態を重く受け止め、2015年4月1日に内部有識者による懲戒委員会を設置し、主として解析と執筆に関わった筆頭著者1名に対する厳重注意(※1)ならびにプロジェクトの責任者である最終著者に対する謹慎処分(※2)を2015年4月1日付で執行いたしました。
関係者ならびに一般の皆様に多大なご迷惑をおかけしたことを心よりお詫びするとともに、一日も早い信頼の回復へむけ一層の努力を行っていく所存です。
※1: 調査を生八ッ橋にのみ限定したことについて
※2: 向こう12時間に渡り一切のアンコの摂取を禁止すること
以上