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さて、艦内で100人を越える乗組員が新型コロナウイルスに感染した米海軍空母「セオドア・ルーズベルト」。
セオドア・ルーズベルトは2020年3月にベトナムに5日間寄港し、ベトナム出港後、3人の乗組員が新型ウイルスに感染したことが判明、その後、感染者は増え続け、3月28日にグアムのアプラ米海軍基地に寄港しました。
3月30日にブレット・クロージャー艦長が艦内の危機的状況を訴えたメールを20~30の宛て先に送ると、3月31日に国防総省よりも先にその内容がメディアから報道され、これに怒った米国防総省は4月2日、クロージャー艦長を解任してしまいました。
この件について、米海軍のトーマス・モドリー長官代行は、クロージャー艦長に対して、「艦長が乗組員たちにとって最善だと考えたことを実行したという点は疑っていない」と理解を示したものの、「極めて不適切な判断だった」と非難しました。
クロージャー元艦長はメールの中で、「これは戦争ではない。兵士らが死ぬ必要はない」と訴えたとされ、未感染の船員らを船外に移して隔離するための「断固とした行動が必要だ」と反応が鈍い国防総省や海軍省を批判する内容にもなっていたとのことです。
それでも、結果的には米海軍は米領グアムに寄港中のセオドア・ルーズベルトから、艦の維持に必要な乗組員を除いて全員を上陸させ、形的にはクロージャー元艦長の訴えが届いたことになります。
セオドア・ルーズベルトは全長約333m、最大幅約77m、乗員約5,000名の世界最大級の大きさを誇る米海軍のニミッツ級航空母艦の4番艦であり、艦名は第26代米国大統領セオドア・ルーズベルトさんにちなんで命名されています。
さてさて、軍艦の行動は機密情報の上位に位置するものだと思います。また、米国防総省は中国の海軍力強化に対抗して、保有する空母11隻のうち、インド太平洋方面への配備を5隻から6隻に増やしています。
ただ、すべての艦艇が常時任務についているとは限らず、修理、訓練、任務という3つのローテーションを繰り返しすため、任務に就けるのは常に3分の1ということになります。そして、インド太平洋側に配備され、現在、任務艦として活動していたのは、このセオドア・ルーズベルト1隻のみという状態なのです。
ところが、セオドア・ルーズベルトが運用できないとなれば、米海軍が派遣できる空母がなくなり、中国海軍との間の戦力バランスが狂うことになるのです。事実、米空母の空白を確認するかのように4月3日にロシア海軍艦艇が対馬海峡を抜けて東シナ海に入っていったとのことです。それはともかく…。
今回の出来事は軍内部の問題を組織外に公表したクロージャー元艦長の行動は、軍という組織においては規律違反であり、大罪であることは事実でしょう。軍という組織はそのような行為を決して許さないものです。
軍という組織では、戦時において優先すべきは任務であり、兵士の犠牲はやむを得ない場合があるのかも知れません。でも、部下の生命を守ることはリーダーとしては当然、考えなければならないと考えます。しかし、現在のような平時において、しかも世界中が新型コロナウイルスという未知の敵と戦っている中で、どこまで任務を優先させるべきなのか、そして、部下の健康と安全を守るためのリーダーの行動だったと思います。
新型コロナウイルス集団感染に見舞われた米空母「セオドア・ルーズベルト」の艦長解任を巡る対応に批判が出たことが原因かは不明ですが、モドリー長官代行は4月7日に辞任となっています。
なお、米空母11隻のうち、これまでに「セオドア・ルーズベルト」「ロナルド・レーガン(米海軍横須賀基地を事実上の母港)」「カール・ビンソン」および「ニミッツ」の4隻で乗組員が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと報じられています。
ちなみに、解任され下船するクロージャー元艦長に対して、艦内の乗組員から手拍子とともに「キャプテン(大佐)クロージャー!」の連呼を浴び、多くの乗組員が感謝の意を表しました。
その後、クロージャー元艦長も新型コロナウイルスに感染していたことが判明しています。
無謀な行動と勇気ある行動は異なります。
二度と来ない今日のために、大切に過ごしましょう。そして、また、明日、ここで、お会いしましょう。