時は2019年。
メディア良化法が施行され、超法規的な良化委員会とその先兵たる良化特務機関により、言論弾圧および言論統制が日常化した世界。
その状況下で、唯一の対抗勢力となったのが図書館である。図書館は武装化され、メディア良化隊との熾烈な戦いが始まった...
現在、岡田准一さん、榮倉奈々さん主演の「図書館戦争 THE LAST MISSION」が映画公開されています。
有川浩さんの小説で「図書館戦争」(2006年2月)、「図書館内乱」(2006年9月)、「図書館危機」(2007年2月)、「図書館革命」(2007年11月)の全4巻で構成されています。また、マンガ、テレビアニメ、劇場アニメ、実写映画、テレビドラマ化されています。
1988年。公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を規制するための「メディア良化法」が制定。これによって、メディアへの監視権を持つメディア良化委員会が発足し、不適切とされたあらゆる創作物は、その執行機関である良化特務機関(メディア良化隊)による取り締まりを受けることとなる。この執行が妨害される際には、武力制圧も行われるという内容であり、情報が制限され自由が侵される社会となった。
実質的検閲の強行に対し、図書館法に則る公共図書館は「図書館の自由に関する宣言」を元に「図書館の自由法」を制定。その役割と本の自由を守るべく、自ら武装した図書隊による防衛制度を確立。
これ以降、図書隊と良化特務機関との永きに渡る抗争に突入していくことになる。
ここからは現実の話です。
「多様性と可能性をはぐくむ図書館」として、レンタル大手「TSUTAYA(ツタヤ)」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)などが運営する神奈川県海老名市立中央図書館が2015年10月にリニューアルオープンしました。同様の運営手法の図書館は佐賀県武雄市に次いで2例目になります。
館内は1階部分の大半を占める蔦谷書店の売り場とコーヒーチェーン・スターバックスコーヒー、そして、おしゃれな家具が配置されたワーキングスペースもあり、図書館のイメージとは懸け離れた空間が特徴になります。4階には「こどもとしょかん(キッズライブラリー)」専用階になっていたり、タブレット端末の貸し出しや無料でインターネットに接続できるWi-Fiの提供などのサービスがそろっています。蔵書は約31万冊のうち約20万冊は開架され、席数は屋外のテラス席を含めると改修前の約3.6倍となる428席に増やし、年中無休で開館時間は午前9時～午後9時で、改修前より閉館時間を2時間繰りさげています。
9月の海老名市議会で、CCCが提出した約8300冊の追加購入予定リストに「眼鏡拭きやシリコン鍋などの付録が付いたムック本」、「女性の入れ墨ファッションを取り上げた本」が含まれていることが取り上げられ、「公立の図書館にふさわしくない」とのことで、海老名市はリストを見直し、「不適正と見なした本」をリストから排除し、当初の予定から1千冊以上少ない7161冊を購入しました。元々のリストは同図書館館長が「書店での販売実績を加味し、多くの人に利用していただきたいという観点でリストを提出した」と説明していました。
そして、オープン前の内覧会前に海老名市長は「市民に疑念や不信がないように対応することが使命だ」と述べ、「図書館が新しい文化の拠点、市民が憩える場所となることを望む」と発言しています。
しかし、オープン後に、新規購入書籍の中に「タイ・バンコクの歓楽街を紹介するガイド本」などが少なくとも3冊含まれていたことが発覚し、同市教育委員会はこの3冊の貸し出しを取りやめることを決めました。「(本の)前半部分はグルメや観光について書かれていたが、見切れなかったところもあった。選定基準内だが、疑念を抱かせる可能性がある」と説明しています。
先にオープンした佐賀県武雄市の「ツタヤ図書館」では、来館者を大幅に増やした一方で追加購入した約1万冊がすべて中古本だったり、ニーズの低い本だったそうです。
また、愛知県小牧市が、ツタヤと連携した市立図書館建設計画への賛否を問う住民投票を実施したところ(投票率50.38%、即日開票)、「ツタヤ図書館」計画への反対が3万2352票、賛成の2万4981票を上回る結果となったそうです。
CCCは公共施設の管理・運営を民間に委託する「指定管理者」という制度で、行政から委託を受けて図書館を運営しています。この制度でCCC以外でも全国で約15%の図書館が民間企業などで運営されているそうです。
これらの問題は図書館を民間が運営することを問題とするのではなく、図書館をどのような場所と考え、どうあるべきかを考え直すきっかけだと思います。
