野球小僧

阪神タイガース 株主総会

株主総会とは株主を構成員として、定款の変更、取締役・監査役の選任、会社の解散・合併など、会社の基本的事項について、株式会社の意志を決定する機関です。定時または、臨時に開催され、毎決算期に1回開催する「定時株主総会」と、必要に応じて開催する「臨時株主総会」があります。決議には、株主総会の議長の選出、取締役や監査役の選任などの「通常決議」のほか、会社定款の変更、株式併合、会社合併、株式交換、株式移転、減資などに関する「特別決議」があります。株主総会の決議は原則として多数決をもって行なわれます。

開催時期は、会社法第296条第1項で、通常の会社では「事業年度の末日を基準日とする」と定款で定めており、その基準日から3ヶ月以内なので、事業年度終了後3ヶ月以内に召集することになります。

日本では3月期決算の会社が多いため、基準日制度の関係から6月後半までに定時株主総会を開催する必要があり(124条2項)、いわゆる集中日と呼ばれる6月最終営業日の前営業日あたりの特定日に多くの会社の定時株主総会が開催されています。これは、総会を特定の日に集中させることで総会屋さんの出席を実質的に排除し総会を円滑に進める目的からです。

ただ、総会屋さんの活動が以前と比べるとやや弱まったことや、株主総会を、会社をアピールする舞台として捉える考え方から、一般個人株主にも出席しやすい土曜日や日曜日に定時株主総会を開く会社が増えています。

さて、阪急との経営統合前から阪神タイガースの親会社、阪急阪神ホールディングス株式会社の株主総会は熱心なタイガースファンからの質問が飛ぶことで知られています。2006年の経営統合後もそれは変わっていません。

2015年:「来シーズンは岡田さんを監督にしたらどうかと思うんですが、どうでしょうか」など、2005年優勝時の監督である岡田彰布さんの再登板を求める、など。

2017年:「名前も言いたくないあの球団の色を変えることはできないか」と阪神電車の車体の色をオレンジから変えてほしいとの要望がでる、など。

2018年:「フロントの方は、コーチが大事だということをわからないんですか。若手、若手といって連続で出場している者を代打で使って。外国人も打てない、守れない。広島のコーチが移っていったヤクルトは交流戦で打撃成績トップ。良いコーチを採用できていない」と、13年間続けて年間指定席を購入し、愛知県から応援に通っている男性から、など。

このように、株主総会において名物化してしまったタイガースに対する質問の数々ですが、2018年は例年とは違った質問が出ました。「阪神タイガースの質問ばっかりするな」と苦言を呈した男性が現れたそうです。

会社の事業が利益を生み、剰余金処分につながるとすれば、球団運営は阪急阪神HDの利益を左右する要因といえるので、監督の采配や選手の成績などに関する質問はあながち的外れではないとは思えます。これだけ、タイガースに関する意見・質問が多いのは、株主の構成にタイガースファンが多いということもあるでしょう。ただ、阪急阪神HDは鉄道、不動産、ホテル、旅行、国際輸送、さらに宝塚歌劇団などの事業があり、株主総会でタイガースに関する質問ばかだと、ほかの事業に関する質疑応答を行う時間がなくなってしまいかねません。

このため、今年6月13日に行われた阪急阪神HDの株主総会では、質疑応答の時間を2つに分けたそうです。最初に都市交通事業・不動産と経営全般に関する質疑応答を行い、その後でそれ以外の事業と経営全般に関する質疑応答など、タイガースに関する話題は後半ということになりました。

前半の質疑応答では、鉄道の計画運休や自社株買いの方針などの質問が出たそうです。そして、後半になり、宝塚歌劇、旅行、ホテル、国際輸送などのる質問が出てもおかしくないが、最初の質問はやっぱりタイガースだったようです。

Q;「阪神戦はすべてサンテレビで中継をしてほしい。球場でイカ焼きを販売して欲しい。焼き鳥のタレの味が濃いのはビールをたくさん飲ませるための作戦なのか。最後に首脳陣以下、全員がかつての背番号40番、ラインバック選手の精神を心に刻んでもらいたい」

A;「すべてのご意見を貴重なご意見と考え、球団に持ち帰り、話をしておく」

Q;「阪神が50年間で3回しか優勝できなかったのはドラフトが下手だから。とくにドラフト2、3位の指名が下手。前評判の高い即戦力選手を指名できるのに、なぜと思う選手ばかり指名している。“秘密兵器”のような選手を指名して、秘密のまま終わった選手がどれだけいたか。他球団のスカウトは腹を抱えて笑っている」「ドラフトで笑いを取る必要はない。1位指名はずば抜けた才能を持つ選手を指名してその才能に懸けてもいいが、2、3位指名は遅くとも2年後には一軍に定着する選手を指名して欲しい。スカウトが悪いのか、編成のトップがへそ曲がりなのか、親会社を含むフロントに正しい判断をできる人がいないのか。原因を究明して手を打ってほしい」

A;「貴重なご意見として承ります。補強ポイントに合致した選手を監督や球団本部長が検討して採りに行っています」

この質疑に議長から、「昨年のドラフトの考え方は?」と異例の追加質問となり、「守る野球、センターラインを重視する野球ということで、1位、木浪選手が活躍している(ドラフト1位は近本光司選手、3位が木浪聖也選手)」と説明し、昨年のドラフトが成功していることを示しました。

Q;「都市交通事業(鉄道など)についてはミスがないように細心の注意を払っているのに、球団は12球団で最も失策が多い。都市交通事業のようにミスをなくすべきではないか」

A;「一人ひとりの選手はミスをしているが、今のチームはお互いにミスを補完しており、選手の間に一体感が出てきた」「これからも最後まで応援していただければ、皆さんの応援が選手に伝わり、選手もミスをなくして皆さんの理想のタイガースになると確信している」

Q;「ドラフト問題の起源は江川問題にある。世間を騒がせた江川問題からどんな教訓を得たのか。その教訓が現在のドラフトにどのように生かされているのか」

A;「チームをみて戦力的に不足している部分を補強しているので、どうぞよろしくお願いします」

Q;「コーポレートガバナンスは大切だ。阪神球団の社外取締役過半数を実現してほしい」

A;「阪急阪神HDや阪神電鉄には社外役員がいる。球団職員にもいろいろな経験の持ち主がいる。こういう人たちが意見を戦わせて新しいタイガースを模索しており、ハイブリッドな球団経営はできている」

今年の株主総会は「イカ焼き販売」「焼き鳥のたれ」「江川問題」に始まり、球団のコーポレートガバナンスまで、タイガース愛が満載の荒れない株主総会でした。


名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

最新の画像もっと見る

最近の「プロ野球」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事