囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

「名薬」は語らず

2022年06月14日 | ●○●○雑観の森

 

薬はなんにも言はぬぞ。

名薬といふ名薬は

ただれた傷にも

異臭ある皮膚にも

いつもおとなしく塗りこめられて、

立派にその傷をふさいで行く。


――山本有三「女人哀詞」より

 

 

 

 

ワクチン狂騒曲に思ふこと

~毒にも薬にもなるような ならないような話】

 


戯曲・女人哀詞は

「唐人お吉」の生涯を劇化したもの。

 

下田奉行配下の役人・伊佐は

こともあろうに

「幕末の日本」を思わぬ突き傷で

瀕死の病人になった、と見立てる。

 

お吉に

アメリカ総領事ハリスの愛人になって

国家の危機を救ってくれ、

と切々と頼むセリフである。

 

この前に

伊佐はこんな風に言っている。

 

「名薬といふては

吉、

そちを除いては、

ほかにないのぢや。

こゝの道理を聞きわけて、

不承知でもあらうが、

どうか行つてくれ。

薬は――薬の身になつたら、

たゞれた傷ぐちや、

異国人の膚に触れるのは

さぞいやであらう。」

 

犠牲のいたましさと

その後の運命が染みる。

 

身を守るすべも

抵抗する言葉も

持ち合わせていない

市井の女お吉の

その後の悲劇の生涯を

この場面のやりとりで

象徴している。

 

泣く泣く

「名薬」とならんとし

人知れず世を終えた薄幸。

20世紀の演劇界に

大きな影響を与えたが

これを知るものは今、

どれほどか。

 

   ◇

 

翻って現代の不可思議な病。

一体、ワクチンを何回打てば

よろしいのか。

まもなく わたしにも

4回目の案内がくるようだ。

こちら、本当の薬?

騙されているのではあるまい?

これって、まさか薬漬け?

今は昔とはこのこと……。

くすりとは何ぞや。

 

 

斎藤きち(1841~90年) 幕末から明治期にかけての伊豆国下田の芸妓、小料理屋店主。下田で米国総領事として着任したハリスが健康を害し、看護婦を要求した。もしも、これを拒絶すると、条約談判が破談となる危機があった。あわてた日本側は、ハリスのもとに「きち」を仕えさせることとした。「きち」には支度金25両、年手当120両が報酬として渡される約束。(当時の大工の手間賃が月2両程度) しかし、三夜で暇を出される。文化と言語の違いもあり、<看護>の概念と解釈のミスマッチ。解雇後、偏見により生活苦の連続となり、50歳で病死した。不運が不運を呼ぶものがたりは、、新聞、戯曲、映画などで取り上げられ、唐人お吉(とうじんおきち)の名で知られる。

 



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