囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

政治の心得㋥

2021年09月22日 | ●○●○雑観の森

 

【享保の改革を支えた名奉行のはなし の巻】

 

 


ある武家に奉公していた女が

孕(はら)んで女子を産んだ。

 

彼女は市中に乳母を求め

給金を与えて

その赤子を預けた。

 

十年の歳月がたち、

実母は暇を乞うて帰り

預けた子供を帰してほしい

と乳母に行った。

 

乳母は育てた子供が美しくて利発なため

これからはどこへでも奉公に出すことができ

自分のためにもなると思い

この子は自分の実子であると言い張ってきかず

返さなかった。

 

それで裁判沙汰になった。

 

大岡越前守忠相は両人を召し出し

糺問(きゅうもん)したが

互いに水掛け論になって決まらない。

 

そこで、忠相は一工夫を思いつき

子供を召し

「お前ら、

この子を双方から手を引き、

引っ張って勝った者の子とする」

と命じた。

 

これによって両人は力を出して

互いに引き合った。

子供は左右の手が痛んで

激しく泣き出した。

 

実母は思わず、手を離したが

乳母は、いよいよ我が子になる

と喜んでいる様子であった。

 

忠相はそれを見て

「お前は偽者だ。

こちらのほんとうの母は

実子であるから、その子の苦痛を見て

がまんできなくなって手を放したが

お前は他人で、ただ欲心だけで

子供を欲しがっていたのだ」

 

そう言って糺問すると

乳母は恐れ入って

自分は実母ではない

と白状したという。


  (出典:続名将言行録)

 


  *  *  *

 

あまりに有名な お話し。

忠相の判断は、

常に「こころ」がベースにある。

行政の仕事とは究極のサービス業である

と考えれば、当然といえようが、

いまもむかしも多くの公僕は公僕にあらず。

上から目線の木で鼻をくくったような対応を

主権者に向けているのが常態化している。

それは「他人」の事だから、

と言えば、それまでだが……。

 

 



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