「チェス?
あれは商人のゲームだが、
碁は哲学者のゲームだ」
◇
いくさ勝負は時の運というが
ゲームもそこがキモであり
囲碁もまた運の芸である
碁の勝負はといえば
棋理と形と筋に明るく
辛抱強く打てるならば
有利な流れになろう
ところが
碁の恐ろしさは
序盤戦が肝心とはいえ
勝敗を分ける大きな局面が
中盤あるいは終盤にて
突然出現するところにある
「あー、しくじった」
「あそこでヘマをしなけりゃ」
こう云々する御仁が多いが
これは自分ばかりに非があるようで
実は物事が見えていないがための言である
相手のヨミが優れ、
良い手を打っているという現実や
碁形が勝ちにくい方向に向かう様子が
まったく見えていない
いや、たとえ分かっていても
それが受け入れられない
こうして碁会の日は暮れゆき
そしてまた、打ちたくてうずうずする
これが碁の魔力ではあるまいか
碁敵(ごがたき)は憎さも憎し懐かしし