【ムサシ、画道で悟る の巻】
剣道家の宮本武蔵は
肥後熊本城主の細川家の客分となっていたが
ある日、主君の面前で達磨の画像を描くことになった
武蔵は武術のほか
絵画、彫刻、金工にも優れていた
ところが主君を前にして
その筆は思うように動かなかった
そこで武蔵は、その日は、
途中で描くのをやめた
その夜のことである
武蔵は体を横たえながら
考えているうちに眠り込んでしまった
そして夜半に目覚めたので起き上がり
灯下で、もう一度、
達磨像を描いてみた
すると、こんどは思うとおりに
描くことができた
翌日、武蔵は門人に言った
「わしは、まだ、
絵は刀術に及ばぬようだ
主君の仰せということで
うまく筆を運ぼうとして
かえって拙劣なものしか描けなかった
しかし、夜中に描いた時は
兵法と同じ気持ちで筆をとったので
意にかなった作ができた
そもそも、わしは、
太刀を取って立ち出る時は
自分もなく敵もない
ただただ天地を破る見地に立つので
恐れるものがない
ところが、絵となると
そのような境地に立てぬ
だから
兵術の足元にも及ばぬことを知った」
(原典:近世名家書画談)
◇
「克己」ということばがある
わたしの思春期に一番身近にあった
あがり症なのに、見栄っ張り
さして努力もしないくせ
なんでもそこそこできてしまう
そのくせ鼻っ柱が強く
過信家のわたしの自画像である
生徒会長に当選したはいいけれど
全校生徒の前で話をすると
心臓が口から飛び出すかのようだった
人の目にはちゃんとやっているように見えたらしい
が、本人は冷や汗もので何度後悔したことか
「よわい六十」を超えたいまも
もともとの性格は変わっていない
そう、時々、冷や汗をかいてハッとする
学生時代からの悪い夢にうなされる
剣聖ムサシの自虐ネタをまぶしく感じる
教えられて、
知らないうちに
難しい時代を
何とか無事に
この年まで
生きて来られました。
巨人ですね、、、宮本武蔵