鎌倉時代の仏像彫刻師として著名な
名工・運慶にこのような口伝がある。
「仏像をつくるとき
まず耳と鼻を大きめにする。
その理由は、後で小さく見えるとき
大きくするのが難しいからである。
また、口と目は小さめにしておく。
でないと、もしも
後で小さくしたくても
できないからである」
◇
囲碁は最後に陣地の大きい方が勝ちである
と、初心者の多くは習う。
「最後に」というのがミソである。
最初は、隅が大きい、辺が大きい、
といわれるが、
「陣地」にこだわり過ぎて
大勢を失っていくもの多し。
どちらかといえば中央志向のわたしは
盤面に大きな三角形、さらに四角形を作る
ことをイメージしている。
単純な発想で、面積が大きくなるからだ。
しかし大きすぎれば荒らされるし
小さければ縮こまって小利に甘んじる。
そのバランスというか
度合いというのが難しい。
同じ棋力の相手とばかり打っていると
なかなか上達しないのは
どんな分野にも共通する。
コツとは「体得するもの」である。
◇
コツとは、骨のこと。
骨は人体を構成する大事な部位である。
シラギの古代にあっては
氏族尊卑の階級をあらわす称呼であり
和訳してコツとなったといわれる。
重要視されていることから転じ
「てごころ」
「ぐあい」
「つかみどころ」
「呼吸」
「急所」
を指すようになった。
同様に
「骨格が大切だ」
「骨相が良い」
という使い方も生まれたのである。