【いさかいのタネをまき散らすなかれ】
趣味には
独りで出来るものと
相手がいないと出来ないものがある
囲碁は後者だが
自分と相手が同じ〝土俵〟で競うには
守らなければならない取り決めが
どうしても必要である
石を盤上の線の交点に置くとか
一手一手を交互に打つとか
打った石を動かさないとか
基本となるルールがあるが
これを双方に徹底させるのは
現実にはかなり難しい
対局中に
相手を揶揄する態度を取らないとか
手の善し悪しを評論しないとか
思考を妨げる行為をしないとか
非親睦・非交流の言質・行為が
野放しになっているのが
この国の素人碁界である
コロナで百人碁会が半減したが
会を離れていった五十人には
ひとりひとりに退会理由がある
だが正確なところは分からない
分からないとしても
なにがしかのワケがあったから
やめたのであって
そこを曖昧にしては
いつまでたっても
会は良くならない
せっかく希望して入会した人が
会をやめていくのはなぜか
そういうことに目を配る仕組みが
どこかにないといけないはずである
必要で寄り集まった人たちが
目的を達成してからは
会のメインテナンスを怠るようになり
あとは惰性に流れるのが常である
小さな出来事や対人関係において
ちょっとしたエゴが現われ
それを曖昧にし見過ごせば
会の浄化は期待できず衰退する
自己の便宜のみを図って
他人に不利益をもたらしたり
皆のものを粗末にしたり
わが物にしたりする人は
公正の観念に欠ける
その行為を放置すれば
問題は大きくなるばかり
解決策はいくつかあるが
まずは「誰かが声を挙げること」だろう
意見表明をしないことには
相互理解はスタートしない
コミュニケーションを大事にし
互いの〝常識〟をすり合わせる
これが楽しい碁会の土台であり
年一回の総会では少なすぎる
と思うのである
趣味は
しょせん退屈シノギだが
されど退屈シノギである
この沈滞ムードの世相にあって
週一の楽しみを失った五十人が
どういう思いをしているのか
訊いてみたい気がする人もいる