前回のコラムを書いたとき、孤独・孤立が深刻な問題であると初めて認識した。そして家族と共に暮らしている人の孤独死や自殺が起きる前に、どうやって困っている人を発見して、助けてあげられるかを真剣に考えたいと思った。
高齢者の孤独死と並んで、若者の孤独・孤立による自殺の問題が注目されている。このコロナ禍で、特に若者の自殺率が高くなっているからである。20歳未満の若者の令和2年8月は自殺者数91人で、令和元年同月比2・2倍になっている。特に女子中高生では、中学生が前年同月比4倍、高校生が7倍以上に急増している。10代から30代の死因の第一位は自殺で、特に20代では亡くなる人のうち、2人に1人が自殺である。18~22歳の若者のうち4人に1人が自殺を本気で考えたことがあるとのデータもあり、10人に1人が自殺未遂を経験しているという。
若者たちも高齢者も、孤独に陥っている本人はほとんど声を上げない。自分から「いのちの電話」に問い合わせたり、「こころの健康相談の窓口」を訪れたりしない場合が多い。先に結論から書くと、私がゲートキーパー養成講座(3/1)で学んだ孤独・孤立に対する最も有効な処方箋は、「身近な人からの声かけ」であった。
自殺を思いとどまった理由として、「家族や恋人などが悲しむことを考えて」が多数を占め、若者たち(15~17歳)が悩みを相談する相手の第一位は「学校の友だち」で70.2%となっている。親身になって話を聞いてもらえる人が、身近にいないから孤独・孤立に陥ってしまう分けで、この処方箋は的を得ている。これが機能するためには、交流の場が地域・近所にあって、親交がある人が身近に存在する必要がある。
実のところ、あかの他人が突然声かけしても耳に入らないであろうし、その辺の他人に相談を持ちかけたりはしない。会話が始まったとしても、強い否定思考や不合理な信念を持っている相手を正そうとすると、相手は逆に心を閉ざして状況を悪化させてしまうことが多いため、気軽に相談に乗ることも難しい。誰しも他人に干渉されたくないだろうし、各々自分が毎日生きるので精一杯なので、ケアしてあげられる人もなかなかいない。自助が基本で、周りに親身になってくれる人がいたらラッキーという現実なのかもしれない。
令和2年3月に町が行なった65歳以上の住民への意識調査によると、心配事や愚痴を話す相手は近隣ではなく、家族か親しい友人との結果となっている。不幸にも1人暮らしになったり、家族に悩みを打ち明けられない境遇に陥った際、孤独・孤立から免れる頼みの綱は、親しい友人ということになる。
この問題に対して「孤独・孤立対策特命委員会」の政策提言(5/20)が出ており、宮代町でも啓蒙活動や地域交流の場が提供されてきている。ただ、政府や自治体が主体にこのようなことを考え始めたら、税金の無駄使いだけで役に立たない形式的なものになってしまうという懸念の声もある。どうしても、健全な住民が先頭に立って身近な交流を深めるお友だち作りをサポートしないといけないだろう。
文責:福井宏