昨年10月、台湾の台北に行った際、潰れて野犬の巣になっている「パチンコ屋」をみた。また、現在、台湾には2件のパチンコ屋があるとタクシー運転手に聞いた。一軒は台北、もう一軒は台南にあるそうだ。職業柄、私の頭の中には「1000元札」がサンド(台間玉貸し機)に吸い込まれる映像が漠然と広がった。▼しかし、妙な「スケベ心」を出さずにおいて正解だったようだ。もし、気がふれて「出店」などしようとプロジェクトを組んでいたら、今頃は家族を路頭に迷わせていた可能性がある。馬政権のカジノ解禁だ。▼台湾海峡に浮かぶ澎湖諸島にて経営し、支那大陸から博打好きの旅行者を誘致しようという考えだ。本場のラスベガスをあっという間に追い抜いたマカオに続くという「スケベ心」が丸見えだ。民進党は「経済効果は限定的」であるとし、更には「治安の悪化」も懸念して批判している。はっきり言って正論だと思う。その根拠は「顧客対象」だ。▼ポルトガルの植民地だったマカオには、ずっと昔からの賭場があったそうだ。一攫千金を夢見て遊びに来る旅行者や地元の労働者が顧客であり、町には質屋がたくさん並んだ。「當舗(とうほ)」と呼ばれるものだが、裏にいるのは地元の暴力団なのである。▼良いか悪いかはさておき、その国柄や地域性というものがある。人間の本能ともいえる「ギャンブル志向」というものは、およそ、どこの国でもどんな民族でも持ちえている。それは商売という面だけではなく、文化という側面も併せ持つ。先ず、カジノ解禁は「それを開発する」というリスクが厳然としてあるわけだ。しかも、実にアメリカ的な開発だ。▼そこに流れ込んでくるのは札束でスーツのポケットを膨らませた支那人だけではなく、今日明日を生きることが難しい必死の支那人も来る。彼らはまさに、正真正銘の「一攫千金」を求めている。▼アメリカンドリームな集金施設に、チャイニーズドリームな支那人が押し寄せる。そのリスクを考えるに、それだけでも「分の悪いギャンブル」だと思うのだが。