<72歳と63歳兄弟、ひったくり犯を追跡、取り押える>
<通勤中の女性(35)からひったくりをしようとしたとして、博多署は6日、住居不定、無職入江潤一(24)、福岡市城南区長尾1、自称会社員山口裕司(20)両容疑者を窃盗未遂容疑で現行犯逮捕した。
近くにいた会社会長(72)と同社社長(63)の兄弟らが、両容疑者を追跡したり、取り押さえたりして、逮捕に貢献した。
発表によると、入江容疑者らは同日午前7時35分頃、同市博多区東光寺1の歩道で、会社員女性に後ろから歩いて近づき、バッグをひったくって盗もうとした疑い。
女性が悲鳴を上げて抵抗したため、両容疑者は何も取らずに逃げた。近くにいた会長が騒ぎに気づき、山口容疑者を軽ワゴンで捜した。見つけると、車を降りてさらに数百メートル尾行しながら110番し、駆けつけた同署員が身柄を確保。別の方向に逃げた入江容疑者は、社長らが取り押さえた。
会長は、2010年にハワイのホノルルマラソンに出場した健脚の持ち主。現在も、毎朝約5キロのウオーキングを欠かしたことがないという。会長は「日頃、培った体力が追跡に役立った。ひったくりは 許せないという思いで、必死だった。捕まえることができて良かった」と笑顔を見せた。
両容疑者とも容疑を認めているという。周辺では、他にもひったくりが発生しており、同署は余罪を追及する>
夜勤が終わり、ふらふらしながら(大変な夜だった・笑)駐車場へ向かうと宿直のオジサンがいた。挨拶して通り過ぎようとしたのだが、なにやら竹をたくさん持っていたから気になった。聞かずに帰れば良かったのだが、観てしまったからには、それはもう仕方がない。なんでも「どんど焼き」の用意をしているということだ。
近くの農家のオジサンもいた。この人は昨年の夏、いま採ってきたど、と言いながら、ぶっといキュウリを河童に喰わせるほどくれた。家でボキ折り、ごま油と塩で喰ったら、そらもう、美味かった。最近、子供の頭ほどあるブロッコリーもくれた。これはもう手伝う他あるまい。
「どんど焼き」―――地域によって呼称は違うが、西日本では「左義長(さぎっちょ)」となる。正月飾りや書き初めなどを田んぼで燃やす。そのとき団子や芋を一緒に焼いて食うと無病息災、五穀豊穣ということになる。燃やすのは別の日、とのことだが、それに参加できなくとも、いま手伝っておけば私にも御利益があるはずだ、ということで竹を運んだ。
竹藪の中に入ると、もうひとりの宿直のオジサンがいる。白い息を吐きながら鋸や鉈で竹を切っている。私の姿をみると、軽く手を上げてから軍手を放ってくれた。私も何本かの竹を持ち上げる。所詮はタケノコの親、とくに重くはないのだが、これがなかなか、斜面を歩き難い。それに私は昨夜寝ていないし、一晩中、走り回ったわけだ。
さすがにふらふらしていると、私が担いでいる竹の後ろの方をオジサンが持ってくれた。この人らは全員が70代だ。慣れた手つきで鉈や鎌を使い、ゴム長を履いて山の斜面を颯爽と歩く。肩にはごっそりと青竹が乗る。強靭な足腰だ。そら、そこらのへっぽこ、いくら若くとも適わないのではないか、と思った。
そこそこ運んだら田んぼの真ん中で細かい枝を切る。ひとりが組あげていく。太い竹は同じ長さに切り揃え、それで四方を囲むように打ち立てる。それをいまからいくつか作る――と聞いたところで、もう勘弁してください、となった。オジサンらは、いいよいいよ、ありがとう、助かったよ、と笑ってくれた。このおじさんは夕べ、私に「ばってら」をくれた人だ。つまり、この人も昨夜は寝ていないと思われる。それにその「ばってら」は酢が効いていてとても美味かった。このまま立ち去るのも忍びない・・・と迷っていたら、その日が公休日だった若い職員が通りかかった。なにやら事務所に所用があった、とのことだ。もちろん、ゲットする。
―――ねぇねぇ、朝メシ喰った?
「いや、まだ、起きたばかりで・・」
―――このあと時間ある?
「はい、とくには・・・」
―――美味い朝メシがある
「ええ?近くですか?定食屋さん・・・?」
―――遠慮せずともいい
「ありがとうございます、いやぁ、すいませんねぇ」
―――というわけで、はい、どうぞ。これは鉈。これでね、竹の細い枝を切り落とすんだ。ここにあるの全部ね。あ、オジサン、この人、手伝わせてください、ということで、よろしく。私の代わりにどうぞ。
「うぇ~~~えぇ~~!!」
―――朝っぱらから汗かいて、家に帰ったらメシを喰う。いつもの数倍は美味い。保障する。
体力だけではなく、足腰の強さだけでもなく、注目すべきは年配者の精神性の高さ。慣例を護り、伝統や文化を繋ぐ。やるのが当然、とする確乎たる意志。
「金がないからひったくりでもやろうぜ」という20代と「ひったくりなんか許さない」とする60代と70代。適わない理由はたぶん、ホノルルマラソンだけではない。
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