忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

首相官邸近く男性が焼身自殺図ったか「国葬反対」文書

2022年09月22日 | 忘憂之物





昼間のワイドショーで、この事件に触れていた。中継が出ていて、消火剤が残る植え込み、草が燃えた跡なんかを写してから、警官が右腕に火傷したこと、油かぶって火をつけたのは70代男性であること、首相官邸の近くであること、そして「火をつける前に国葬反対を言った」ということなどが報じられていた。現場近くには紙に「個人的には国葬に反対です」みたいなのもあった。

スタジオに戻ると、番組MCが「国葬に反対が本当の動機かどうか、本人、意識があるとのことですが、そのあたりはしっかりと確認せねばなりませんね」とか言っていた。所詮がテレビのワイドショー。なんでも決めつけて筋書き通りにミスリードするのが売りなのに、あるいは無いこと無いこと騒ぎ立て、お茶の間を扇動する役割のくせに、なにやら不思議なことを言うものだと思った。

そういえばその日の朝、テレビ朝日の感じ悪い社員も番組で事件を報じたあと「本当に国葬反対と関わりがあるのかをちゃんと調べないといけない 」と言っていたとか。「詳しいことはまだわからない」はともかく、その時点で「火をつける前に警察に国葬反対」を言っていること、現場に「国葬反対」と書かれていた紙があったことからして、おそらく、動機についてはその通りだと思うのだが、なにやら無駄に慎重なところが気になった。

調子が違う。お茶の間のジジババがテレビ朝日なんぞに期待するのは、ほらみたことか、憲法違反で法的根拠のない、憲政史上最長で日本を苦しめ続けた「アベ」の国葬なんぞを国民の血税を使って強引に無理矢理やるから、ついに焼身自殺を図る「市民」まで出たじゃないか。岸田政権や自民党は、この落とし前をどうつけるつもりだ、と騒いでほしいということだ。

せっかく70代男性が口頭で「反対」を警察官に告げ、それだけで伝わらなかったら困るから、ご丁寧に手紙まで近くにおいて油をかぶって火をつけたのに、その「動機」については「ちゃんと調べないといけない」では、お茶の間のジジババはがっかりするだろう。

そういえば、2014年6月にも「安倍政権の集団的自衛権の行使容認に反対する」と言って新宿で自分に火をつけたおっさんがいた。これも火をつける前、1時間ほども講釈を垂れていた。しかし、このときもマスコミは静かなものだった。NHKに至ってはニュース報道すらなかった。当時も不思議に思った人がたくさんいて、なぜにマスコミは騒がないのか、とネットなんかでざわついていた。

ふつうに考えると「ウェルテル効果」だ。著名な人が自殺して、それを繰り返し繰り返しテレビがやると、それを模倣するのが増える。その辺は朝日新聞もしっかりしていて「事件の取材と報道 2012 」という事件報道の指針がある。

注意点は3つ。先ず、自殺の詳しい方法は報道しない 。それから原因を決めつけず背景を含めて報道する 。そして自殺した人を美化しない、だ。テレビ朝日の社員は取り急ぎ、ふたつめを気にした可能性はあるが、もちろん、建前だ。それに70歳じいさんは、いまのところ著名でもない。

また、2014年の新宿での焼身自殺未遂のあと、日比谷公園で集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことに対する抗議、沖縄辺野古基地の建設中止を訴えて、これまた焼身自殺している。2014年11月11日だ。偶然かどうかはともかく、この日はベトナム戦争に反対して、当時の佐藤首相に抗議して由比忠之進が焼身自殺した日だった(1967年11月11日)。これも何故だか、マスコミは大騒ぎしていない。遺族にインタビューもみたことない。

さすがはマスコミ。ちゃんと報道指針を守っているのだ、メディアのモラルは高いのだなぁ、と感心しそうになるが、やはり、そこは、だ。

本当にそれだけか、となる。マスコミはそんな殊勝なことをする連中だったか。相手が芸能人なら首吊ったその日に自宅前に集合する下衆がマスコミだったはずだ。そして落胆と悲しみに暮れる遺族にマイクを向けて「今のお気持ちは?」がマスコミの神髄ではなかったか。愛娘がビルから飛んで死んだ両親が「せめてファンの皆様に」と絶望を抱きながら会見すれば、それを追いかけてでも「今のお気持ちを一言だけ」とマイクを突き出し、お茶の間のジジババを歓喜させるのが本来のマスコミの姿である。


それで例えば、ぴんとくるのは山上の「動機」に関する報道か。

逮捕された当初から、本人の供述として「安倍元総理の政治信条に反対してのものではない 」とされていた。あくまでも仇は旧統一教会であると。そして何故に安倍元総理を狙ったかについては「安倍元総理が宗教団体と近しい関係にあると思った 」であった。マスコミも警察も「これで納得しろ」ということで、この動機を既成事実化するかの如く、執拗に山上の希望通りの報道を繰り返しているのが現状である。

これがもし、ホリエモンの言う「アベガ―の所為だ」が犯行動機なら、その犯人はマスコミも含まれる。贔屓目に見ても共犯である。安倍さんは現役時代から「死ね」と公言してもよい対象だった。大学の先生ながら「叩き斬ってやる」と言うのもいた。野党第一党は「安倍を不眠症にするぞ」と気勢をあげ、中には「安倍総理は強盗殺人犯だ」とSNSで発信する阿呆もいた。共産党議員は安倍さんを模した人形を破壊し、太鼓を叩いて踊りながらお面をつくってブルドーザーで引き潰していた。狂気の沙汰であった。

それらを誘発させ、許される雰囲気を作ってきたのが、朝日新聞をはじめとする反日マスコミだった。



焼身自殺未遂のじいさん。このじいさんの言う通り、自分に火をつけた「動機」が「国葬反対」なら、それを閣議決定して執り行う岸田内閣に責任を問えるか。それとも国民世論を煽るに煽ったマスコミの責任が追及されるのか。


おそらく、この自殺未遂事件はテレビから静かに消えていく。新聞もわかり切ったことを、わざわざ深く掘り下げたりもしない。藪蛇だ。

だから奴らは大人しい。騒がない。こちらが気づかないように。




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