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TPP交渉参加へ米から「満額回答」 反対派説得、下地整う

2013年02月24日 | 過去記事

TPP交渉参加へ米から「満額回答」 反対派説得、下地整う

<【ワシントン=柿内公輔】日米首脳会談の焦点だった環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への日本の交渉参加問題は、最大のポイントだった関税撤廃の例外品目が認められる可能性を共同声明で確認し、安倍晋三首相が大きな得点を稼いだ格好となった。

 包括的な関税撤廃を目指すTPP交渉に、果たして「聖域」としての例外品目が認められるのか。日本側の関心事について、交渉を主導する米側の態度はこれまで不透明だった。それに伴い日本の世論も紛糾。行き詰まりの打開へ、安倍首相は「直接オバマ大統領から感触を得たい」とまなじりを決して会談に臨んだ。

 引き出した答えは、「満額回答」に近いといっていい。声明は具体的に農産品を例に挙げ、日本が関税撤廃の例外を望む「センシティビティ(敏感な問題)」が存在すると明記。最終的な取り扱いは「交渉の中で決まる」と確認した。

 安倍首相は記者会見で、声明骨子を念を押すように読み上げ、「聖域なき関税撤廃は前提ではないとの認識に立つ」と強調した。

 大統領から、「感触」どころか、関税撤廃の聖域を事実上容認する言質を文書の形で引き出し、安倍政権が反対世論を説得する下地も整った。意気軒高な首相はさっそく帰国後に会談の成果を各党に説明して回るとし、交渉参加の判断について前のめりになっている。

 一方、米側も完全に押し切られたわけではない。「すべての物品が交渉対象」との従来の主張を声明で確認。米国内で日本の市場開放が不十分との声が強い自動車や保険を「懸案事項」に列挙した。

 日本政府同行筋は「目標は高く掲げるが、実際は交渉次第ということ」と深刻に介さないが、交渉参加に向けて火種が消えたわけではない>




日本が敗戦して進駐軍がやってくる。さあ、日本人はどうなるのか、どんな目に遭わされるのか、と戦々恐々だったのは国民だけではなく軍上層部も政治家も同じ。参謀本部第一部も警戒して、どうしたものかと困っていた。そこで参謀本部第二部が交渉にあたる。超がつくエリートの集まりだった参謀本部第一部も、さすがは超エリートだけあって「先見の明」があった。つまり、いまのエリート官僚と同じく、上手くいかない可能性が高いことはやらない。

参謀本部第二部の責任者は有末精三。父親は北海道の屯田兵で、本人も叩き上げの中将だった。有末は先遣隊をマニラに送っていた。そこからの情報によると「マッカーサーは厚木基地に降りる」。B-29が何機も降りてくるのに耐えられる滑走路は厚木しかない。これが米軍にはわかっている。これで有末はアメリカが日本の内情を正確に把握している、と悟る。そこで有末は一考する。先ずは厚木基地の水洗トイレを修理した。

それから周辺ホテルから給仕を集める。ビールやサンドイッチを用意する。滑走路は整備するも、そこ横にはわざと梱包されたエンジンを置いておく。零戦のエンジンだ。そうしてアメリカの先遣隊が到着すると、用意していた車に乗せて滑走路を凱旋させてあげる。観衆には日の丸と一緒に星条旗も振らせる。日本の都市を無差別空爆して原爆2発。捕虜虐待に民間人の無差別殺傷。植民地支配に差別主義。さぞかし嫌われているだろうと思っていた単純馬鹿のアメリカ人は気分がよろしい。そこで舞い上がった米兵は問う。あの梱包されたモノはなんなんだ?

「徹底抗戦を主張する日本人がまだおります。その者らはマッカーサー元帥の搭乗機にカミカゼすると言っておりました。用心のためエンジンを外しております」

浮かれ気分のアメリカ兵は思い出す。それからリアルな不安が襲ってくる。

そしてそのまま、複雑な心境で歓待を受ける。そこには「世界一のマナー」の給仕がいる。完璧な所作で仕事をする。エントランスには花も活けてある。建物は綺麗だしトイレも清潔。これが本当に戦争に負けた国か?ドイツとはぜんぜん違うぞ?と驚く。そこから「交渉」に入る。日本側が最初に提示したことは「軍票は使わないでくれ」だった。軍票を使われるとハイパーインフレになる。政情不安になる。よろしくどうぞと。

アメリカの先遣隊は本国に「日本の経済は正常に機能している。秩序も保たれている。だから間接統治が適している」と報告する。痩せ我慢だった。実態はボコボコだった。それでもカミカゼで威圧しながら、文句の出ない接待をやった。日本に国力がある、と思わせるためだ。まだ余力がある。カミカゼは死んでいないと思わせることに意味はあった。

いまの日本はこういうインテリジェンスからは遠い。もちろん、当時の国力と比しては雲泥の差。つまり「ある程度の普通の国が普通にやること」をやるだけで凄まじい効果がある。例えば国防軍を持つとか、情報機関を統合するとかの議論がそれになる。それに日本はアメリカや支那と違って嫌われていない。国際社会には必要以上の警戒心もない。だから安倍さんも「日本の国益はこうです」とオバマに言えばよかった。事実、それで済んでいる。

だらしないのは新聞などのメディアだ。安倍総理は会見でも誤魔化さず、ちゃんと<聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉参加に反対するという公約を掲げ、また自民党はそれ以外にも、5つの判断基準を示し、政権に復帰をした>とオバマに直接告げたと言っている。自民党は日本国民に対し「約束」して政権を奪還したのだ、と念を押している。引っ繰り返らないぞ、という意味だ。

「5つの判断基準」も明確だ。「自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない」「国民皆保険制度を守る」「食の安全安心の基準を守る」「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない」「政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる」。これに「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加しない」がある。産経新聞は<一方、米側も完全に押し切られたわけではない。「すべての物品が交渉対象」との従来の主張を声明で確認。米国内で日本の市場開放が不十分との声が強い自動車や保険を「懸案事項」に列挙した>と心配するが、TPPの問題点と共に「日本の言い分」がオープンになったことは画期的だろう。私を含む、いわゆる「慎重派」の中には「どうせ参加するんだから、せめて最悪の状況だけは避けたい」というような諦観もあったが、なんのどっこい、ちゃんとアメリカは困っている。

条件が揃わなければ日本は参加しない、と日本の総理がアメリカ大統領に明言している。「交渉」という観点からすれば、かなりの優位性を保つことが出来る。アメリカはイザとなれば約束を破るが、裏返して言うなら、これを引っ繰り返すのは容易ではないということだ。冒頭に書いた有末精三もレイプした米兵とか、敗戦国ながら可能な限り、ちゃんと裁判にかけている。アメリカは法治国家じゃなかったのか?自由と平等の国じゃないのか?とアメリカの偽善を見越した「痛いところ」を突いている。

そこで日本の大手紙をみると、朝日新聞ですら「評価する」とか褒めていた。安倍内閣の外交成果を褒めているのかと思いきや、大手紙が揃って「TPP参加表明」と書いていた。だから「歓迎する」だった。慌てて記者会見を見直すと、やっぱり安倍総理は「表明」などしていない。要するに「先走り」だ。願望を書いている。無論、産経もだ。

安倍総理は「交渉に参加するかどうかを判断する」と一貫して言っている。普通の日本語で解釈すれば「参加表明」にはならない。久しぶりに足並み揃う大胆なミスリードを見た。

安倍政権は対支那、対朝鮮半島、それからロシアとの領土問題も抱える。「TPP交渉参加」は対米関係の重要なカードでもある。メリットが見えないTPPだが、TPP自体にではなく、それ以外のことで国益を得ることもある。乱暴に言えば、とくに日本が損しなけりゃいい。経済はアベノミクスで元気になる。既に市場と消費者が反応している。頭のカシコイ先生は「いつまで続くんでしょう?」「本当に景気が良くなるんでしょうか?」と水をさすが、そんなことは「結果がすべて」だと誰でもわかる。

戦後初めて患った「デフレ病」。15年苦しんだけど、ようやく「患った原因」もわかってきた。それで熱が下がって食欲も出た。「治るかもしれない」と患者も希望を口にする。それをみて「本当に回復してるのかな?」「来週あたりには悪化するでしょう」しか言えない「専門家」はだれも相手にしない。いなくていい。

それよりも大切なことは日本の国益だ。福島瑞穂は「国益という言葉が嫌い」と言うし、鳩山由紀夫は「国というモノがよくわからない」と言ったが、そういう阿呆どもが弱体化し、あるいは姿を消していくいま、総合的な日本の国益を見直し、それを得る努力をすべき時だ。阿呆な新聞に騙されているヒマはない。こういうときこそ、安倍さん、さすがだ、と歓声を上げるべきだ。日本のために頑張った政治家にはなによりの報酬になる。モチベーションも上がる。ストレスを最大要因とする難病にも効く。

国のリーダーがしっかりやっているのに「これでいいのだろうか?」というニヒリストはいらない。いつも斜めに構えるのは病気、もしくは「賢い」と思われたい病理だ。例えば、大手紙がそうだ。




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