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忘憂之物

大変ですね、のはなし。


平和な日本ではプロ野球も開幕したが、巷の酒場談義では「オレが監督だったら」という会話が繰り返される。決して「オレが投げていたら」「僕ならこう打った。スタンドインしてた」はいない。どこまでいってもリアリティに欠けるような気もする。上の棚の焼酎のボトルを「取ってくれ」と頼まねばならない痛む肩で巨人打線を封じることはできない。

でも「なんちゃって監督」は大量発生する。使う機会は一生こないだろうと思われるオリジナルのスターティングオーダー表を作成するじいさんもいる。なかなか理に適っていて笑うこともある。ちゃんと経験則に基づいて考えた形跡がある。伊達に何十年も虎キチはやっていない。

不謹慎の誹りは甘んじて受けるとして(コメントで死ねとかやめてね、ロシアに行けとかも無理、寒いしメシマズそうだし)、いまのウクライナ情勢を「なんちゃってロシア軍総司令官」で考えてみる。プーチンの背後霊を降ろそうとしたが降りてこないので、仕方がないから「なんちゃって」で間に合わせると、だ。

「BUSINESS INSIDER JPAN」に「世界軍事ランキング」があった。「グローバル・ファイヤーパワー」という、大仁田厚の必殺技みたいなところが毎年、調査して得点をつけてランキングをつくっている。ちなみにウクライナは2019年には25位に入っていないが、2022年に22位になっている。ロシアはずっと2位だ。日本は5位とか6位。1位と3位はあの国らだ。

世界軍事ランキング2位の軍総司令官だ。核兵器もある。今回のウクライナ侵攻、自分ならプーチンよりは上手くやれたんじゃないか、という舐めた想像はできないだろうか。最近、テレビでよく見る「妥結の人」も当事者でもなく、ウクライナに行くわけでもなく、外交の経験もなく、軍事の専門家でもなく、勝手気ままなスタンスで、なんと在日ウクライナ人に対しても「ああすべき」「こうすべき」をやって嫌われているから、それと比せばまだマシだろう。


その前に、だ。最初に「妙な部分」も再確認しておきたい。

ロシアの国営放送で「第一チャンネル」の女性アナウンサー、マリナ・オフシャニコワ氏が手作りのプラカードをもって反戦を訴えた映像は世界中に流れた。ニュースを読むキャスターも微動だにせず、また、スタジオ内には人がいなかったのか、すぐに止めに入る様子もなく、そのまま映像が切り替わった、という例のアレだ。日本のテレビでもやっていた。解釈は「局の人らもプーチンのウクライナ侵攻に反対。だから中継に乱入することも事前に知っていた」くらいのものだ。ここに不自然さはない。そうなのかもしれない。

しかし、違和感はそこにない。この女性アナは拘束されて逮捕されました、のあと罰金が3万ルーブルということだった。日本円で3万円と少しか。それに「このあと刑事罰を問われる可能性もあります」とのことだったが、警察から出てきてすぐ、海外のメディアにもインタビューされている。そこで「この戦争はプーチンひとりがはじめたことです」とバイデンと同じようなことを言った。数日したら「日本テレビの単独インタビューに答えてくれました」として、日本の地上波が報道していた。そこでも戦争反対、プーチンが悪いをやっていた。

先ず、暗黒皇帝の弾圧、ヌルくないか。こんなもんか。

不倫を告白しただけの中国女性テニス選手ですらバッハ会長が一肌脱いでいた。NHKを含めて日本のテレビは単独インタビューどころでもなかった。海外メディアで「中国共産党は人権侵害を止めろ」とか言えなかった。香港などで捕まった民主化運動の人らや人権弁護士は数万円の罰金で出られない。さすが、ホンモノは違うと感心する。そんなヌルくない。

また、ロシア国内は海外のSNSなどは遮断されているんじゃなかったか。この女性アナは「事前に用意していた」動画を公開している。ロシア当局は監視する能力がないのか。そんなに薄ら呑気な国か、ロシアが。

また、先月頃、日本のテレビでも「いま、ロシアには言論の自由がありません」ということで、スタジオにいるタレントなんかが「専門家」に「ロシアの人々は、いま、なにが起こっているのか知らされているんでしょうか」と心配して質問していた。その「専門家」などは「情報が規制されてますからね、西側の情報は知らされてないでしょう」と応えていた。そしてCMを挟んでから、プーチンがお尋ね者にされた画像を出して、いま、プーチンを捕まえたら賞金を出します、という富豪がインスタグラムで話題です、生死は問わないとのことです、とかやる。ロシア国民はその情報、どうやって見るんだろうと誰でも思う。

隠し子がいるMCの番組にウクライナ人が出る。いま、ネットで活躍中の在日ウクライナ人ではなく、仕事で日本にいたことのあるウクライナ人だ。いま、キエフにいるという。隠し子がいるMCが「食べ物はありますか、薬はどうですか」と心配するも「大丈夫です」。ネットで買い物もできます。出前もできます。スーパーには食料があります。お金がなくて買えない人も、みんなで助け合っています、としたあと、キエフは陥落しない、ロシアは勝てない、と力強く言った。私が違和感を覚えるのは最後の質問の答えだ。

隠し子がいるMCは「いま、キエフの人々に必要なものはありますか」と問うた。すると、その流暢な日本語のウクライナ人は「グレートリセット」を言った。常識を変える必要がある、いまのシステムを変える必要がある、とのことだった。少々、驚いた。

他も何か言っていたが、私なりの解釈によると「世界は一つ」だと言っていた。世界は繋がっているから、日本もアメリカも他人事ではありませんよ、という受け取り方もできる。しかしながら、違う「受け取り方」もできないか。それにいま、その状況で先ず言うことか。

もちろん、現地に行ってみてきたわけではないから、正直なところ、まったく不明だ。朝から砲撃が止まないとか、10分に一回爆発音がする(「羽鳥慎一 モーニングショー」2022年3月18日)などは報じられるから、それを観ても、そうなのか、大変だろうな、くらいの感想はある。

ウクライナの国家警備隊が撮影した動画もある。マリウポリの劇場とか悲惨だ。避難所になっていた建物で、ちゃんと「子供」と道路にも書いていたのに、ロシア軍は狙って攻撃した。撮影者は「瓦礫の下に妊婦がいます」「800人以上が非難していましたが100名ほどしか救助されてません。子供が下敷きになっている」と伝える。

病院や学校が狙われるという。人道回廊もロシア軍が地雷を埋めたり、砲撃したりして邪魔をする。避難しようとするウクライナの人々をロシアに強制連行する。理由は「ウクライナ人の心を折るため」。

バイデンは3月17日、ワシントンで「プーチンは侵略のために、大きな代償を払っている。周辺諸国は、ウクライナで新しい世界戦争を繰り広げている。『残忍な指導者』『純粋な凶悪犯』に対して、立ち向かおうとしている」と声明を出した。最近、支持率が少し上がったとかで気持ち良くなったのか、バイデンはワルシャワで独裁者が泣いて嫌がる「体制転換」を言った。プーチンを指して「この男は権力の座にとどまるべきではない」と言って、慌てたホワイトハウスが訂正していた。たぶん「陰謀論者」は、それはお前のことだろうと思った。私も思った。

話は少しだけ横道に逸れるかもしれないが、中国共産党、人民解放軍のお手本は「旧ソ連軍」だ。教えてもらったのは「緒戦での大量ミサイルの発射。事後、離脱」ということだ。つまり、味方の人的被害を減らす、という目的がある。もちろん、人道的配慮やら人権重視の観点からではない。

いきなり戦車部隊で乗り込んでも兵士の損失が激しいと思われる場合、強行すると被害が大きくなり兵士の士気が下がる恐れがある。中国はいま、一人っ子政策の弊害もあって、より一層、この問題は顕著だ。だから推定数千発にも及ぶ弾道ミサイルを向けている。戦闘機や水上艦、潜水艦の「配備数」を増やす。つまり、発射装置を増やしている。無人機も大量に具備している。

米軍でも先ず、艦砲射撃をやる。硫黄島でもペリリューでも沖縄でもそうだった。「島の形が変わるほど」撃ち込んでから、ようやく上陸して来る。それでも日本兵は塹壕に潜んで死なず、上陸を待って総攻撃を仕掛けたりするから米兵は本当に怖かったと思う。つまり「キエフ陥落」だけを言うなら、緒戦で弾道ミサイルをもっと使用する。「キンジャル」だけでもない。2014年のクリミア半島侵攻の際、無血占領ながらも616発のミサイルは作戦配備されていた。持ってないわけでもない、撃てないわけでもない、でも撃っていない。

つまるところ、素人の「なんちゃってロシア軍総司令官」でも、それくらいは考えつく。NATOも飛行禁止区域設定もしていない。というか、ICBMも千発以上だ。クリミアのときでも核弾頭は1500以上あった。

それで戦車を一列に並べてキエフ近郊で潰されている。ロシア兵の死者は1万とか2万とか。捕まったロシア兵は顔にモザイクもなしに西側の報道に晒される。ジュネーブ条約違反だが、その前に西側に顔出して「プーチンに騙された」とやれば、国の親兄弟のことが心配になる。プーチンは悪魔なんだろう。比してゼレンスキーは正義の大統領。日本の政治家、それも保守派の政治家までが、福島瑞穂と同じく「ウクライナカラー」。ちょっと阿呆すぎないか。

そういえばゼレンスキー大統領の国会演説もあった。「感動した」とか安モンの感想はともかく、演説が決まったくらいから「何を言うんだろう」とみんな興味津々だった。米議会でパールハーバーをやって日本人から警戒された、とはいえ原爆投下や無差別爆撃を言えばスポンサーのアメリカから叱られる。中には「北方領土のことを言うはずだ」もいた。

事実、演説が終わってから朝日新聞は歯舞群島、多楽の元島民の人に「北方領土を思ってくれたのではないか」とか感謝もさせる。朝日が阿呆なのは周知だが、情けないのは保守論者の中にも結構な割合で同じようなことを言っていた人がいることだ。北方領土に不法移住する外国人、内3割~4割はウクライナ人だ。ゼレンスキーはイスラエルで無知を晒して恥をかいたばかりだ。そのくらいは取り巻きが教えているだろう。



多くの尊敬すべき保守論者らは、例えば1937 年8月から 1941 年 12 月までの日中戦争期を対象に中国国民党 「中央宣伝部国際宣伝処」の対米宣伝工作とか忘れちゃったのだろうか。それなら「上海ベイビー」は実在したのか、と不安になってくる。私は「ニュース映画の切り貼り写真」だと認識しているが、それは陰謀論で視野狭窄のプーチン・トランプ支持者で「旧日本軍のプロパガンダ」にやられているだけの情弱中年なのかもしれない。もし、そうなら恥ずかしくてもう、ワクチンでも打ってトカゲ人間になるしかない。

もしかすると、大日本帝国軍は本当に領土拡張主義で平和に暮らすアジア諸国を蹂躙したのかもしれない。ロシアと同じく侵略戦争に大義はない。それなら「従軍慰安婦」はもちろん、インドネシアで2万人いた日本兵は「男も含む2万人以上」をレイプしたのかもしれない。

中国共産党は奥ゆかしいから南京大虐殺は30万人でも足らないかもしれない。本当は100万人くらい殺しているかもしれない。極右の歴史修正主義者は「骨がないだろ」とか因縁をつけるが、そんなもん、腹が減った日本兵ならぽりぽり食べたかもしれない。

ファシストの大日本帝国軍、東洋の悪鬼は東条英機だったわけだ。だからトルーマンはアメリカのテレビ番組で、日本への原子爆弾投下を問われ「良心の呵責を感じず、今後も万一の場合水爆を使う」と発言しているのだろう。1958年だ。さすがに広島市議会が抗議すると、トルーマンは「日本及び連合国の将来の福祉のために緊急にして必要であった」と反論している。

無理もない。日本帝国軍は中国も朝鮮も、どころかアジア諸国は大日本帝国の植民地だと「軍事侵攻」したのだから、まるでいまのプーチンロシアだ。

1945年当時も心優しい連合国は「悪いのは軍部」として日本国民は許しを得た。いま、ロシア国民も「戦争反対」を国内でやっている、と日本のテレビは毎日教えてくれる。ロシア兵は泣きながら母親に電話して「帰りたい」を言う。嗚呼、なんと可哀そうな話か。「無理矢理に戦場に行かされて」「非戦闘員を残虐に殺しまくり」「平和を愛する諸国から敵視されて」いる。まるで戦前の日本じゃないか。これは「原爆落とされてもしょうがない」かもしれない。


林外相はなぜ、欠伸如き我慢しなかったのか。ま、単純に「他人事だから」「緊張感がないから」「無呼吸症候群の疑いが」でもいいが、少し掘って考えてみると面白いかもしれない。

「妥結の人」は勝手にすればよろしいが、なぜか頭の中が「戦争反対・アベも悪いがプーチンも悪い・ゼレンスキー頑張って」と福島瑞穂になった「保守論者」は残念だ。いやまあ、たぶん、いろいろあるんだろう。大変ですね。


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