1997年2月、鹿児島県いちき串木野市の西方海上に浮かぶ下甑島(しもこしきしま)の南端、釣掛埼灯台付近に中国人密入国者が上陸した。世に言う「下甑島事案」だ。
中国人の不法入国者、不法滞在者はいまでも増え続けているが、例えば、上野公園のホームレスに50万円で中国人女と結婚させて日本国籍を取得させてから離婚、その後に中国人男と結婚して永住、みたいな斡旋業者が蔓延っていた。こそこそ入った中国人が天下の往来、大手を振って歩けるようになる。
他にもやり方はあって、不法入国した中国人夫婦に子供ができると急いで離婚。そこらの阿呆な日本人に金を出して子供を認知させてから、母親は入国管理局にて「不法入国者アル」と自首する。強制送還しようとすれば、でも子供がいるアル、この子は日本人アルよ、で永住許可申請。認められたら「元旦那」と再婚。晴れて日本で暮らせるアル、蛇の頭さん、シェイシェイだ。
金しか興味がない日本人経営者。中国の国営企業から「人材」を紹介してもらって斡旋。「通訳です」と偽って日本全国の旅館やらホテル、飲食企業などの人手不足の企業に派遣して、ひとり頭の手数料が5万円とか、好き放題だった。そこから逃げ出した中国人もいれば、そもそもが犯罪目的の中国人もいる。1990年代後半。日本全国、外国人犯罪が爆増しはじめる。
警視庁はたまらず「中国人かな、と思ったら110番」という防犯ビラを配って、朝日新聞などから叱られて回収したりした頃だ。標語は「あやしいな、と思ったら110番」に替えられた。意味は同じと受け取っていい。
そんなとき起こったのが「下甑島事案」だった。
1997年2月3日早朝、住民が不審な「外国人らしき」何人かを発見、警察に通報するも、島には駐在さんは2名。本土の川内署から応援が来て、そこに地元の消防団の人、役場の職員までが出て捜索、3日かけて20名を逮捕するも、航空自衛隊、下甑島分屯基地にいた隊員は役場に連絡員を入れて「情報共有」だった。
相手は難儀している健気な中国人難民。武装している工作員かもしれない、というのは日本を再武装させるつもりの軍国主義、歴史修正主義者どもの陰謀論だ、先ずは地元警察が声をかけて、何かお困りのことはないかと尋ねるのが日本国憲法第9条の心意気だ。
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して行動せよ、危険を冒してまで上陸した平和を愛する諸国民の方々に「恐怖の使徒」を向かわせるわけにもいかない、というのが日本国のスタンスだった。
ただ、実際には自衛隊員は現場にいた。役場の対策会議にて川内署の署長から自衛隊に「応援依頼」は出ていた。当然だ。相手はテロリストかもしれない。島の消防団や役場職員でどうにかなる相手じゃないのは常識だ。しかしながら、その後すぐ、川内署署長は「自衛隊側から捜索協力の申し入れがあった」と言い直した。たぶん、自衛隊は泥をかぶった。
西部航空警戒管制団司令、津曲空将補(当時) の指示は「野外訓練」。訓練だから武器の所持はない。逮捕権もなければ職務質問もできない。相手が武装工作員だったら、先ず、無事では済まない状態で自衛隊員は捜索に参加。分隊にひとり、警察官をつけて行動する。悲しいまでの順法精神だ。
隊員はロープで絶壁を下りてまで探して全員逮捕。調べてみたら斡旋業者が本土まで行かず、面倒臭くなって適当に離島に降ろしただけだった。
そしてやはり、というか、朝日新聞などが「自衛隊の暴走につながらないか」と見出しをつけて「自衛隊法違反だ」とやると、当時の防衛庁事務次官が「所要の手続きを経て、警察機関への協力活動として実施すべきところ、野外訓練の一環として実施した点については適切さに欠ける面があった 」とか、左に阿ったコメントをして、朝日新聞がまた、それを嬉々として報じる、という、いつものパターンがあった。翌日、当時の久間防衛庁長官は「自衛隊が出たのは不適切ではない」と、事務次官コメントを正面から否定する異例の声明を出した。マスコミに嫌われるはずだった。
「自衛隊が出たのはしょうがない」ということだが、この事務次官の阿呆さ加減に多くの日本国民は危機感を抱いた。「所要の手続き経て」いる間に工作員に殺されたら困る、逃げられたらどうすんだ、は素人でもわかる。おかしいのは「法律のほうでは?」と誰でも思う。普通の日本人なら「野外訓練」の指示を出した津曲将補 、それを敢えて黙認した鈴木空将 に感謝すれども「シビリアンコントロールはどうなってるんだ」とか思わない。
こんな事件、事案が頻発してようやく、自公政権は安全保障法制整備に関する協議を行った。まどろっこしいが有事に至る前段階、いわゆる「グレーゾーン事態」への対処、自衛隊による海上警備行動などの運用見直しだ。
遅きに失する、との批判は正当なものだが、このとき公明党、山口代表は「自民党案には当初、離島等の等がなかった」 として「なぜ等をはずしたのか」と文句を言っている。実にくだらない。
自民党側に説明を求めたら、日本本土も含まれるとの返答だったとして、更に過去にそんな事例があったのか、と問うと、下甑島の件を出してきた、と呆れてから、あれは「武装集団ではないし単なる密入国者じゃないか」。
自民党の公約「防衛費をGDPの2%に」にも「1%を守るべき」。外国人参政権には「(日本人が)理解を示すべき」。クーポンの事務経費は「問題なし」。選挙になれば「0歳から18歳まで、ひとり10万円差し上げよう」。
中国のジェノサイドに対しては「人権侵害を根拠を持って認定できるという基礎がなければ、いたずらに外交問題を招きかねない 」。
国政では自民党、都議選ではファースト、大阪では維新と握る。そもそも初当選時には「集団的自衛権の行使反対」だ。解釈変更は認められない、としていた。蝙蝠が超音波を忘れて逃げ出すレベルだが、立憲民主党でも代表選をする。連立与党を組む公党の代表として、2009年から無投票で7選。共産党の志位には及ばないが、これもなかなかのアレじゃないか。
自民党はもう、有権者の限界がきていると知ってほしい。日本国民のために下野する覚悟で公明を切るか、このまま「日本を中国に差し上げよう」になるか、瀬戸際はもう、過ぎているんじゃないか。