先日、飲み行った帰りのタクシーは、件の「SOS表示」機能搭載の車だった。運転手さんに問うと、笑いながら点灯させてくれた。無意識に左サイドミラーで確認する。黄色い文字で「SOS」が点滅している。▼「お客さんが犯人だったらどうしますか?」運転手さんは呆れている。私も「何らかの警戒行動に出ますね。見えてますもん。」と答える。「意味ないんですねぇ~」と言いながら、運転手さんは表示を元に戻す。▼19日、神奈川県警は「振り込め詐欺対策」として「騙されたフリ作戦」というものを発表した。通報を受けた捜査員が犯人と連絡をとり、口座を凍結したり、場合によっては逮捕につなげるということらしい。▼先ず、タクシーの防犯機能と同じく「事前に知っていたら意味がない」という指摘をしておきたい。マスコミを使って発表するということは、「犯人側に犯行を躊躇わせる」という効果があるのは理解できるが、手の内を曝すほど有利な「いたちごっこ」でもあるまい。▼この県警幹部のコメントも本音を隠さない。<県警幹部は「犯人に『神奈川で電話すると、警察官が現れるかもしれない』と思わせる」と意気込んでいる>よし、ならば、他府県でやろう!と犯人は思うのだろうか。それに、そういう問題なのだろうか。▼先ほどのタクシー。私は言わなかったが、最も怖いと感じたのは「SOS表示」が後部座席から見えるということではなく、運転手さんが「SOS表示」を1分以上も発し続けたのに、本社や基地からの確認がなかったことだ。それほど運転手さんは頻繁に「試して」いるのだろうが、本来は無線で確認するか、即座に位置を特定して通報するくらいの緊急性を有するものではないのか。▼「振り込め詐欺」も、これほどマスコミが頻繁に注意喚起しているにもかかわらず、「まだ振り込んでしまう」という平和呆けの所業なのである。「自分だけは大丈夫」「今日も明日も明後日も何事もなく平和が続く」と根拠無く信じて疑わない。私はそちらのほうが怖いと思う。