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忘憂之物

マネージャー・マネージャー




中東の北朝鮮みたいに言われるシリアだが、その首都ダマスカスは「世界最古の都市」と呼ばれる。その証拠に紀元前10世紀からずっとアラム人王国の首都だった。ギリシャ、ローマ時代でも主要都市で自由都市連合の名誉都市でもあった。

アラム人はバラダ川から水を引き水道も作った。これはそのままダマスカス旧市街の水道システムの基礎になった。また、粘土板を数万点集めた「ニネヴェ図書館」などもつくる。それに環境もよろしい。周囲のオアシスは「エデンの園」のモデルになる。自然と調和した文明社会、それに信仰形態に多様性のある多神教。まるで日本みたいだった。

そんな「良いところ」で地続き。だから周囲の野蛮な連中が放っておかない。ペルシアやローマ、オスマン帝国やらフランスやらが交代で支配した。ゾロアスター教やキリスト教、それからイスラム教が入り込んで来る。逆らったら異教徒。火炙りにされる。

「多神教は一神教に至るまでの発展途中」とか、頭から見下した価値観が紛れ込んで来る。日本人やインディアンと同じく、虫や動物、草や木にも魂が宿るという宗教観は「宗教の初期段階」と馬鹿にされた。それはいわゆる「アニミズム」とされてエドワード・タイラーは「原始文化」という本を書いた(1871年)。ちなみにキリスト教化される前のゲルマン民族も多神教。精霊信仰の概念が組み込まれる「エコロジー」の名付け親はエルンスト・ヘッケル。ドイツ人の哲学者だった。なんというか、因果を感じる。

そんなシリアがイスラム勢力の支配下に置かれる少し前、ムハンマドのところに「1600枚の羽根」を持った大天使ジブリールが現れる。洞窟で瞑想していたムハンマドは金縛りにあい、そこに天からジブリールが降りてくる。「クルアーンの啓示」だ。それからムハンマドは剣と盾でエデンの園を守る天使や、枯れない井戸を掘ってくれる天使に会う。「ブラーク」という空飛ぶ動物に乗ってメッカの上空を飛びまわったりする。

本気で言ってるなら薬物検査だが、それが610年頃になる。日本は当時、推古天皇だ。皇太子が甥になる聖徳太子。こちらは空を飛んだりせず、遣隋使に小野妹子を派遣したり、冠位十二階や十七条憲法を制定したりした。つまり、多神教より進んでいるはずの一神教はまだ「ヤマタノオロチ」みたいなことをやっていた。どちらが「原始的」なのか、よくわかる。世界のためにも早く追いついてほしい。


ところで東京都の猪瀬知事が「失言」したとか。幸いにも本人が謝罪し、トルコ側もそれを受け入れ、IOCも処分なしと大事に至らなかった。発言は「イスラム諸国は喧嘩ばっかり」みたいなことを言ったとか。べつにおかしくはない。

トルコ空軍のF-4ファントムがシリア軍に撃墜されたのは地中海、昨年6月だった。その機を捜索中だったトルコ輸送機がまた、シリア軍から地対空砲で攻撃された。砲弾は当たらなかったが、慌てたトルコ側は外交ルートなどで「止めろ」を言った。トルコ政府はたしかに「軍事的報復はしない」としたが、実際のところ、それは領空侵犯だった。レーダーシステムの試験飛行で、かなりの低空を飛んでいた。「無警告だった」とトルコは批判するが、他国の領空を低空飛行すれば警告なしで撃墜するのは当然、例外は日本くらいか。

「非武装だったのに」も知ったことではない。それが国際常識だ。だからトルコ政府も「電力の供給を止めるぞ」とか脅すしかできなかった。内戦状態にある国の電力供給を止めるのが人道的かどうかはともかく、それほどアサド政権は西側から不人気だ。だから朝日新聞も社説<シリア内戦―分裂国家に陥らせるな>で<崩壊が近いといわれたアサド政権がもちこたえているのは、長く友好関係にあるロシアやイランが独裁政権を支えているからだけではない>とか、さりげなく支那を外している。

アサド政権に武力停止を求め、経済制裁を警告する国連安全保障理事会の決議案に「3度も拒否権を行使している」のは支那共産党だ。もちろん、軍用品も大量に輸出している。<中東のシリアにこれ以上の内戦と分裂を招いてはならない>と言うなら北京にも言ったほうがいいが、反体制側の「過激派」もダマスカス大学の建築部に迫撃砲を撃ち込んで学生を十数名殺害したり、となかなか派手にやっている。喧嘩ばっかりだ。

その喧嘩を取材しに行った日本人ジャーナリストの山本美香氏も亡くなった。政府軍というかアサドの傭兵みたいな「シャッビーハ」から9発も銃撃を受けた。そんな悪いシリア政府がついに大量破壊兵器、生物兵器を使ったのではないかということで、オバマも<一般市民に大量破壊兵器を使用することは、国際規範と国際法上の一線を越えるもので、事態は一変する>とか怒っている。そんなことはスミソニアン博物館の「エノラゲイ」を燃やしてから言って欲しいモノだが、ともかく、これがウソでもホントでも「口実」にはなる。アメリカはシリアの真下にある国を「大量破壊兵器がある(かもしれない)」で滅ぼした前科もある。白人はその血塗れの宗教観やDNAから血を見たら興奮する。銃を見ると撃ちたくなる。爆弾を落としたい。たぶんもう、うずうずしている。近々やるだろう。


猪瀬知事が言ったのは正確に記すと<イスラム諸国が共有しているのはアラーの神だけで、彼らは互いに争っている>だった。文句がふたつある。ユダヤ教の聖典、キリスト教においては旧約聖書と呼ばれるモノにはモーゼやノアもいるが、その中にアブラハムがいる。アダムの子孫だ。その妻はサラ。子を産めないサラはエジプト人の妾であるハガルにアブラハムの子を産ませる。それがイシュマエルだ。

しかし、そのあとサラも奇跡的に子を生む。これがイサクだ。血の繋がった子がいるなら妾の子などいらない、ということでハガルもイシュマエルも放り出す。サラの子であるイサクはユダヤ人になる。追放されたイシュマエルはアラブ人になる。ムハンマドだ。つまり、ユダヤ教の枝別れのキリスト教、それからイスラム教は同じ、どれもアダムが先祖でアブラハムの子孫だ。いわゆる「腹違い」になる。

つまり<イスラム諸国が共有しているのは>ではない。「唯一神の創造主ヤハウェ・エロヒムが作った人間の子孫どもが共有しているのは」が正しい。もちろん、そこに日本人は関係ないから、そこから<彼らは互いに争っている>と続ければ誰からも文句は出ない。迷惑な兄弟喧嘩ですが、八百万の神々がおわす日本は平和ですね、ということで是非、その平和の祭典は東京で、と〆ればIOCも返す言葉はない。

それからもうひとつ。「アラー」は神のこと。つまり「神の神」みたいになる。むかし「運営マネージャー」と言っていた阿呆もいたが、要するに混種語の重言だ。「かぎフック」とか「シティバンク銀行」とか、つい使ってるかもしれない。「若いヤング」とか「一番ベスト」もそうだ。ちなみに朝鮮語なら「ハングル文字」とか「チゲ鍋」か。

そういえば以前、朝日新聞も社説で「諸刃の刃」をやった。両方が刃(やいば)になっている刃(やいば)だそうだ。たぶん、馬鹿なんだろう。



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