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私の車とバイク遍歴(11)トヨタ スターレット(KP61)

 さて前回までの話で、私はほとんど乗らない車の為に4年間のローンを背負ってしまいました。当時はアパート暮らしで昇給したとは言え、車を立て続けに購入なんてする事は出来ません。この当時、移動にはホンダLEAD50(原付バイク)を使い、車の無い生活を送っていました。

 そんな生活を半年ほど続けていた時、学生時代の先輩から連絡があり、聞くと「佐藤、お前車いらないか?」という話でした。聞いてみると、先輩の知人で新しく車を購入するので、今まで乗っていた車を譲る人間を探していると言うのです。しかも「タダ」で譲ってくれるとの事でした。私は直ぐに「乗ります!貰います!」と返事をすると、その車のカギを貰ってくるので、あとで私の処へ届けてくれると言うのです。

 ほどなくして私のアパートに先輩は来ました。そしてその車の持ち主の家の場所を教えてもらい、取りに来れる時に来て、勝手に乗っていって構わないという事だと聞きました。

 早速翌々日の夕方に持ち主の家に行きました。その家は「文化住宅」というのでしょうか、平屋の戸建ての借家でした。軒先には赤いスターレットが止まっていて、カギを指すとドアを開ける事が出来ました。家の電気は消えており、家人は留守だったようなので、私はスターレットのエンジンを掛けて走らせ、自宅へと戻りました。

 走った感じとしてはエンジンには何も問題が無いようで、とてもキビキビした走りをしました。但しこの車にはエアコンが付いていないのです。また自宅に戻り車をよくよく眺めてみると、あちらこちらが錆びでいて塗装が浮いたり、剥がれていたりしています。またエンジンルームを開けてみると、そこにはストラットバーが装着されており、ハンドリングがキビキビしていたのも、この為だった事が判りました。

 またこの車ですが「キャブレター式エンジン」であった為、エンジンを掛ける際にはハンドル右下の「チョークスイッチ」を手前に引いてからエンジンを掛けないと、上手くかからない場合がありました。たまにこのチョークを開けっ放しで走ってしまい、途中でエンジン回転が2000回転以下に下がらなくなり焦った事も、幾度がありました。

 このスターレットですが、見た目はボロボロだったのですが、とにかくエンジンはとても元気だったので2年近くの間はお世話になりました。(丁度もらい受けた時、車検が2年近くついていました)
 夏は窓を全開にして、上はTシャツ、下は半ズボン。首からタオルをぶら下げて走り、冬はヒーターかけて寒い夜も快適に走っていたのです。またドアミラーが壊れた時もあったのですが、その時にはオートバックスでドアミラーを購入し、自分で修理をしたり、ヘッドランプの電球を変えたりと、多少、車をいじる事もこれで覚える事が出来ました。

 この車は2年近く乗っていて、手放したのですが、実はそれには理由があります。

 ある金曜日の夜、後輩とこの車で箱根を走っていました。すると突然、ボンネットの中から「ピュー――!」と言う様な音が聞こえてきました。後輩と2人で「これは一体何の音なんだろう?」と話しながら走っていると、後ろから猛烈な勢いで車がパッシングして近づいてきます。私は煽られているのかと思い、途中でパスしようと路肩によると、その車は私の車の前に止まり、ドライバーが降りて来たのです。
 このドライバーが言うには「ラジエーターに穴空いて無いか?何か漏れているみたいだぞ?」との事なので、車のボンネットの下を除くと何やら「ポタポタ」落ちているのです。そしてその元を確認すると、フロントのラジエーターからである事が判りました。

 インパネを見てみると、水温計がどんどん「H」に近づいていて、このままでは時間を置かずにオーバーヒートを起こしかねない状況だったのです。

 この時、水漏れを教えてくれたドライバーからは「空調のヒーターを暖房で最高温度にする事で、エンジンを冷やす効果が得られるから、エアコンのヒーター全開で回して、騙しだまし帰るしかない」と教えられました。この時は真夏の夜。私と後輩は窓を全開にしてヒーターを全開でガンガン回しながら、下道の国道を水温計を睨みながら、汗だくになり、ゆっくり時間を掛けて帰宅したのです。

 その後しばらくの間は、この車に乗る時にはヤカンに水一杯入れて助手席に乗せ、水温計が「H」ギリギリになった時には、ラジエーターに水を補給しながら走っていましたが、車検切れも近くなった事から、この車を手放す事にしたのです。

 それでもカローラⅡのローンが2年間残っている事実は変わりなく。車を持たなければ、それはそれで良かったのかもしれませんが、当時の私は日曜や平日の夜、仕事以外でも出かける事もあって、どうしても車が必要でした。そこで以前にお世話になった松戸の中古車屋へ即金で購入できる車が無いか、見に行く事にしたのです。


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