新型コロナウイルスの流行が冬期に入り一段と拡大し終息の兆しがみえません。東京都を中心にして倒産する会社や店舗が跡を絶たない状況です。少年自然の家は営利を目的とした民間企業とは異なるため、同列に扱うことはできません。けれども、今年度は小学校をはじめとした多くの団体がキャンセルや利用延期の連絡がありました。入所者の減少は食堂を請け負う業者にも大きな痛手です。事の重大さを痛感させられました。幸いにも9月に入り徐々に入所者数も増えてきました。閑散とした年度当初とは一転して慌ただしい毎日が11月いっぱいまで続きました。まさにうれしい悲鳴です。当たり前の有難さを身に染みて感じています。
さて話は変わりますが、昨年わが家はGo To トラベル キャンペーン(現在は停止中)を使って、旅館やホテルで宿泊する機会を得ました。国の観光支援事業を利用したおかげで、顧客として私たち家族は旅館・ホテルのサービスを受けながら、おもてなしの質の高さに感心させられる場面に出会いました。当所を利用された方はご存じかと思いますが、少年自然の家は宿泊ができる研修施設です。利用者のことをホテル・旅館業界では「顧客」、少年自然の家では「研修者」と言います。しかし、利用者に対する満足度をいかに高めるのかという点では大いに学ばせてもらいました。このことについて今回は書きたいと思います。
私が利用した旅館やホテルでは、スタッフの方々が常に笑顔で自信を漲らせてお客様に接しておられたのが印象的でした。チェックイン待ちで混雑していれば、空いた席にさり気なく案内されたり、初めての利用者にもわかりやすい説明をしてくださいました。また、部屋に毛布が欲しいとフロントに電話をすれば、すぐに届けていただけました。夕食で驚かされたのは、お品書きに料理長の名前が記されていたことです。何かあれば、料理長が全責任をとりますという自信に裏打ちされた意思表示だと思います。家路に着いて数日後には、礼状が届きました。至れり尽くせりの対応でした。旅館やホテルが自らの知名度やイメージを高めながらお客様へのサービスに心配りをされている様子を感じました。
こうした出来事は本当にいい勉強になりました。ハードウエアの面では、少年自然の家は旅館やホテルには太刀打ちできません。けれども、研修者への対人技術という面では旅館やホテルのスタッフと同じ技術を習得することができると思います。長年の経験や技術を身につけておられる観光業界のスタッフにおいそれと追いつくことは難しいかもしれません。しかし、自分の業務能力を高める努力をすることはどの世界でも求められています。作家の堺屋太一さんは、この対人技術を「ヒューマンウエア」と著書で書いておられます。当所のスタッフも努力を重ねて「ヒューマンウエア」をより高め、研修者の皆さんの満足度がいつも100%になる施設にしたいものです。
たとえば、上の写真のように手洗い場に花一輪を活けるのも、利用者の満足度を高めるヒューマンウエアではないでしょうか。
by Mr.Young